リップル、連勝中(ただし決着はついていない)

スリーストライク! しかし、SECはアウトだろうか?

米証券取引委員会(SEC)は10月19日、リップル・ラボ(Ripple Labs)のブラッド・ガーリングハウス(Brad Garlinghouse )CEOとクリスチャン・ラーセン(Christian Larsen)会長に対する訴えを取り下げた。エックス・アール・ピー(XRP)と密接な関係にあるリップルにとって、SECとの数年にわたる法廷闘争における直近で3度目の勝利だ。

存続さえ危ぶまれたリップル

ガーリングハウス氏とラーセン氏は、2020年(ゲイリー・ゲンスラー氏がSEC委員長に就任する前)に提起されたSECによる最初の訴訟で「重要な証券保有者」と呼ばれていた。

同訴訟では、リップルとその主要幹部がXRPの「無登録で行われているデジタル資産証券の募集」で13億ドル相当以上を販売したとされた。さらにガーリンハウス氏とラーセン氏は、個人的に約6億ドルの不正な証券販売を「行った」とされた。

SECからの告発は、リップルに汚点を残したどころではない。提訴直後の数週間で、アメリカのほぼすべての取引所がXRPの上場を廃止した。リップルとサービスプロバイダーとの関係は悪化し、ガーリングハウスCEOは、2013年にサンフランシスコで設立されたリップルが海外に移転することを示唆し始めた。

しばらくの間、リップルは生き残れないかもしれないとさえ思われた。リップルは資金は十分に持っていたが、暗号資産企業に対して取られてきた中で今のところ最大の規制措置の結果がどうなるかは、誰にもわからなかった。

テレグラム(Telegram)やEOSのような企業は訴えられ、和解し、(関わっていたお金の金額に比例した)「お仕置き」を受けた。

連戦連勝

しかしリップルは、民事訴訟で争うことを決めた。それはつまり、大きな勝利、または壊滅的な負けを意味する可能性があった。そして少なくとも現時点では、連戦連勝のなかで裁判に持ち込んだことをありがたく思っているだろう。

リップルにとって最初の、そして最も重要な法的勝利は、たとえ部分的であったとしても、とてつもなく大きなものだった。アナリサ・トーレス(Analisa Torres)判事は、リップルがXRPを取引所で販売し、個人投資家に投資の機会を与えることに関しては、既存の証券取引法に違反していなかったが、XRPを機関投資家に直接販売した際には法律に違反していたと判断した。

リップルはまた最近、トーレス判事がSECの「仮抗告」(裁判の他の側面が進行中である間に、裁判所の特定の決定を上訴することによって、裁判のプロセスをスピードアップする方法)および裁判の停止の要求を阻止したことでも勝利した。

リップルにとっての最新の勝利、SECがガーリングハウス氏とラーセン氏に対する裁判を取り下げたことも司法手続きを早めることになる可能性が高い。この2人は春に裁判が行われる予定だったが、そうなればその間は、機関投資家に関するトーレス判事の決定を不服としてSECが控訴することはできなくなるところだった。

そこでSECは、裁判を待つよりも諦めることにした。だがこれは仮定の話だ。なぜなら、SECのプレスリリースには大した説明はなく、CoinDeskからのコメント要請にも応じていない。

だがSECは「with prejudice(確定力な効力をもって)」自発的に訴えを取り下げた。つまり、改めてこの件で提訴することはできない。この「with prejudice」という言葉は多くのことを示唆している。

幹部たちの裁判が完全かつ永久に終わったというだけでなく、「prejudice」は裁判官が事件を軽薄なもの、あるいは法廷外で解決できる問題だと見なした場合に使われる傾向がある。

戦いはまだ続く

SECが別の法的問題をより早く上訴するために訴えを取り下げたにせよ、あるいはリップル幹部に対する訴訟で勝ち目がないとわかっていたからにせよ、最近の裁判関連のニュースはSECにとって良いものには見えない。

世論的にだけ言えば、その管轄下にある暗号資産のすべてをパトロールしようとして、かつては獰猛で恐れられていた監視機関が今では法廷で鼻っ柱を折られている。

そしてこれこそが、司法制度が設計された目的だ。議会の立法者が法律を通過させ(あるいは暗号資産の場合は通過を遅らせ)、行政機関がそれを執行する一方で、司法制度はその両方を抑制する役割を果たす。

これまでのところ、トーレス判事は暗号資産に関する裁定には既存の証券取引法で十分であり、SECは行き過ぎだと指摘しているようだ。

もちろん、法廷闘争は正確には終わっておらず、リップルに有利な決定が今後出てくる可能性はある。次に起こることは、7億ドル以上のXRPの不正販売に対して、リップルが賠償金をいくら支払う必要があるのかをめぐって、リップルとSECが争うことだ。

ガーリングハウス氏の肩の荷が下りたことはほぼ間違いないが、SECが何らかの形で降参したり、ゲームを投げ出したりしたように思うことは誤りだ。

無限のイニングがあるゲームでの、スリーストライクに過ぎない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:リップルのブラッド・ガーリングハウスCEO(Scott Moore/Shutterstock/CoinDesk)
|原文:Ripple Is on a Winning Streak (but the Game Isn’t Yet Won)