- ビットコインは12月8日、前夜のわずかな上昇分を失い、米国取引時間中には9万ドル台の狭いレンジ内での推移となった。
- 市場参加者が今週の米連邦準備理事会(FRB)会合を見据える中、長期国債利回りの上昇と米国株の小幅な調整がリスク選好を圧迫している。
- ビットフィネックス(Bitfinex)のアナリストは、現物需要の少なさと構造的な軟調さの中で、ビットコインが米国株に対して相対的に弱含んでいる点を指摘した。
ビットコイン(BTC)は週末終盤、上昇を試みたが、米国12月8日午前にはそのわずかな上昇分もほぼすべて取り消しとなり、その後は9万ドル付近で静かに推移した。
ビットコインは米国株式市場終了時点で9万500ドル前後で取引されており、過去24時間では約1%下落した。
主要アルトコインも上昇分を維持するのに苦戦した。イーサリアム(ETH)は小幅に下落したものの、相対的には堅調に推移し、ビットコインに対する相対価格では1カ月以上ぶりの高値を記録した。
その他目立った上昇を見せたトークンは、プライバシー重視のジーキャッシュ(ZEC)と、機関投資家向けブロックチェーンのカントン・ネットワーク(CC)で、いずれも2桁の上昇率を示した。広範な暗号資産(仮想通貨)市場のベンチマークであるCoinDesk 20 Indexは、0.8%下落した。
暗号資産市場の動きが鈍い中、日本国債の混乱が他市場に波及する懸念から、長期国債利回りは急上昇した。米国10年物国債利回りは約3カ月ぶりの高水準となる4.19%まで急上昇し、英国やその他の欧州諸国の国債も売られた。一方、日本の10年物国債利回りは2%に向けて上昇を続け、約20年ぶりの水準に迫った。
米株式市場も日中、下落に転じ、S&P500は0.5%、ナスダックは0.3%下落し、リスク選好全般に重しとなった。
今週の主要イベントは、今年最後の米連邦準備制度理事会(FRB)会合となる。25ベーシスポイントの利下げは完全に織り込み済みだが、今後の政策スタンスや追加の流動性措置に関するメッセージが、10日の市場変動を招く可能性がある。
LMAXの市場ストラテジスト、ジョエル・クルーガー(Joel Kruger)氏はリポートで、「金融環境の緩和や米ドルのさらなる弱含みは追い風となる一方、FRBの政策緩和ペースや規模に関するタカ派的なサプライズは、暗号資産市場の下落圧力を増幅させる恐れがある」と指摘した。
ビットコイン、構造的な逆風に直面
ビットフィネックスのアナリストらは、11月の安値から反発したにもかかわらず、ビットコインが構造的な軟調さとスポット需要の減退に直面していると警告した。
S&P500が過去最高値近くで取引される中、ビットコインはレンジ相場に留まっており、暗号資産と伝統的リスク資産の乖離が深まり相対的な弱さを示していると、ビットフィネックスは8日発表のレポートで指摘した。
ビットフィネックスは、この見解を裏付ける主要なシグナルを、以下の通り複数提示している。
- 米国上場ビットコイン現物ETF(上場投資信託)からの持続的な資金流出。主要取引所全体で累積出来高デルタ(CVD)が急激にマイナスとなる中、トレーダーは買い増しではなく、上昇局面での売却を選択。
- 700万BTC以上が未実現損失状態にあり、2022年の調整期と同様の弱気センチメントを反映している。
- 資本流入(純実現時価総額変化で測定)は月間86億9000万ドル(約1兆3600億円、1ドル=156円換算)とわずかにプラスを維持するものの、ピーク水準からは大きく離れており、下落リスクに対する緩衝材としての役割は限定的だ。
ビットフィネックスのアナリストらは、これらすべての要因が年末に向けて脆弱な市場環境を形成していると指摘した。
「現物需要が弱まる中、市場は買い圧力が大幅に低下した状況に直面している」と、レポートは指摘し、次のように続けた。
「これにより価格への即時的な下支えが弱まり、外部ショック、マクロ要因によるボラティリティ、金融情勢のさらなる引き締めに対する感応度が高まっている」。
|翻訳・編集:山口晶子
|画像:12月8日のビットコインの値動き(CoinDesk)
|原文:Bitcoin Treads Water Near $90K as Bitfinex Warns of ‘Fragile Setup’ to Shocks


