Web3ゲームは楽しさを前面に──Play to Earnではなく「Play and Earn」

Web3ゲームは過去3年間で人気が急上昇し、市場規模は2022年の46億ドル(約6900億円、1ドル150円換算)から、2027年には約657億ドル(約9兆8550億円)に達すると予測されている。

初めてグローバルな注目を集めたWeb3ゲームは「アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)」のようなP2E(Play to Earn:プレイ・ツー・アーン)ゲームだったが、世界中のゲーマーは収入を得るためにゲームをしているわけではない。

むしろ多くのゲーマーは、ストレス発散や気分転換、家族や友人とのコミュニケーションのひとつとしてゲームを楽しんでいる。つまり、ゲームは楽しくあるべきなのだ。

P2Eはブロックチェーン業界に大きな影響を与え、多くのユーザーをWeb3に招き入れたが、Web3ゲームはこのモデルから脱却し、ユーザー体験を第一に考えたP2Eの理念を構築する必要がある。

一部のゲーマーがWeb3を嫌う理由

Web3ゲームは、ユーザーエクスペリエンス(UX)の未熟さやゲーム内のクリエイティビティの欠如から、従来のゲーマーや開発者の多くを遠ざけてしまった。

言い換えれば、Web3ゲームに対する認識は「楽しくない」ということが多い。また、決済プロセスが難しい場合もあり、さらにNFTやゲーム内アセットの価格にガス代(取引手数料)が上乗せされてしまう。

手間と費用に加えて、すべてのオンチェーンアクションを記録することにも、ガス代がかかる。これは従来のゲーマーには馴染みのない出費だ。

Web3ゲームの中には、ゲーマーにあまり良い第一印象を与えていないものもあるが、希望の余地は十分にある。

Play to Earnではなく「Play and Earn

従来のゲーマーにWeb3への興味を持ってもらうための第一歩として、ゲームは「Play to Earn」モデルから、本来のゲームが重視している「楽しさ」を完全に取り入れたビジョンへと移行する必要がある。つまり、Play to Earnではなく「Play and Earn」だ。

Web3ゲームがNFTやゲーム内アセットの所有権をプレイヤーに提供する前に、Web3ゲーム開発者はそもそもプレイヤーをゲームに惹きつける要素、すなわち、魅力的な世界、優れたストーリーテリング、スムーズなゲームプレイ、コミュニティ感覚、ゲーム内スキルを磨く能力に焦点を当てる必要がある。

Web3ゲームが何よりもまず楽しいものであれば、Web2ゲームとWeb3ゲームの真の差別化をもたらすゲーム内アセットの所有権のような斬新な要素を追加することは自由になる。

「World of Warcraft and Eve Online」のようなゲームでは、早くも2008年の段階でトークンやゲーム内通貨を導入しており、ゲーム内アセットにはすでに長い伝統がある。Web3ゲームのチャンスは、ゲームの外でも価値を持つゲーム内アセットを提供できることだ。

これは、NFTの本来のユースケースのひとつだ。ゲーム内のスキンや武器を二次取引プラットフォームで売買できるデジタルアセットに変換することで、アセットクリエイターにも各取引ごとにロイヤリティが支払われる可能性がある。

ユーザーの参加

またガバナンストークンのようなアセットを通じて、プレイヤーに開発プロセスに対する発言権を与えることは、従来のゲーマーをWeb3ゲームに惹きつける可能性のあるもうひとつの差別化ポイントとなる。ゲーマーは、ゲーム内の特定のツールや武器の有用性について、クリエイターに貴重なフィードバックを提供することができる。

ディスカッションの場を次のレベルに引き上げ、分散型ガバナンスへの参加を通じて意思決定に影響を与える力をプレイヤーに与えることで、Web3ゲームは多くのプレイヤーを惹きつけることができるだろう。

また、従来のゲーマーや開発者、そしてこの分野に初めて参加する人々をも魅了する、ゲーム外の活気ある魅力的なコミュニティを育成することも重要だ。

ゲームを新しい地平へ

大手モバイルゲーム開発会社Zyngaが、3匹の動物が異次元へのワームホールへの扉を開くゲーム「Sugartown」をローンチするなど、ユーザー体験に焦点を当てた取り組みがすでに始まっていることは朗報だ。今、楽しいゲームという伝統がWeb3ゲームにも生まれ始めている。

DappRadarの「State of Blockchain Gaming in Q3 2023」レポートでは、2023年第2四半期以降、ユニークウォレット数が12%増加し、ベンチャーキャピタルから6億ドルがWeb3ゲームに投入されるなど、Web3ゲーム分野の成長を示すポジティブな指標が示されている。

Web3ゲームの目的は、従来のゲームを分散型ゲームに置き換えることではない。従来型のゲームはなくならない。熱心なファンがいて、世界で2817億7000万ドルを売り上げているのだから。

Web3ゲームが目指すべきところは、ユーザーのアセット所有と参加するエコシステムでの発言力に裏付けられたユニークな精神を持つ、まったく新しくエキサイティングな空間を創造することだ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:It’s Time for Web3 Games to Embrace Play AND Earn