自動化が進むなか、我々には、検証可能性と説明責任に基づいたシステムが必要だとHashgraph(ハッシュグラフ)のCEO、Eric Piscini(エリック・ピシーニ)氏は述べる。ウェブにHTTPSが必要だったように、AIエージェント・ウェブには信頼できるネットワークが必要だ。
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AIは取引フロアに登場している。もはや単なるソフトウェアではない、プレーヤーだ。AIエージェントはマーケット分析だけでなく、取引を成立させ、条件を設定し、資本を決済が行われる分散型システム上で動かしている。機関投資家にとって、AIエージェントの登場は、より迅速な取引、より優れた商品、そしてまったく新しいエクスポージャーを意味する。
では、2つのAIエージェントがデリバティブ契約について交渉し、異なる数字を記録したらどうなるだろうか。一方は1億ドル、もう一方は1億2000万ドル。差異が失敗や当局の調査を招いた場合、誰が責任を負うのか?
これは理論的な話ではなく、AIエージェント時代の現実だ。AIは学習し、交渉し、金融システムの中で行動する。そこでは小さな不一致がシステミックリスクとなる可能性がある。
問題は拡大している。AIエージェントが誤った、あるいは検証できないデータに基づいて行動し、現実世界に影響を与える可能性がある。例えば、イギリスの国民保健サービス(NHS)が使用したAIシステムは、架空の「Health Hospital」とニセの郵便番号をもとに患者を誤診した。自動化が進むにつれ、検証可能性と説明責任(アカウンタビリティ)に基づいたシステムの必要性は大きくなる。ウェブにHTTPSが必要だったように、AIエージェント・ウェブには信頼できるネットワークが必要だ。
共有メモリ(すなわち台帳)が存在しなければ、AIエージェントは別々の結果を導き出す。記録が違っていればトラブルが生じる。監査証跡がなければ、事態は不鮮明になり、誰も責任を負わず、信頼できないものとなり、結果として企業の用途には適さないものになる。
遠い未来の話ではない。インフラのギャップはすでに存在している。AIエージェント時代を生きるには、以下の3つのレイヤーを備えた基盤が必要だ。
- 分散型インフラ:単一障害点を排除し、レジリエンス、スケーラビリティ、そして何よりサステナビリティ(持続可能性)を実現する。特定の民間企業1社に依存して運用する問題を解決する。
- 信頼レイヤー:検証性、アイデンティティ、コンセンサスをプロトコルレベルで組み込み、国やシステムを超えた信頼できる取引を実現する。
- 検証済みで信頼できるAIエージェント:履歴、認証、説明責任を果たし、システムが監査可能であることを保証し、AIエージェントが我々の代理として行動できるようにする。
AIエージェントを支えるのは分散型ネットワークでなければならない。AIエージェントは1秒あたり数千件のトランザクションに対応できる速度、国境を越えて機能するアイデンティティ・フレームワーク、そして単にデータを交換するだけではなく、協調・連携できるロジックを必要としている。
共有環境で機能するために、AIエージェントには以下の3つが欠かせない。
- コンセンサス(実際に何が起きたのかについての合意)
- プロビナンス(誰が始め、影響を与え、誰が承認したのかの特定)
- 監査可能性(すべてのステップを容易に追跡できること)
これらが欠けていれば、AIエージェントは分断されたシステム上で予測不可能な動きをすることになる。AIエージェントは24時間365日稼働しているため、サステナビリティと信頼性は設計段階から不可欠だ。
この課題に対応するために、企業は透明性があり、監査可能で、レジリエントなシステムを活用しなければならない。政策立案者は信頼できるAIの基盤としてオープンソースネットワークを支援しなければならない。エコシステムのリーダーや開発者は、信頼を後付けするのではなく、最初から基盤に組み込まなければならない。
AIエージェント時代は単に自動化された時代ではない。交渉を行い、コンポーザブルで、責任責任を伴い、そして信頼できる時代だ。もし、私たちがそのように構築するなら。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Shutterstock
|原文:The Agentic Era Needs a Network


