ベッドルームからグローバルサービスを構築:予測市場「Polymarket(ポリマーケット)」創業者
  • 予測市場「ポリマーケット」の創業者シェーン・コプラン氏は、お金もなく、たった1人で、ベッドルームからブロックチェーンを使ってグローバルサービスを構築したと語った。
  • 予測市場は、ピアツーピア取引によって現実世界の結果に価格を付けることで、世論調査やスポーツの予想よりも優れた情報を提供するという。
  • コプラン氏は、Polymarketの将来のユースケースとして、公共政策、保険、AIによる予測などを挙げ、Polymarketをリスクと不確実性を理解するための新しいフォーマットと称した。

シェーン・コプラン(Shayne Coplan)氏が予測市場「Polymarket(ポリマーケット)」を立ち上げたとき、たった1人で資金もなかった。あるのは、ブロックチェーンと強い信念、1台のノートPCだけだった。

「私は1人でサービスを立ち上げた。文字通り、ほとんどお金がない状態で始めた」とコプラン氏は、11月12日にマイアミ・ビーチで開催された米金融大手キャンター・フィッツジェラルド主催のカンファレンスで語った。

「ブロックチェーンのクールなところは、ベッドルームやバスルーム、オフィスなどどこででも、若者が金融アプリケーションの実験やイノベーションに取り組めることだ」

コプラン氏は、ブロックチェーンのオープン性のおかげで、伝統的企業の支援がなくても機能するグローバル市場を構築できたと語る。

「伝統的なフィンテックで革新的なものを作ろうとすると、参入障壁は非常に高い。新しいものを作ろうとする若い人、特に資本も時間も足りない場合はなおさらだ」

マーケットは“調査よりも正直なもの”を提供

2020年にローンチしたPolymarketは、選挙からFRB(米連邦準備制度理事会)の決定、セレブのゴシップまで、現実世界の出来事の確率を取引する。その際、世論調査や専門家の予測などを参照しない。マーケット参加者がオッズを決める。

「注目の選挙や、自分の生活に影響のある選挙なら、誰が勝つのか知りたいと思うだろう。世論調査はランダムな人々の寄せ集めだ……多くの場合、一方向に偏る。ノイズにすぎない」

コプラン氏は、マーケットは“調査よりも正直なもの”を提供すると考えている。つまり、信念とリスクに裏付けられた価格だ。

「大きな選挙があるたびに、多くの人がPolymarketに集まり、オッズをチェックする。そして次は、オッズは正しくないと考える理由として陰謀論を考え始める。だが、もしクオモ氏(ニューヨーク市長選の候補者)が勝つと1ドルもらえる権利が5セントで取引されていて、クオモ氏が勝つと考えるなら、その権利を買えばいい。主張したいことがあるなら、資金を投じればいい」

Polymarketの取引はすべてピアツーピアで行われ、オッズ、つまり取引価格には集合的な信念が反映される。

「価格は、各候補者にどれだけ多くの資金が投じられたかで決まるわけではない。どの瞬間でも、“Yes(起こる)”と“No(起こらない)”が取引されており、注文板を見れば、買いたい人が提示する価格(ビッド)と、売りたい人が提示する価格(アスク)が並んでいる。ビッドとアスクの真ん中の価格が、その事象が起こると多くの人が考えている確率になる。そしてそれが、的中したときに1ドルを受け取ることができる権利の価値となる」

マーケットがもたらす公平性

政治以外にも、予測市場は意思決定ツールとして大きな可能性を秘めているとコプラン氏は考えている。例えば、公共政策などだ。

「マーケットを適切に設定できれば、社会の意思決定を前例のない規模でサポートできる」

さらにコブラン氏は、従来型の賭けサイトと比較して、Polymarketには“公平性”という優位性があると主張する。

「ゲームの結果に賭けたり取引する場合、従来の賭けサイトでは価格設定が運営側に独占されている。常にハウス(運営)が相手になっている。運営は好きな価格を設定できる。利益を出し続けるとアカウントを止められることもある。利用者の行動はチェックされ、意図的に不利なオッズを提示されたり、賭けの金額に上限をかけられたりすることもある」

「これがアメリカだ。非効率で、消費者が不利になるように仕組まれたものが、本来は金融マーケットなのに、参加者が負けるように作られたエンタテインメント商品として提供されている。より公平な代替手段が出てきても文句は言えないはずだ」

公共政策や保険にも応用可能

コプラン氏はまた、Polymarketはいずれ、保険のような分野でも役に立つと考えている。消費者は多くの場合、高額な保険料を支払い、必要ではないものをセット商品として購入している。

「多くの場合、特殊なリスクをヘッジしようとすると、相手にするのは営業部門やリスク管理部門を持つような企業だ。そうなると、非常に不利な価格を支払うことになる。Polymarketの素晴らしい点は、同じタイプのリスクに対して、マーケットそのものをユーザーが構築できることだ。リスクの価格付けが得意な人たちは流動性を提供でき、営業が得意な人たちは、そうしたリスクをヘッジしたい企業や個人をつなぐことができる」

さらにコプラン氏は、AIエージェントが今後マーケットで果たす役割にも言及した。

「センチメントを分析をしたり、ニュースをモニターしたり、自分で判断を下せるAIエージェントの開発に多くの人が取り組んでいる。AIはマーケットの“誤った価格”を見つければ、それを正そうと動くこともできる。仮に流動性がほとんどなくても、AIエージェントが動き出すだろう。そして多くの人が、より正確なエージェントを作るために競い合うだろう」

ブロックチェーンの目的を体現

コプラン氏は、不確実性に関するニッチ市場という“ロングテール”にこそ、Polymarketの大きな可能性があると考えている。

「大量の取引を生むかといえば、Noだ。しかし、新しい情報フォーマットを解き放つことになるかといえば、答えはYesだ。Polymarketのオッズは、もっと幅広い領域に拡張できる」

米国でのプレゼンス拡大と、新規ユーザー向けベータ版の準備を進めるなか、コプラン氏は引き続き、伝統的な賭けサイトや賭け事業者に先んじること、そしてブロックチェーン本来の目的を体現するプラットフォームを構築することに注力している。

「我々は、とにかく最高のプロダクトを作ろうとしている。多くの人が使いたくなり、皆の意見が実際に意味を持つ場所を提供したい」

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Polymarketの創業者シェーン・コプラン氏(CoinDesk)
|原文:Polymarket’s Shayne Coplan: Blockchain Let Him Build a Global Force From His Bedroom

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