米年金基金がビットコイン採用──保守的なプロにも長期的展望への期待高まる
  • 約500の機関投資家が第1四半期に、ビットコインETFに投資したことを明らかにした。
  • この中にはあらゆる種類の機関投資家が含まれており、機関投資家向け投資顧問会社が保有者の60%、ヘッジファンドが約25%を占めている。これは、新しいETFのローンチからわずか数カ月後には通常ありえない結果だと専門家は述べた。
  • ウィスコンシン州が1億6000万ドル(約250億円、1ドル156円換算)を購入したという驚くべき投資もあり、今後、年金基金からの関心が高まりそうだ。

異例の広がり

ビットコイン(BTC)ETFは今年1月に大々的にデビューし、瞬く間に数十億ドルの投資を集めた。しかし、誰が購入し、なぜここ数週間で資金流入が停滞しているのだろう? 流行が下火になったのだろうか?

プロの大口投資家の間でのビットコインの長期的な見通しに期待を寄せる人々に、先日、新たなニュースが再び大きな話題を提供した。

米ウィスコンシン州の年金基金が、四半期報告書で3月末までにブラックロック(BlackRock)とグレイスケール(Graysclae)のビットコインETFに約1億6000万ドルを投資したことを明らかにした。

年金基金は一般的に投資に関して保守的で、新しいものは時間をかけて取り入れる。ちなみに、ウィスコンシン州は一般的に派手な買い物をする土地柄ではない。

しかし、ビットコインがウィスコンシン州に進出しているのであれば(過去10年間、投資の世界で最も高いリターンを記録していることが後押ししていることは間違いない)、暗号資産の元祖ビットコインは投資家層を拡大し続けらことができると考えるのに十分な理由があるのかもしれない。

「Wow、州の年金基金が第1四半期に(ブラックロックのビットコインETFを)購入した」とブルームバーグ・インテリジェンス(Bloomberg Intelligence)のシニアETFアナリスト、エリック・バルチュナス(Eric Balchuna)氏はXで即座に反応した。

「通常、(ETFの流動性が高まるまでの)1年ほどは、このような大物の機関投資家が(投資する)ことはない」と指摘し、「良いサインだ。機関投資家は群れで動く傾向があるので、あとに続くところが出ると見込まれる」と続けた。

第1四半期末時点で500以上の機関投資家が1口以上のビットコインETFを保有しており、これは新規にローンチされたETFの平均である200を大きく上回っているとバルチュナス氏は指摘した。

ブルームバーグのデータによると、プライベートエクイティ、保険会社、証券会社など、ほぼすべての種類の機関投資家が参加している。投資顧問会社が全体の約60%を占め、4分の1がヘッジファンドだった。

バルチュナス氏は、第1四半期にすべてのタイプの投資家が参加したことは異例で、通常は新しいETFがローンチされてから数年経たないとそのような状況は見られないと述べた。

なんと、州の年金基金が第1四半期に$IBITを購入した。通常、このような大物の機関投資家の13F(株式保有報告書)にETFが登場するのは(ETFの流動性が高まる)1年ほど先のことだが、これまで見てきたように、これらは普通のローンチではない。良いサインだ。機関投資家は群れで動く傾向があるので、あとに続くところが出ると見込まれる。

Bitcoin Magazine:速報: ウィスコンシン州投資委員会、ブラックロックの現物#ビットコインETF を約1億ドル相当保有していることを公表

リスク嫌いの年金基金による受け入れ

最大の買い手はヘッジファンドのミレニアム・マネジメント(Millennium Management)で、総資産の約3%を複数のファンドに配分したが、その大半はブラックロックのIBITだった。

米証券取引委員会(SEC)に提出される株式保有報告書「フォーム13F」は全体像を伝えておらず、投資した理由についての洞察は与えてくれない点を認識することが重要だ。

これらの投資すべてが長期的なものであったり、ビットコイン価格の上昇に左右される投資であるわけではない。一部は間違いなく取引会社のマーケットメイキング事業によるもので、誰かの取引の相手側として行動できるようにポジションが保持され、その後すぐに清算される可能性が高い。

