暗号資産、最も暗い時期と前途に広がる明るい未来

おそらく皆さんは気づいていないかもしれないが、暗号資産(仮想通貨)は、真っ当な伝統的金融(TradFi)界では笑いものになっている。

私たちは、パーティーで人気を集めるスマートで新興のリッチな若者から、隅っこで身を潜めているピエロになってしまい、個人的な衛生状態も疑われている。

現在進行中のサム・バンクマン-フリード氏の刑事裁判は、このストーリーを強め、ピエロとしての一面を前面に押し出している。しかし、我々が肝に銘じるべきことは「夜明け前が最も暗い」ということだ。

では、成長と楽観の新しいサイクルに、どのようにして移行していけば良いのだろうか?

その答えは、イノベーティブなテクノロジーと現実資産(RWA)の普及、そして成熟した金融機関の関与の増加の組み合わせにある。

ブロックチェーンファースト

まずひとつ、はっきりさせておこう。ビットコイン(BTC)ETF(上場投資信託)に救いはない。ブラックロック(BlackRock)が中央集権的な取引所でいくつかのビットコインETFを販売することが答えだと思うなら、質問が間違っている。

TradFiの装いをまとった暗号資産は「金融の未来」ではない。

JPモルガンが、ブラックロックとバークレイズ(Barclays)と初のブロックチェーンベースの取引をイーサリアムベースのOnyxブロックチェーン上で行った一方で、多くの暗号資産投資家がいまだにETFに執着している事実は大きな皮肉だ。

我々には「ブロックチェーンファースト」が必要だ。チェーンリンク(Chainlink)と金融機関の最近の提携がこれを実践し、業界が必要とする有意義なイノベーションの一例となっていることは心強い。

チェーンリンクの画期的なCCIP(クロスチェーン・インターオペラビリティ・プロトコル)によって、金融機関はイーサリアムのような分散型パブリックブロックチェーンと相互にやり取りできる独自のプライベートブロックチェーンを立ち上げることができる。

チェーンリンクはSWIFT(スイフト:国際銀行間通信協会)、グーグル、オーストラリア・ニュージーランド銀行グループ(ANZ)、DTCC(Depository Trust & Clearing Corp.:米国証券保管振替機関)などとのプロジェクトを発表している。

実際、これは暗号資産の最終段階として、金融機関が基盤システムをリテールやホールセールの顧客が使用するプライベートブロックチェーンに移行する一方で、パブリックなパーミッションレスブロックチェーンが共存し、より暗号資産に精通したユーザーに代替の機会を提供するという極めて妥当なことだと思われる。

さらに我々は、どれほど進歩してきたかを忘れてはならない。金融の基盤や技術がブロックチェーンに移行できると信じていない人は、なぜ2022年にステーブルコインを介したブロックチェーン上の価値移転が、ペイパルとマスターカードの両方を上回ったのかを学ぶべきだ(下記グラフ参照)。

2021〜2023年にかけての決済ネットワークでの価値移転(Coinmetrics、Bloomberg)

広がるRWAの可能性

また、現実資産(RWA)をブロックチェーン上に展開する最初の段階を迎えており、何兆ドルもの価値がオンチェーンに移動する可能性が広がっている。

今年すでに、分散型ブロックチェーンを通じて30億ドル相当のRWAが購入されており、将来性の高いキャッシュフローを生み出すビジネスが次々と生まれている。

例えば、分散型金融(DeFi)界の古株であるメイカーダオ(MakerDAO)は静かな革命を遂げた。下記グラフに見られるように、同社の収益は現在、ネイティブな暗号資産レンディングではなく、RWAの利回りによって大きく牽引されている。評価の視点で捉えると、PERは18倍にのぼる。暗号資産に価値がないと言ったのは誰だろうか?

メイカーダオの収益タイプ別内訳

オンチェーンで取引できるのは、不動産や国債のような金融資産のみならず、音楽や映画のロイヤリティなどの業界全体が、透明性、小口化、より幅広いアクセス、仲介業者の削減から利益を得ることができる。

「SocialFi」の可能性も魅力的。分散型で、透明性の高いソーシャルメディアのことで、ユーザーは自分自身のデータとアイデンティティを所有し、マーク・ザッカーバーグ氏やイーロン・マスク氏の日々の気まぐれに従うことはない。ローンチから3カ月足らずで4000万ドル以上の手数料を稼ぎ出したFriendtechは、その最初の事例かもしれない。

ピエロの衣装を脱ぎ捨てることができれば、戦う価値のある暗号資産の未来がそこには本当に存在する。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto’s Darkest Hour, and the Bright Day Ahead