税制改革も進めなければ、絵に描いた餅になる──自民党web3PT第1回「DAOルールメイクハッカソン」議事要旨

自由民主党デジタル社会推進本部web3プロジェクトチーム(web3PT)は11月15日、DAO(分散型自律組織)に関する法律のあり方について議論する「DAOルールメイクハッカソン」の第1回目を開催した。

ハッカソンは、最初に日本におけるDAO(分散型自律組織)の現状を把握するために、全国からDAOをベースにさまざまな取り組みを行っている事業者、DAOに関するソリューションを提供している事業者などがその取り組みをプレゼンテーション。その後、事業者とweb3PT、さらにはDAOに関心を持つ議員、省庁からの参加者を交えて課題や問題点を議論する形で進められた。

当初、11月中に3回の開催が予定されていたが、全国からハッカソンへの参加を希望する事業者が相次いだため、急遽4回で開催されることになった。

参考記事:web3PT「DAOルールメイクハッカソン」スタート──「柔軟に、アジャイルにルールをデザイン」と平座長

会場は自民党本部の会議室。第1回目のハッカソンには、パネリストとして、自民党から党デジタル社会推進本部長の平井卓也議員、web3PT座長の平将明議員、同事務局長の川崎ひでと議員と、プレゼンテーションを行う事業者として、しばファーム、JPYC、double jump.tokyo、Overlay AGの方々が着席。さらに複数の議員、web3PT関係者、各省庁からの出席者などが参加した。

以下、各事業者のプレゼンテーションとその後の議論の要旨を紹介する。

しばファーム:tomajoDAO

「しばファーム」が取り組んでいる「tomajoDAO」は、「農家の所得を上げること」を目的としたDAO。Discordを使って、生産者と消費者が直接交流できる場を提供。NFTで資金を調達し、tomajoブランドの認知向上に取り組んでいる。

JPYC

前払式支払手段型のステーブルコインを発行しているJPYCは、NFTやweb3を使って東京都・青ヶ島の漁業を活性化する「ブルーエコノミー事業」に取り組んでいる。リモートワークが定着して、島には移住希望者が増えているものの、住宅問題は大きなハードルとなっており、DAOで資金調達を行い、宿泊施設を建設・運営しようとしている。

double jump.tokyo

NFT・ブロックチェーンゲーム開発会社のdouble jump.tokyoは、大手ゲーム会社や通信会社がバリデーターとして参加するゲーム特化型ブロックチェーン「Oasys」にメインディベロッパーとして参加。Oasysの2028年のDAO化に向け、試験的な運用体制をスタートさせている。

Overlay

日本とスイスに拠点を置くOverlayは、DAO関連のソリューションを手がけている。現在はスイスのDLT Law(分散型技術関連法)に合わせて、ビジネスをブロックチェーン上に展開できるインフラを開発している。

具体的かつ詳細な意見交換

各事業者のプレゼンテーションでは、現状の問題点や要望なども挙げられ、例えば、「DAOの法人格取得」「保有するNFTへの課税の問題」「集団投資スキームへの該当性」「株式会社・合同会社からのDAO化のルールづくり」「DAOのトークンホルダーへの有限責任性」など、さまざまな点が指摘された。

プレゼンテーションの後には、意見交換を実施。最初に、web3PT座長の平議員が口火を切り、「各事業者からDAOを使いやすくしてほしいとの要望があったが、ガバナンスと執行を分けるためには、他社発行トークンの第三者保有に対する課税の問題が関わってくる。税制改革も一緒に進めなければ、DAOのルールメイクが絵に描いた餅になってしまう」と述べ、参加していた議員、省庁関係者に訴えた。

意見交換は、実際にDAOに取り組む4事業者が、他の事業者の取り組みに対して質問を投げかけたり、web3PTから事業者に詳細な説明を求めるなど、きわめて具体的、かつときには専門的なものになった。

「DAOの出現は、(株式会社の源流と言われる)東インド会社と同じくらいの革命」という発言があった一方で、「DAOに参加する一般の人たちには、web3やトークンなどはまだまだ難しい。まったくついていけない」という現状も述べられた。DAOに関するこれまでの取り組みのうち、「半分以上を教育に費やしてきた」との声も聞かれた。

さらに会場から「究極のDAOをどのように考えているか」との質問があったり、「DAOは多様だからこそ、ルールメイクの観点からすると、1つのルールでカバーすることはありえないだろう」との意見も聞かれた。

議論の最後には平井議員が「今日、さまざまな会議に参加したが、ここが一番エキサイティングだった。絶対に必要なものであり、前に進めていきましょう」と述べた。さらに平議員が「DAOの取り組みは地方創生につながるものもあり、内閣府も関わってくる。その他にもデジタル庁も関係してくる」と語り、DAOの法整備、推進支援は、政府・官庁を巻き込んだ取り組みであることを強調した。

次回(2回目)は、11月22日に開催の予定。

|文・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|資料:自民党web3PT
|写真:CoinDesk JAPAN編集部