リップル、XRP、SECとの訴訟を理解する【基礎知識】

リップル社(Ripple)とエックス・アール・ピー(XRP)が、再び話題になっている。リップル社と米証券取引委員会(SEC)の間で、XRPが有価証券にあたるかどうかをめぐって争われてきた3年におよぶ裁判で、新しい展開があったことを受けてのことだ。

この裁判を担当するニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所の裁判官は、複雑なことに、リップル社が機関投資家向けに販売した場合はXRPは証券だが、暗号資産(仮想通貨)取引所を通じて一般投資家向けに販売した場合は証券ではないという判決を下した。

リップル社の最高法務責任者スチュアート・アルデロティ(Stuart Alderoty)氏は、この判決を「大勝利」とツイッターで宣言。他の人々は、この判決は重要なものだが、部分的な勝利と評している。

「今日は大勝利。法律上、XRPは証券ではない。さらに法律上、取引所での販売は証券にはあたらない。役員による売却は証券にはあたらない。その他のXRPの配布──開発者、慈善団体、従業員への配布も証券にはあたらない」

この判決の意味するところ、そしてこの判決に至るまでの経緯を理解するためには、少し振り返って、リップル社、XRP、そして今回の判決に至る数年にわたる経緯を紐解く必要がある。

リップルの歴史

リップルを支える技術的コンセプトは、ビットコインよりも4~5年さかのぼると言われている。カナダのコンピュータープログラマー、ライアン・フッガー(Ryan Fugger)氏は2004年〜2005年にかけて、グローバル・ネットワークを通じてオンライン・コミュニティのメンバーに安全な支払いオプションを提供する方法として「RipplePay」を開発した。

しかし、XRPと呼ばれるブロックチェーンベースの決済システムと、そのシステムを作り、現在リップル社として知られるフィンテック企業がスタートするまでには、さらに6年を要する。

XRP Ledgerは、オープンソースのパブリック・ブロックチェーンで、従来の銀行による国境を越えた送金や決済の非効率性を解決するために、開発者のアーサー・ブリット(Arthur Britto)氏、ジェド・マカレブ(Jed McCaleb)氏、デビッド・シュワルツ(David Schwartz)氏によって2011年に作られた。

のちにこの3人にクリス・ラーセン(Chris Larsen)氏がCEOとして加わり、現在リップル社として知られる会社を設立する。XRP Ledgerは、分散化型暗号資産であるXRPを動かす基盤として機能する。

暗号資産のXRPとは別に、RTXPとして知られるリップルのトランザクション・プロトコルが、2012年に正式にローンチ。その後まもなく、2013年に会社(当初はOpenCoinと呼ばれていた)がリップル・ラボ(Ripple Labs)にリブランディングされた。その会社は2015年、再びリップルに社名変更した。

リップル社とXRPは本質的に関連しているが、少なくとも書類上は、別個の存在だ。リップル社は、グローバルな決済プロダクトを開発する中央集権型のフィンテック企業であり、同社が分散型であると説明するXRP決済システムを開発した。XRPはオンライン決済や通貨スワップなどに使われる独立したデジタル資産で、2023年7月時点の時価総額は約370億ドル(約5兆1800億円、1ドル140円換算)と、第4位の暗号資産になっている。

だがリップル社は自社プロダクトを動かすために、XRPとXRPのパブリック・ブロックチェーンを使っている。

リップルとは何か?

レガシー金融をディスラプトしようとするビットコイン・ブロックチェーンやイーサリアム・ブロックチェーンの公共的な性質とは異なり、リップルは既存の断片化された伝統的銀行システムを改善することに重点を置いている。

リップルは、独立した銀行や決済プロバイダーのネットワークを標準化されたプロトコルで統一し、低コストで即時の決済を世界中で行ったり、通信したりすることでそれを実現する。

のちに似たような目標を掲げる競合プロジェクト、ステラ(Stellar)の最高技術責任者となったマカレブ氏とクリス・ラーセン氏が共同で設立したリップル社は当初、銀行間送金のための3つの主要プロダクトを発表した。

流動性プロダクトのxRapid、決済アプリケーション・プログラミング・インターフェースのxVia、そしてリアルタイム決済システムのxCurrentだ。2019年には、xCurrentとxViaが統合され、RippleNetにリブランディング。xRapidは「オンデマンド・リクイディティ」(ODL)と改名され、各国間の法定通貨の送金・交換を迅速化するために使われている。

