暗号資産が上昇するなか、再び高まる「DeFiの夏」への期待
  • DeFi(分散型金融)の利回りは米国債のような従来の投資の利回りを上回っており、関心が再燃し、再び「DeFiの夏」が来るかもしれないという期待が高まっている。
  • メーカーDAO(MakerDAO)のDAI Savings Rate(DSR)は15%の利回りをユーザーに提供。さらにリスクは高くなるが、Ethena Labsなどを通じて27%の利回りを得ることができる。
  • 「強気相場で価格が徐々に上昇し始めたが、2カ月後の現在、DeFiとTradFi(伝統的金融)のレートはまったく逆になっている」とある専門家は述べた。

2023年、DeFiは低迷し、暗号資産(仮想通貨)業界が直面した多くの苦難の1つとなっていた。

米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする中央銀行が金利を引き上げていたため、伝統的な(多くの場合、よりリスクの低い)投資の方が魅力的に見えた。より安全な米国債の利回りが高いのに、なぜDeFiに資金を突っ込む必要があるのか?

しかし、暗号資産業界が活気を取り戻し、「DeFiの夏」と呼ばれた2020年の賑わいを思い起こさせるなか、DeFiは今、再び上昇傾向にあるように見える。

DefiLlamaのデータによると、7日間平均のDeFi利回りの中央値は、2023年の大半は3%を下回り、2%を何度か割り込んだが、2024年3月には6%近くまで急増した。

メーカーDAOのDSRに担保を差し入れると、ユーザーは15%の利回りを得ることができる。DeFiのよりリスクの高い分野に足を踏み入れる余裕のある人は、Ethena Labsのようなところを通じて27%の利回りを得ることができる。

これらの高い水準は、銀行が米ドル建てデリバティブや融資の価格決定に使用する金利であるSecured Overnight Financing Rate(SOFR:担保付翌日物調達金利)を上回っており、そちらは現在、約5.3%となっている。

USDCのレンディング金利 vs SOFR(Steakhouse)

機関投資家からの強力な追い風が現在の暗号資産強気市場を牽引しているが、これは、ブラックロック(BlackRock)やフィデリティ(Fidelity)などのビットコインETFが1月に登場したことに加えて、伝統的な金融機関が現実資産(RWA)のトークン化(ブロックチェーンで取引されるトークンを通じて従来の資産の所有権を表すこと)に関心を示したことに端を発している。

過去1年、JPモルガンやブラックロックのような伝統的な金融機関、あるいはOndo Financeのような暗号資産スタートアップは、米国債やマネーマーケットファンド(MMF)のような高利回りの資産をトークン化することに注力してきた。

TradFiの金利を上回る

しかし、ステーキハウス・ファイナンシャル(Steakhouse Financial)の共同設立者であるセバスチャン・デリヴォー(Sébastien Derivaux)氏によれば、暗号資産とDeFiは10月に上向き始めた。DeFiの利回りがSOFRと並び始め、後に上回るようになった頃だ。トークン化された従来の金融商品よりも、むしろ暗号資産ネイティブなDeFi商品の方が魅力的に見え始めた。

「強気相場には、レンディングプロトコルの金利が上がるのが通例だ。パーペチュアル市場ではさらに上昇した(個人トレーダーがDeFiでレバレッジをかけるよりも、パーペチュアル市場を提供するオフショア取引所を利用する方が簡単と判断したからだと推測される)」とデリヴォー氏は指摘する。

ビットコインETF承認後の数カ月は、この傾向が強まり、2020年初頭の新型コロナウイルス危機の激化に続く、比較的急速な金利上昇と並行している、と現実資産(RWA)のトークン化のパイオニアであるセントリフュージ(Centrifuge)CEOのルーカス・フォーゲルサング(Lucas Vogelsang)氏は言う。

「我々は実は、市場で2つの完全な変化を経験した。FRBは言ってしまえば、一夜にして金利を変更した。少なくともゼロから2%、3%へとかなり早く変化し、DeFiの様相は完全に変わった」とフォーゲルサング氏は語り、「強気相場で価格が徐々に上昇し始めたが、2カ月後の現在、DeFiとTradFi(伝統的金融)のレートはまたまったく逆になっている」と続けた。

「未熟さの表れ」

暗号資産業界はまだ比較的小規模であるため、強気な人々に貸し出す資本が不足しており、その結果、強気な人々は高金利での借り入れを嫌がらない。機関投資家は明らかに暗号資産に興味を持っているが、実際には市場の需要のギャップを埋めているわけではない、とフォーゲルサング氏は指摘し、次のように語った。

「オフチェーンの金融市場では、供給が不足しているからといっても12%の利回りは望めない。誰かが不足分を埋めるからだ。オンチェーンではそうはならない。そういう意味では、未熟さの表れだ」

DeFiのレンディング金利の中には持続不可能と思えるほど高いものもあり、過去に破綻した暗号資産プロジェクトを思い出させる。しかし、例えばMorpho Labsのようなプラットフォームでは、LTV(ローン・トゥ・バリュー:担保に占める融資の割当)は比較的低いとドラゴンフライ(Dragonfly)のゼネラルパートナーであるロブ・ハディック(Rob Hadick)氏は指摘する。

「レンディングが戻ってきたのではなく、預金が戻ってきたのだと思う。人々が利回りを求めているからだろう。しかし、今は数年前ほど再担保化は進んでいない」とハディック氏。

ドラゴンフライはEthena Labsに投資しており、ハディック氏は、Ethena Labsのプラットフォームで得られる超高利回りは、純粋なレバレッジに支えられているのではなく、スポット市場をロングし、関連する先物をショートする、ベーシストレードに従っていると指摘した。

「市場が変われば、金利は下がるかもしれない。しかし、伝統的な意味でのレバレッジとは違う。経済的でなくなれば、取引を解消するだけた。『自滅して、担保が清算されることになる』こととは違う。この種の取引では、そのようなことは起こらない」と、ハディック氏は語った。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:DeFiの利回り(DefiLlama)
|原文:Amid Giant Crypto Rally, Hopes for Another DeFi Summer Soar