すべての銀行とフィンテック企業は、DeFiの導入を望んでいる:アルケミーのCTOが指摘
  • フィデリティ、JPモルガン、ゴールドマン・サックス、レボリュート、ロビンフッドのような企業は、いずれもDeFi(分散型金融)の「仕組み」を探求したいと考えていると、アルケミーのギヨーム・ポンサンCTOは述べている
  • この種のユーティリティの例としては、コインベースのユーザーがビットコインをロックすることで簡単にローンを利用できることが挙げられる。

ブロックチェーン開発企業のアルケミーは、銀行や金融機関、大手フィンテック企業は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が暗号資産(仮想通貨)に有利な規制を行い始めてから、資金をオンチェーン化し、分散型金融(DeFi)へのコンプライアンスを守った形でのシームレスなアクセスを提供しようと模索してきたと述べている。

従来、DeFiは匿名ユーザーが自動化された複雑な資産の貸し借りに参加する手段だったが、コンプライアンスのガードレールを設け、スマートコントラクトの煩雑さを排除することで、従来型金融(TradFi)に新たなユーザー層をもたらす可能性がある。

アルケミーによれば、この場合のパターンは「DeFi mullet(表向きはTradFiで裏側はDeFiという意味)」と呼ぶのが最も的確だという。アルケミーはブロックチェーン開発者向けの「ピック&ショベル」的なサービスを提供する企業で、「暗号資産界のAWS(Amazon Web Services:アマゾン・ウェブ・サービス)」とも呼ばれている。

アルケミーの最高技術責任者(CTO)のギヨーム・ポンサン(Guillaume Poncin)氏はインタビューで「フィデリティ(Fidelity)、JPモルガン(JPMorgan)、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、レボリュート(Revolut)、ロビンフッド(Robinhood)のような企業は、それぞれ進化の段階は異なるが、いずれも自社ユーザーが米ドルや法定通貨の資金をDeFiツールで運用できるようにしたいと考えている」と述べている。

「この共通パターンは『DeFi mullet』という言葉で最もよく表現できる。ユーザーはDeFiが裏側で動いていることを意識せずに利用できる、そんなユースケースが最も興味深いと思う」とポンサン氏は述べている。

この仕組みの具体例として、アメリカの上場取引所コインベース(Coinbase)のユーザーがビットコイン(BTC)をロックすることで簡単に融資を受けられる仕組みが挙げられる。これは一般の個人投資家が通常アクセスできないタイプの担保融資(マージンローン)だ。

「例えば、フィデリティがマネーマーケットファンド(MMF)口座を担保にこうしたマージンローンを提供することも可能になるはずだ」とポンサン氏は言う。「これらすべてが(暗号資産)ウォレットやDeFiに組み込まれているので、ユーザーはワンクリックで利用できる。バンガード(Vanguard)に保有する資産を担保に融資を受けたい? その仕組みはここにある」。

「多くのフィンテック企業が、これを実現可能性の高い優れた概念実証だと考えている。もしMMFや他の資産、プライベートエクイティなどをトークン化するなら、最終的にユーザーにその資産を活用する手段を提供したいはずだ。そして、その手段こそがDeFiだ」。

アルケミーは約5年前に登場し、大規模なブロックチェーン事業を構築しようとする企業向けに開発者プラットフォームを提供してきた。その後、APIと呼ばれるプログラム間の連携機能を提供し、データのインデックス化やスマートコントラクトの自動化、直感的なスマートウォレットなどを実現している。ポンサン氏は「APIはソフトウェアの裏側の配管のようなもので、エンドユーザーの負担を軽減する」と説明する。

「従来のブロックチェーンウォレットではメタマスク(Metamask)のインストールなど煩雑な手順が必要だったが、今のトレンドは、ナイキ(Nike)やストライプ(Stripe)のような企業が、ユーザーが気づかない形で暗号資産ウォレットを提供することだ。それは完全に裏側で動作する『見えないウォレット』だ」とポンサン氏は語っている。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:アルケミーの共同創業者兼CEOのニキル・ヴィシュワナサン氏(Coindesk archives)
|原文:Every Bank and Fintech Wants DeFi Under the Hood: Alchemy