米規制案でステーブルコイン市場でのテザーの優位性が弱まる可能性:S&P
  • 規制の明確化により、銀行のステーブルコイン市場への参入が促進されるだろうとS&Pはレポートで指摘した。
  • ステーブルコイン法案が承認されれば、テザーの優位性が弱まる可能性があるという。
  • 新しいデジタル資産カストディプロバイダーが出現し、競争が激化する可能性がある。

S&Pグローバル・レーティング(S&P Global Ratings)は24日のレポートで、アメリカでの規制の明確化は、伝統的な金融業界から銀行がステーブルコイン市場に参入するきっかけとなるはずであり、同時にテザー(USDT)の優位性を弱める可能性もあると指摘した。

ステーブルコインを規制する法案が提出

ステーブルコインは、暗号資産(仮想通貨)市場の基盤として機能する暗号資産の区分だ。上院議員のシンシア・ルミス(Cynthia Lummis)氏(共和党・ワイオミング州)とカーステン・ギリブランド(Kirsten Gillibrand)氏(民主党・ニューヨーク州)は先週、国内でステーブルコインがどのように運用されるかを定める新しいステーブルコイン法案を提出した。

ステーブルコインのペッグとしては米ドルが最も一般的だが、S&Pのレポートによると、ステーブルコイン発行者のほとんどはアメリカの個別の規制の対象にはなっていないという。この状況が、この法案の導入を受けて変わる可能性がある。

アナリストのアンドリュー・オニール(Andrew O’Neill)氏は、「新ルールは、銀行業ライセンスを持たない機関の発行額を最大100億ドル(約1兆5500億円、1ドル155円換算)に制限することで、銀行に競争上の利点をもたらす可能性がある」と述べた。

テザーの優位性が弱まる可能性

CoinDeskのデータによると、テザーの時価総額は1100億ドル(約17兆500億円)で、暗号資産全体で3位につけている。サークル(Circle)社のUSDコイン(USDC)は340億ドル(約5兆2700億円)でステーブルコインの中では2位となっている。どちらも価格が米ドルに連動している。

オニール氏は、「ステーブルコイン法案の承認は、特にオンチェーン決済を伴うトークン化やデジタル債券発行に関して、企業によるブロックチェーンのイノベーションを加速させるだろう」とし、「ステーブルコインをめぐる企業のユースケースが増えると、ステーブルコイン発行者として銀行には機会が生まれるだろう。そして、世界のステーブルコイン市場におけるテザーの優位性が低下することにもなる可能性がある」と指摘した。

S&Pは、テザーを発行しているのはアメリカの事業体ではないため、今回の法案の下では許可された決済ステーブルコインではないと述べた。これは、アメリカの事業体がテザーを保有したり取引したりできないことを意味しており、これによりテザーの需要が減少すると同時に、アメリカが発行するステーブルコインが増加する可能性がある。しかし、テザーの取引活動は主にアメリカ国外の新興市場で行われており、個人投資家と送金によって牽引されているとレポートは指摘している。

レポートでは、「カストディアンがデジタル資産を貸借対照表で報告するという米証券取引委員会(SEC)の要件が撤廃されれば、デジタル資産カストディサービスの新たなプロバイダーが出現する可能性がある」と指摘された。これにより競争が激化する可能性がある。

S&Pは以前、テザーが価格を1ドルに維持するという中核的な任務を遂行する上で競合するステーブルコインよりも劣っていると批判していた。

|翻訳・編集:林理南
|画像:Krišjānis Kazaks/Unsplash
|原文:Tether’s Stablecoin Dominance May Wane Following Proposed U.S. Rules: S&P