米株市場、弱気相場を脱却?ビットコインは底値見えず【米記者の市場観測】

世界では、コロナウイルスによる相場急落の暗い日々は過ぎ去ったかのように、米株式の「史上最短の弱気相場」を謳う経済メディアも見られる。

米国市場は、FRB(連邦準備制度理事会)による2兆ドル(約215兆円)規模の経済刺激策により活力を取り戻し始めている。2020年3月23日(現地時間)の最低水準から比べ、ダウジョーンズ工業平均は23%、S&P 500は約20%上昇している。それでも、広範な影響を与えるCOVID-19の終焉はまだまだ先だ。

2月の高水準に比べて、COVID-19大流行の状況がさらに深刻化した1か月でオーストラリアの株価指標ASX 200は31%、日本の日経平均株価は21%下落した。

オーストラリアの厳重な対策

オーストラリア政府による対策は、一夜にしてずっと厳重なものとなった。オーストラリア首相は、COVID-19の拡大を遅らせるべく、人が集まる際は最大で2人までと、さらに厳しい制限を課すと発表した。

これまでのところ、ASXの反応は緩やかで、前日比で約2.3%上昇している。しかし、下落圧力は明らかである。今週にかけて前日比で著しく好調なリターンがあって初めて、同国の対策が信頼を得たと言えるだろう。

香港に拠点を置くブロックチェーン投資・取引企業ケネティック(Kenetic)の共同創業者兼マネージングディレクター、ジェハン・チュー(Jehan Chu)氏は、混乱にも関わらず、この「コロナ期間」は、我々が真にデジタルになることを学ぶ時となるだろうと述べる。

「デジタル・ファースト」の世界に?

「すべての市場で、長く厳しい冬の兆候が見られるが、希望の兆しとしては、リモートワークと、特に遠隔での交流が、デジタルな経験を主流派にまで押し上げるうえで明らかな印だという点だ」とチュー氏は述べた。

「教会での礼拝からダンスパーティー、集団での瞑想から乳児のお遊びグループまで、デジタルでの経験が社会のあらゆる領域において標準化している。生存本能によって促されるこの実験的段階は、『デジタルファースト』の未来へと人々を抜本的に先導している」とチュー氏は加えた。

コモディティ市場においては、原油が2002年2月以来の低水準で取引されている。金(ゴールド)は3月27日(現地時間)の終値に比べて0.5%下げ、極端なボラティリティと不確実性を見せ、記事執筆時点では1トロイオンス1616ドル(約17万円)で取引されている。

苦戦するビットコイン

データ:TradingView

6900ドル(約74万円)付近のビットコイン価格の抵抗線は、この仮想通貨の代表格にとって大きな障害を提示している。ビットコインは先週、継続的な値下がりに苦しみ、局地的な高値から1000ドル(約11万円)値下がりした。ビットコインは記事執筆時点で、5900ドル(約64万円)付近で取引されている。

さらに、200日と100日の2つの長期的移動平均線(MA)が、再び交わり始めている。これは、2月13日に記録した1万500ドル(約113万円)付近の高値からの、さらに深いドローダウンの可能性を示唆し、現在の世界的市場の状況に対する感情を反映している。

これら2つのMAが最後に交差したのは、2019年11月。この時、ビットコイン価格は8500ドル(約92万円)から約6425ドル(約69万円)へと約4分の1値下がりした。

他の仮想通貨に目を向けると、リップル(XRP)は週末にかけて3.6%値下がりした。イーサ(ETH)は記事執筆時点で、3月27日(現地時間)の終値約131ドル(約1万4000円)から4.1%値下がりして取引されている。

さらなる不況に歯止めをかける真のチャンスがあるとしたら、今週にかけて世界の市場心理が著しく改善し続ける必要がある。先週はほぼすべての市場が、テクニカルトレーダーによってネガティブな兆候と捉えられる、低めのデイリー高値に苦しんだ。

コロナウイルス関連のニュースが入れ替わり立ち替わりに流れる中、市場での不確実性と恐怖が終焉を迎えるのはまだまだ先になるかもしれない。

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Shutterstock
原文:Bear Market Over? Charts on Bitcoin and ASX 200 Suggest Otherwise