3月の暴落後、ビットコインはどうなる?【CoinDesk 1Qレビュー】

ビットコインは「デジタルゴールド」というストーリーを超えていくのだろうか? イーサリアムは、お金として生き残ることができるのか?

CoinDesk Researchは、24個の図表を使って、2020年第1四半期の暗号資産(仮想通貨)の動向と今後の見通しを解説している。この記事ではその一部を紹介する。

CoinDeskクォータリー・レビュー(CoinDesk Quarterly Review)は、ビットコインやイーサリアムといった代表的な暗号資産(仮想通貨)にまつわるストーリーがどのように変化したかについて、調査に基づいた見解を提供している。

我々は、どの暗号資産が優れたパフォーマンスをあげたのか、市場参加者は3月12日の暴落という第1四半期の決定的な出来事を経て、どう変化したのかを探った。

ビットコインの「デジタルゴールド」というストーリーは「すべてにおいて強気相場」という状況の中で育まれた。「ゴールド2.0」としてのビットコインは、インフレに対するリスクヘッジであり、暴落時の安全資産であり、投資家が容易に理解できる考え方だった。

今、経済危機は暗号資産市場に混乱を引き起こし、株価とともにビットコイン価格を押し下げている。ゴールドと国債は「安全資産」という期待に応えられなかったようだ。

ゴールドのストーリーが再検討されているならば、我々はそれでもまだ「デジタルゴールド」の意味を理解できるだろうか?

少なくともこの1カ月の出来事は、ビットコインは「安全資産」になり得るという考え方に終止符を打った。

第1四半期分析:ビットコイン、S&P500、ゴールド、原油の推移

3月12日の暴落が影響を与えたこと、与えなかったこと

暴落は暗号資産市場の参加者に衝撃を与えた。

ビットコイン先物と永久スワップの未決済建玉は、大きく減少した。これら市場は、トレーダーがビットコイン価格を予想することに使われ、スポット市場での取引に対する一時的なリスクヘッジに使われる。

その後、スポット市場と同様に、ビットコイン先物の取引高は急上昇して高い水準となった。縮小した市場で取引高は増加した。約16億ドルものポジションが、3月の2日間で決済された。小さなプールでサメがお互いを食い合っているようなものだ。

だが長期保有者は動かなかった。「Hodlwaves」は、UTXO(未使用のトランザクションアウトレット)と呼ばれるビットコインのタイムスタンプを使って、ビットコインの保有期間を測定する。トランザクション間の時間を追跡することは、「長期保有」の有用な指標となる。

長期保有は、ビットコインの「デジタルゴールド」としてのユースケースと一致する。

注目すべきは、3月12日の暴落時にも長期保有(180日以上)には目立った変化はなかったことだ。90日〜180日の保有残高が突然変動した。

売り手は、3カ月〜6カ月の保有者に集中していたのだろうか? あるいは、この日の取引がこの範囲の保有者に集中していたのだろうか。

第1四半期分析:長期保有に変化はなかった

決済に戻るのか

一部のビットコイン長期保有者は、ビットコインが安全資産あるいは価値の保存手段として、いつか証明されることを期待している。しかし3月の暴落のような出来事は、新しいストーリーへの扉を開いた。

ビットコインにまつわる次の考え方は、希少価値を持つデジタル資産の普及曲線を設定することだ。決済は、再び普及への道として浮上するのだろうか?

ローンチ以来、ライトニングネットワークを実行しているコンピューターの数は、四半期ごとに平均53%増加している。ライトニングはビットコインのネットワーク上に構築された「レイヤー2」の決済システム。ライトニング決済チャネル内に保有される価値も増加している。

第1四半期分析:ライトニングノードの成長は、決済ネットワークとしてのビットコインへの関心を示している

ビットコインとイーサリアムの技術ロードマップの新たな重要性

新しい普及ストーリーは、長期保有者がこれまで考えてきた姿とはかなり違ったものになる可能性がある。

ビットコインの開発者は、プライバシーとプログラマビリティを備えた、シュノア(Schnorr)署名のような機能を追加し、ビットコインにデジタル金融インフラとしての普及の道を開くのだろうか?

技術ロードマップは、イーサリアムにとっても重要性が増している。

イーサリアム支持者は、「イーサリアムはお金」という考え方を広めている。彼らは「分散型金融」あるいは「DeFi」と呼ばれる分散型デジタルバンキングシステムの基盤通貨としてのイーサリアムの可能性を信じている。

3月12日の暴落時の主要DeFiシステムの失敗は、そのストーリーに疑問を投げかけた。今ではこれまで以上に「イーサリアム2.0」(決済の実行速度を改善したバージョン)のやや不確実なロードマップに依存しているように思える。

3月12日、DeFiアプリケーション内にロックされたイーサリアムは予想通りに増加し、その後、クラッシュした。仮に「イーサリウムはお金」なら、DeFiにロックされたイーサリアムの量とイーサリアム価格の上昇は連動することが期待できる。

短期的には、以前のレベルまで回復することは、DeFiシステムの信頼回復を意味するだろう。

第1四半期分析:DeFiにロックされたイーサリアム(黃)とイーサリアム価格(黒)

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翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸
写真:Quarterly crypto analysis: bitcoin hodlwaves show long-held assets stayed put
原文:What’s Next for Bitcoin After March’s Crash – CoinDesk Quarterly Review