トークン化が軌道に乗る今、DAOが参考になる

暗号資産(仮想通貨)とTradFi(伝統的金融)の資産運用が融合しつつある。

ビットコインETFのアメリカでの記録破りの市場デビューから、ブラックロック(BlackRock)のラリー・フィンク(Larry Fink)CEOによる、次のステップは「あらゆる金融資産のトークン化だ」という最新の主張まで、その方向性はますます明らかになりつつある。

資産がオンチェーンに移行するにつれ、パブリックブロックチェーンで機関投資家の資金を展開するうえで、より多くの運用マネージャーは独自の課題に直面することになるだろう。

価格の将来的な方向性に関する盛り上がりや憶測のもとで、インターネットネイティブなエコシステム全体が暗号資産をベースに構築されつつある。

地理的な境界を超え、法的な契約の代わりにコードによって管理されるデジタルエンティティである分散型自律組織(DAO)は、一般的にオンチェーンで管理されている大規模な資産を蓄えているため、このような課題の多くに他に類を見ないほど精通している。

ボラティリティと「リスクフリー」資産の欠如

価格変動は暗号資産エコシステム全体に蔓延しており、多くのDAOはこれに正面から立ち向かわなければならない。

DAOの大半は、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)よりもさらにボラティリティの高いネイティブトークンを保有している。オンチェーンで資産を管理する際のさらなる課題は、伝統的市場とは異なり、暗号資産には確実な避難所として頼るための真のリスクフリー資産が欠けていることだ。

ドル連動型ステーブルコインは、しばしばリスクフリー資産の代わりに使用されるが、ボラティリティがないことはリスクがないことを意味しない。

2023年にシリコンバレー銀行が破綻した際、サークル(Circle)の同行へのエクスポージャーのために、USDコイン(USDC)が7%を超える下落に見舞われた。

DAOのオンチェーン資金のドローダウン(Avangarde、DeepDAO)

DAOコミュニティには、極端なボラティリティを乗り越えることで組み込まれてきた確かなレジリエンスがある。

DeepDAOのデータによると、2022年第4四半期にオンチェーン資産保有高トップ200のDAOのうち、3分の1以上のDAOがFTXの崩壊を受けてポートフォリオが50%以上減少し、30が90%以上のドローダウンを経験した。

DAOが着目しているソリューションの1つは、現実資産(RWA)、特にトークン化された国債だ。このトレンドは、RWAに対するオンチェーンでのナチュラルで暗号資産ネイティブな需要の源泉を提供し、より広範なトークン化とTradFiとの融合への道を開いている。

流動性と分散化の制約

トークンは24時間365日取引されているにもかかわらず、その多くには有意義な流動性が依然として不足している。

これは、多くのDAOトークンが上場している分散型取引所(DEX)での取引高を見ればわかるが、中央集権型取引所で見られるロングテール資産の取引活動の数分の1しかなく、その結果、大規模な取引は、価格に大きな影響を与える可能性がある。

さらに、DeFi(分散型金融)全体では、最大規模のレンディングプロトコルと流動性プールの利回りでさえ、少額の預金に対しては表面上は高くても、機関投資家規模の資産を展開すると著しく低くなることがある。

このような流動性の低さがもたらす影響として、DAOは自己資金を分散する能力に制約を受ける。DAOは多くの場合、オンチェーンに極端に集中したポートフォリオを保有している。2023年末時点で、トップ25のDAOの大半は、自己資金の90%以上をネイティブトークンで保有していた。

DAO資金のネイティブトークンへの集中度(Avangarde、DeepDAO)

分散投資はしばしば、投資において唯一、無料で利用できる手段と呼ばれる。DAOが分散投資のメリットを完全に享受するための制約が、デリバティブプロトコルを介した代替的なオンチェーンソリューションの探求と開発、またはネイティブトークンをDeFiの担保として使用する動機になっている。

透明性とガバナンス

オンチェーンポートフォリオのユニークな透明性は、多くの理由で魅力的(例えば、ポートフォリオ取引は監査可能で検証可能)だが、トレードオフもある。目に見える取引活動は情報漏洩の原因となり、フロントランニングのリスクを高め、取引コストの上昇につながる可能性もある。

透明性の向上は、ガバナンスの問題を悪化させる可能性もある。ネイティブトークンの売却は、大口トークン保有者によるプロジェクトに対する信頼の喪失と解釈される可能性がある。

DeFiプロトコルで大きなポジションが可視化されることで、プロトコルのコミュニティから不利なガバナンス措置が取られる可能性もある。例えば昨年、アーベ(Aave)コミュニティから提案された、オンチェーンで可視化された借り入れポジションの大きさを理由とした、アーベ上のCRVトークンの凍結などだ。

オンチェーンでの資産運用を目指す機関投資家が直面する独自のリスク、制約、トレードオフの多くは、DAOの財務部門も共有している。

この暗号資産ネイティブの需要を満たすためにDAOサービスプロバイダーのエコシステムによって開発されている斬新なフレームワークとソリューションは、伝統的な機関投資家が学ぶべき興味深いサンドボックスとしても機能する。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:As Tokenization Takes off, Look to DAOs