また、この提出書類は過去にさかのぼったものであり、3月31日に保有ポジションが公開されるまでに、投資が追加されたり、減らされたり、完全に逆転しているかもしれない。ビットコイン価格は3月に史上最高値を記録して以来下落しており、それが投資を減らす理由になっている可能性がある。

最大の驚きは、年金基金が関与していたことかもしれない。年金業界はリスクを嫌い、官僚主義がビットコインETFのような新しいもの(ビットコイン自体は15年前のものだが)を受け入れることを妨げる可能性があるからだ。

保険大手のマサチューセッツ・ミューチュアル(Massachusetts Mutual)が2020年、1億ドル相当のビットコインを購入し、暗号資産取引とカストディを手がけるNYDIGに資本参加したことから、業界は競合他社が同様の動きで追随することを期待したが、実際には大きな動きにはならなかった。

多くの年金基金がウィスコンシン州のあとに続くことは時間がかかるかもしれないが、ビットコインETFの登場により、投資はより簡単になった。

ビットコインを直接購入し、それを安全に保有する方法を見定める代わりに、投資家(規模を問わず)は単にビットコインを保有するETFを購入するだけでよい。ETFは通常の株式と同様に取引され、カストディなどの管理上の懸念はあったとしても最小限、あるいはほぼ存在しない。

「年金基金は通常、非常に厳格なデューデリジェンスプロセスを経るため、新しい投資、特に新興の資産クラスへの投資を決定する際には時間がかかることがある」と、ETFストア(ETF Store)のネイト・ジェラチ(Nate Geraci)社長は述べた。

ETFの発売からわずか数カ月でウィスコンシン州の投資委員会から投資があったことは、その規模の機関投資家がこれらのファンドの仕組みや流動性にすぐに安心感を感じられることを示しているとジェラチ氏は指摘した。

「需要の波」

「より多くの年金基金が追随すると見込まれるが、それは一夜にして起こることではなく、徐々に需要の波が押し寄せてくるだろう」とジェラチ氏。

ビットコインETFの発行元の一つであるヴァンエック(VanEck)のデジタル資産部門責任者であるカイル・ダクルーズ(Kyle DaCruz)氏は、最近の動きは年金基金がデジタル資産への投資に違和感を感じていないことを示していると述べた。

「私の推測では、年金基金や機関投資家がより早く安心して投資できるようになるのは確かだが、最初は比較的少数だろう」とダクルーズ氏は語った。

ウィスコンシン州投資委員会の担当者はコメントを控えた。

年金基金は、法律で「大きな損失のリスクを最小限に抑える」ことを義務付けられているため、業界で最もリスク回避的な投資家と見なされている。そのため、最もリスクの高い資産のひとつであるデジタル資産は通常、年金基金にとって優れた投資対象とは考えられていない。

これは、投資大手のバンガード(Vanguard)が顧客にビットコインETFを提供していない理由のひとつでもある。同社は、デジタル資産が年金基金のような長期ポートフォリオに適さないと考えている。

ブラックロックの元ETF責任者サミル・ラムジ(Samil Ramji)氏がバンガードのCEOに任命されたという5月14日のニュースを受けて、バンガードが暗号資産に対するスタンスを変えるかもしれないという噂が流れた。

しかしラムジ氏は15日、Barron’sのインタビューで、ビットコインETFをローンチしないというバンガードの決定を覆すつもりはないと述べた。

「舞台裏では、このような大きな金融機関の多くの投資委員会が、ビットコインへの資金配分の承認を得るために動いていると思う。しかし、こうした承認プロセスは一夜にして行われるものではなく、機関投資家によるビットコインの採用が完全に行われるには数カ月、場合によっては数年かかることになる。だが明らかに起こっている」とセブン・シーズ・キャピタル(Seven Seas Capital)の最高執行責任者(COO)であるステファニー・ヴォーン(Samil Ramji)氏は述べた。

「確かに今回は違う。連邦政府だけでなく、ブラックロックやフィデリティのような巨大企業からも承認されたことで、形勢は一変した」と、ヴォーン氏は語った。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:As a Pension Embraces Bitcoin, Hope Grows for Cryptocurrency’s Long-Term Prospects Even Among Conservative Pros
※編集部より:タイトルを一部修正し、更新しました。