リップルの仕組み

リップルを構成する主な要素は2つ。

  • リップル:全体として、即時グロス決済システム(RTGS)、通貨交換、送金ネットワークを提供する。ブロックチェーン決済プロトコルで支えられているこのプラットフォームは、RippleNetを使用して金融機関間の即時取引を円滑化する。
  • RippleNet:決済ファシリテーターとグローバル銀行の独自ネットワーク。リップルの分散型プラットフォームを通じて、コミュニケーションの効率化をサポートし、参加者がシームレスに支払いを送受できるようにする。

インターネットを介した情報伝達のための共通プロトコルとして使われる、標準化されたHTTPSのように、RippleNetもすべてのネットワーク参加者が従うべきRipple Transaction Protocol(RTXP)と呼ばれるフレームワークと一連のルールを提供し、それによって取引のボトルネックを軽減している。

アプリケーションはHTTPやWebSocket APIを通じてXRP Ledgerに接続できる。また、Java、JavaScript、Pythonなど、さまざまなプログラミング言語のライブラリを使用することもできる。

誰でも台帳に接続できる一方で、トランザクションを承認できる信頼されたバリデーターの数は限られており、そのほとんどが大手の銀行や金融機関。2022年3月には、手数料0.0007ドルで1秒間に最大1500件の取引を処理できるようになった。

これは、1秒間に約10件の取引を完了するイーサリアムや、1秒間に4~5件の取引を処理できるビットコインよりも速い。XRPがこれほど高速である理由の1つは、より小さなオペレーターのネットワークを使うことで、より大きな分散化に伴うレイテンシー(遅延)を減らしているからだ。

ゲートウェイ

ゲートウェイは、リップルネットワークに参加したい外部の人々や組織に入り口を提供する。ゲートウェイは信頼できる仲介者(通常は銀行)として機能し、2者が取引を完了することをサポートする。ゲートウェイは、リップルネットワークを使って、法定通貨や暗号資産で送金するチャネルを提供する。

XRPの仕組み

XRPは、取引の安全性確保と承認に「フェデレーテッド・コンセンサス」アルゴリズムと呼ばれるものを使うパブリック・ブロックチェーン、XRP Ledgerのネイティブ暗号資産。ビットコインが使うプルーフ・オブ・ワーク(PoW)メカニズムや、イーサリアムのプルーフ・オブ・ステーク(PoS)とは異なる。その重要な違いは、より大規模なパブリック・ブロックチェーンとは異なり、リップルネットワークの参加者は、主にレピュテーション(評判)に基づいて、互いを知り、信頼し合っている点だ。

2023年7月時点、ネットワーク上には150以上のバリデーターが存在し、ネットワーク参加者が信頼するノードのリストであるデフォルト・ユニーク・ノード・リスト(dUNL)には、35以上が登録されている。

リップル社、XRP Ledger Foundation、Coil(リップル社が出資する団体)という3つの組織が、過去の実績、検証されたアイデンティティ、安全なITポリシーなどの要素に基づいて、推奨するバリデーターのリストを公表している。より多くのバリデーターがネットワークに参加するに伴って、参加者は自分のUNLに追加するバリデーターをより柔軟に選べるようになるが、すべてのバリデーターが同じ水準の信頼性やパフォーマンスを持つわけではないため、一定のリスクが生じる。

従来の海外決済方法(1~4営業日かかることもある)とは対照的に、XRPはオンデマンドの流動性を提供したり、国境を越えた取引を5秒以内に、従来の送金の何分の1かのコストで決済するためのブリッジ通貨として利用できる。

取引手数料のコストをカバーするために、少量のXRP(0.00001XRPの価値があるXRPの単位、約10ドロップ)が破棄される。XRPの送金コストは、ネットワークのアクティビティ状況によって変動するが、関連する取引はすべて、XRP Ledger上で実行・決済される。

他の暗号資産とは異なり、XRPはマイニングできず、新しいトークンが作られることもない。それは創業者たちが、2012年の台帳のローンチ時に1000億XRPの全供給量を発行したからだ。事業を拡大するために、創業者たちは800億トークンをリップル社に分配し、残りを自分たちの手元に残した。

