RWAオンチェーン・プライベート・クレジットとは──メインストリームに浮上するか

リアル・ワールド・アセット(RWA、現実資産)オンチェーン・プライベート・クレジットは、あまり耳にすることのないであろう暗号資産(仮想通貨)の一分野だ。しかし、メインストリームの投資機会を提供し始める可能性があるため、知る価値がある。

プライベート・クレジットは聞いたことがあるだろう。

プライベート・クレジット:非公開で組成、交渉される投資商品。多様なリスク・リターン特性を有する、流動性が低く相対的に高い利回りを提供可能な投資機会から構成されることもあります。公開市場では取引されません(PIMCOより引用)

伝統的金融では、プライベート・クレジット・ローンはノンバンク融資の一形態であり、通常、中小企業に対してノンバンクが融資を行う。

デジタル資産の世界のおけるRWAオンチェーン・プライベート・クレジットとは、RWA(現実資産)を担保にした貸し借りのプロセスをブロックチェーン上で実現したものをいう。オンチェーン・ローンにおけるRWAの担保には、会社の在庫、売掛金、不動産、収益に基づく融資などが想定される。

RWAオンチェーン・プライベート・クレジットを提供するDeFiプロトコルは数少ない。これらのDeFiプロトコルは、世界中の多くの中小企業に対して、ノンバンクの貸し手からの資本へのアクセスを提供している。

ほとんどの場合、RWAオンチェーン・プライベート・クレジットとやり取りする貸し手は、KYC/AML(本人確認/アンチマネーロンダリング対策)、適格認定チェックなどの要件を満たしていなければならない。

プライベート・クレジットをオンチェーン化するメリットは、従来の金融システムに比べて取引コストが削減され、透明性が高まることだ。リスクとしては、借り手の債務不履行リスクや、まだ成熟していない暗号資産業界の未知数があげられる。

プレイヤー

分析会社rwa.xyzによると、現在アクティブなローンに基づく3大オンチェーン・プライベート・クレジット会社は以下の通りだ。

  • Centrifuge(セントリフュージ:借り手は、銀行などの仲介業者を介さずにDeFi資本にアクセスでき、RWAを担保に資金調達ができるクレジット・マーケットプレイス。また「Centrifuge Prime」を通じて、大規模な分散型組織にもサービスを提供しており、DeFiネイティブの組織は実際の経済活動から得られる実際の利回りを利用できる。
  • Maple(メイプル:機関投資家や適格個人投資家の流動性、リスク、リターン要件に適した融資機会を提供することに特化したオンチェーン・マーケットプレイス。米国債、投資適格債、デジタル資産で超過担保とされたローンなど、さまざまな担保付融資を提供。
  • Goldfinch(ゴールドフィンチ:Warbler Labs(ワーブラー・ラボ)が手がけるGoldfinchは、暗号資産担保なしの暗号資産借入を実現する分散型クレジット・プロトコルで、ローンは全額オフチェーンでの担保を必要とする。Warbler Labsの創業者たちは最近、オンチェーン・プライベート・クレジットRIA(登録投資顧問)であるHeron Finance(ヘロン・ファイナンス)も立ち上げた。

Credix(クレディックス)やClearpool(クリアプール)のような小規模な会社も2023年を通して、この分野でポジションを築いた。

  • Credix(クレディックス)の貸し手は、債権を裏付けとしたコロンビアの農家への保険付きプライベートクレジットに投資することで、年間11%近い利回りを獲得できる。
  • Clearpool(クリアプール)は機関投資家レベルのKYC/AMLに準拠したプライベートクレジット市場「Clearpool Prime」を立ち上げた。

注意しなければならないのは、現在最大のオンチェーン・プライベート・クレジット会社が、明日もそのポジションを維持するとは限らないことだ。rwa.xyzによるグラフを見ると、市場シェアは変動し、すべての会社が2022年の暗号資産の低迷期を生き残ることに苦労したことがわかる。2023年、オンチェーン・プライベート・クレジット会社は徐々に復活を遂げている。

メインストリームになるか?

歴史的に、オンチェーン・プライベート・クレジットは少数のネイティブ暗号資産ユーザーによって牽引されてきた。注目すべきトレンドの1つは、ブロックチェーンベースのRWAプライベート・クレジットを、メインストリームの非暗号資産ネイティブの消費者によって、より利用しやすいものになる可能性だ。

Maple FinanceのCEOは「暗号資産の複雑さをできるだけ取り払いたい。私の将来のビジョンは、Ares(アレス)やApollo(アポロ)のような一般的なクレジット・ファンドよりも手数料の安価なクレジット・融資商品だとファミリーオフィスに売り込めるようになることだ」と述べている。

オンチェーン・プライベート・クレジットをメインストリームにするだけでなく、より幅広い人たちに利用してもらおうという取り組みもある。プライベート・クレジットの多くは貸付機関によって利用されてきたが、適格投資家が資本を活用する余地はもっと大きいとするものだ。

例えば、Goldfinchプロトコルから派生したHeron Finance(ヘロン・ファイナンス)は先日、SEC(米証券取引委員会)に登録されたブロックチェーンベースのRIAを立ち上げたが、これは暗号資産ネイティブの知識を持たない米適格投資家向けに設計されている。

オンチェーン・プライベート・クレジットの体験が、電信送金やACH経由の入金などで、よりメインストリームになれば、追加利回りを求めているが、さまざまな暗号資産や複数のウォレットでの取引を好まない富裕層顧客にサービスを提供するファイナンシャル・アドバイザーには新たな投資機会となるかもしれない。先見の明のあるファイナンシャル・アドバイザーにとっては、注目すべき分野だ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Julien Moreau/Unsplash
|原文:Crypto for Advisors: Private Credit Meets the Blockchain