ブラックロック、オンド、スーパーステート:RWAを牽引した動きを振り返る

RWA(リアル・ワールド・アセット、現実資産)は、暗号資産(仮想通貨)業界で最も急速に台頭している分野だ。要するに、米財務省短期証券のような伝統的金融資産をトークン化し、DeFi(分散型金融)プロトコルで取引できるようにするものだ。

RWAは伝統的金融とブロックチェーンテクノロジーの融合を実現し、より広範な流動性とイノベーティブな金融商品を実現する。

2024年第1四半期(1-3月期)、RWA市場は飛躍的に成長した。BlackRock(ブラックロック)の「USD Institutional Digital Liquidity Fund(BUIDL)」、Superstate(スーパーステート)の「Short Duration US Government Securities Fund」、Ondo Finance(オンド・ファイナンス)のUSDYをはじめとするトークン化国債は、機関投資家の大きな関心を集め、41%増の約13億ドル(約2015億円、1ドル155円換算)と驚異的な成長を遂げた。RWAの主な動きとトレンドを振り返ってみよう。

機関投資家の関心と新商品が成長に拍車

成長の大部分は、大手機関投資家の参入が牽引した。

世界最大の資産運用会社BlackRockは、オンチェーン国債商品を発表し、瞬く間に2億8000万ドルの資金を集めた。Compound Financeコンパウンド・ファイナンス)のロバート・レシュナー(Robert Leshner)氏が設立した新しい暗号資産ネイティブな資産運用会社Superstateは、トークン化された米国財務省短期証券ファンドをデビューさせ、8200万ドルを集めた。

こうした取り組みは、伝統的金融機関や暗号資産ネイティブの間で、RWAに対する信頼と関心が高まっていることを浮き彫りにしている。

既存のRWAプレーヤーも提供商品を拡大している。Ondo Financeは、預り金を新しいUSDY商品にシフトさせた。現実資産をトークン化するプラットフォームを提供するCentrifuge(セントリフュージ)は、2四半期連続で運用資産を着実に増加させた。

規模拡大のみならず、RWAをより利用しやすくし、より広範なDeFiエコシステムとコンポーザブル(構成可能)にするためのインフラも出現した。

Superstateはブロックチェーン技術を活用して、スピード、プログラマビリティ、コンプライアンスの向上を目指している。M^0 Labsは、高品質なオフチェーン担保から、デジタルキャッシュを生成する方法を開発している。

Ondo Global Markets(オンド・グローバル・マーケッツ)は、オンチェーントークンとオフチェーンアカウントの間で資産をシームレスに移動させる双方向システムを構想している。

Centrifugeは、RWAトークン化プラットフォームの拡大を継続させ、運用資産残高を着実に成長させた。

これらの動きは、RWAを支えるインフラの強化に向けた継続的な取り組みを裏付けている。

トレンドの進展と今後

DeFiプロトコルは、RWA利回りを組み込む方法を見出している。Morpho(モルフォ)は、RWA利回りをDeFiユーザーに提供するノンカストディアル・サービスを提供している。

クレジットプロトコルの老舗TrueFiは、トークン化された米国財務省短期証券を担保として預け入れ、DeFi全体で使用可能なドル連動型資産を発行できるTrinityを立ち上げる。これは、DeFiユーザーの間で高まっているRWA商品のコンポーザビリティと移転可能性の向上に対する要望に応えるものだ。

スケーラブルでユーザーフレンドリーな方法でRWAをDeFiにインテグレーションすることは、長年の課題であり、重要な鍵だった。今、大手金融機関が流入を加速させ、新たな商品が登場して、既存のDeFiインフラとの相互運用性が高まっていることで、準備は整いつつある。

まだ初期段階だが、RWAは今後数年間、暗号資産の成長の重要な牽引役となる可能性があり、注視すべき領域だ。現在の傾向が続けば、Superstateのレシュナー氏が予測したように、2030年までにRWAトークン化市場は数兆ドル規模に達することはあり得ない話ではないだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:BlackRock, Ondo, Superstate: The Biggest Movers in the RWA Sector in Q1