リップル社が事前にマイニングされた供給分からコインの売却を決定した場合はいつでも、追加のXRPを流通市場で流通させることができる。例えば2017年には、同社は800億XRPトークンのうち550億をエスクローアカウントに移し、そこから毎月、最大10億トークンを売却できた。これは、XRP販売の透明性と予測可能性を向上させるためだった。

エスクローに保管されたXRPトークンは「未分配」とみなされ、残りが流通供給量となる。売れ残ったトークンはエスクローに戻され、後日再分配される。

2022年3月時点では、エスクローアカウントには461億XRPが保管されていた。リップル社が保有・分配しているXRPの総数に関するデータは、公式ウェブサイトで確認できる。

XRPの売買

SECによる提訴から、2023年7月に判決が出るまで、アメリカの取引所はXRPの上場を廃止するか、一時的に取引を停止していた。判決後すぐ、コインベース(Coinbase)、クラーケン(Kraken)などがXRPを上場、または取引のために再上場する計画を発表したが、まだいくつかの制限が残っている。例えば、当記事執筆時点では、ニューヨークの居住者はコインベースでXRPを購入できない。

アメリカ国外の居住者は、バイナンス(Binance)、イートロ(eToro)、クラーケンなどの取引所でXRPを取引可能であり、引き続き影響を受けていない。

XRPの長所と短所

ブロックチェーンのオープンな性質を利用して記帳を分散化し、取引の透明性を保っているが、XRPはリップル社以外の公的機関や個人が新しいコインの発行を決定できないという点で、ビットコインやイーサリアムよりも中央集権的だ。

これは、XRPが表向きには、投機的な投資手段というよりも、リップルのプロダクトを通じて国境を越えて価値を移転するためのツールであるという理由が大きい。しかし、SECの考えでは、XRPは疑いなく投資プロダクトとして機能しており、2020年にはリップル社を、SECが「未登録証券の募集」とみなす行為によって投資家から13億8000万ドルを違法に調達したとして告訴した。この訴訟については、のちほど詳しく説明する。

リップルとXRPの長所は以下の通り。

  • 決済プロセスを効率化するための流動性ツールが追加された、高速で効率的、かつ透明性の高い決済。
  • XRPの決済スピードはビットコインやイーサリアムよりも速い。
  • 向上し続けるスケーラビリティ:XRPネットワークは、1秒間に最大1,500件の取引を処理できる。
  • リップルの国境を越えた通貨決済システムは、銀行を含む100以上の金融機関をそのネットワークに惹きつけている。

短所は以下の通り。

  • RippleNetは他のパブリック・ブロックチェーンと比べると、完全な分散型ではない。
  • プロダクトは大手金融機関向けのため、個人ユーザーにとって実用的な重要はほとんどない。それでも「XRPアーミー」と呼ばれる熱狂的なファンは、ツイッターでこのコインを宣伝することをやめない。
  • XRPの大部分はリップル社によって保有されているため、トークンの価格は簡単に操作されたり、大規模な販売で市場が飽和することでマイナスの影響を受けたりする可能性がある。

リップル vs SEC

リップル社とSECの戦いは、暗号資産業界と金融業界が注視しているものであり、他の規制やSECとの進行中の裁判の予兆として捉えられている。

先に述べたように、SECは2020年、XRPはリップル社がアメリカの法律に違反して販売した未登録証券であるとして、リップル社を提訴。

判決では、7億2890万ドル相当のXRP販売が、機関投資家への直接販売であり、投資家がリップル社の業績から利益を得るという期待を想定した点で、ハウィー(Howey)テストの要件を満たしているとされた。そして判決によれば、リップル社は売上を「XRPの用途を開発し、XRPの取引市場を保護することにより、XRPの価値を促進し、増加させる」ために使用したとしている。

しかし、判決の後半は、リップル社に有利なものとなった。裁判所は、取引所やアルゴリズムによるXRPの「プログラムによる販売」は、個人投資家が他者の努力から利益を得ることを期待したという決定的な証拠がないため、同じような利益の期待を想定したものではないと判断した。

この判決は、投資会社のバーンスタインが判決後に発表したレポートで「画期的」と呼ばれ、「暗号資産業界を覆う規制の雲」を変化させるとされた。JPモルガン・チェースも同様に、判決を「画期的な勝利」と称賛したが、業界の規制との戦いが終わったわけではないとも指摘した。

SECは判決に不服を申し立てることができ、今後も同様の訴訟を起こす可能性が高い。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Understanding Ripple, XRP and the SEC Suit