EUのデジタル通貨、主導権は誰が握る──オランダ中銀、CBDC報告書を発表

EUのデジタル通貨、主導権は誰が握る──オランダ中銀、CBDC報告書を発表

オランダ中央銀行(DNB)は、ユーロ圏における中央銀行デジタル通貨(CBDC)推進に影響力を獲得しようとしている。

CBDC報告書を発表

オランダ中央銀行(DNB)は4月21日、暗号資産(仮想通貨)は、暗号資産が置き換えようとしている銀行に対する技術的な教訓があり、スマートコントラクトは中央銀行デジタル通貨(CBDC)の「将来性を証明する」可能性があると報告書に記した。

45ページにおよぶCBDC報告書は、オランダがユーロ圏における、デジタル通貨の実験場になるためのプレゼン資料になった。

「複雑なロジックを備えたスマートコントラクトシステムはCBDCの需要を潜在的に増加させ、トランザクションコストを削減する機会をもたらす」とオランダ中央銀行は述べた。

「このようにして決済市場の多様性とイノベーションに貢献する可能性がある」

この印象的な報告書は、ヨーロッパの中央銀行によるデジタル通貨の議論の高まりに、オランダ中央銀行が影響力を獲得しようとするなかで発表された。

3月、フランスは限定的なCBDC実験に向けた提案要請を行い、議論の中心に躍り出た。オランダはまだ積極的な実験は行っていないが、報告書では1歩先へ行った。すなわち、オランダ中央銀行はヨーロッパのCBDCの研究・開発および展開のハブになろうとしている。

「より具体的なタイプのCBDC実験を行う決定がユーロ圏内で下されれば、我々は主導的な役割を担う準備ができている。オランダはそうした実験に適した実験場を提供する」とオランダ中央銀行は述べた。

オランダでの現金使用は減少

オランダにとって、今回の動きは必要不可欠なことのようだ。

2017年のEU報告書によると、人口1700万人のオランダでは、商品やサービス購入時の現金使用がユーロ圏で最も少ない。この報告書から3年が経過し、オランダの現金離れはますます強くなっている。つまり、毎年、ATMと現金引き出しは減少を続けている。

マクロ視点では、「プライベート・デジタルマネー」(デビットカードなど、銀行口座に紐づけられた民間マネー)の利用は増加しており、リブラ(Libra)は勢いを削がれたとはいえ、依然として脅威だ。

オランダ中央銀行はCBDCに対する国民の関心の高まりにも触れ、デジタル通貨はデジタルの未来において、公的なお金が存在し続けることを保証するだろうと述べた。

報告書は、「合理的な」ユーロ圏CBDCの詳細を検討し、リブラ、ビットコイン、現金、選択肢をいくつかの通貨ベンチマーク(リブラ、ビットコイン、デビットカードなど複数の選択肢と比較した。

「民間の暗号資産の10年におよぶ実験の後、問題はそうした技術の中にCBDCでの使用における十分な付加価値があるかどうか」

オランダ中央銀行は、スマートコントラクトは残すに値する唯一の「技術」かもしれないと結論づけた。その理由の1つは、将来を見据えたその柔軟性によって、CBDCの需要が高まる可能性があるためだ。

そして、CBDCはビットコインよりもプログラム可能なものであり、唯一、リブラに続くものと述べた。

分散型台帳技術は否定

オランダ中央銀行は、暗号資産のあまり望ましくない特徴的な機能からスマートコンタクトを切り離した。分散型台帳技術(DLT:distributed ledger technology)だ。

同行は、DLTは銀行システムの外側にいる理想主義者が作り出した機能としてDLTを完全に否定した。

「例えば、ビットコインの完全に分散化されたソリューションは、検証を分散して行うが、イデオロギー的に推進された面がある」とオランダ中央銀行は、ビットコインのリソースを必要とし、潜在的に手間のかかる分散型合意モデルを否定した。

「CBDCは、そうした犠牲を払う必要はないだろう」

それでもオランダ中央銀行は、ビットコイン支持者と現金支持者が擁護する匿名性は受け入れた。分散型台帳技術は、ユーザーに匿名で取引する手段を提供しつつ、ビットコインの取引履歴を完全に透明化する。

逆に、ユーザーの取引履歴を完全に把握している商業銀行は、取引データを販売し、ビジネスに利用することができる。中央銀行は販売しないデータだ。

そこでオランダ中央銀行は、CBDCは完全な匿名性を持つ現金に次ぐ、十分に考慮されたプライバシーを提供すべきと述べた。

こうした技術的側面などによって、オランダ中央銀行はCBDCの非常に詳細な構想を作り上げた。

世界が変化し続けるなか、オランダ中央銀行が公的資金システムを強化するCBDCを強く呼びかけたことは、つまりCBDCを強く支持したことにほかならない──オランダのウォブケ・フクストラ(Wopke Hoekstra)財務大臣は4月21日、議会で演説したが、おそらく現在、ヨーロッパで最も熱心なものだっただろう。

「一般市民を対象としたCBDCについて、積極的な姿勢をこれほど明確に表明した中央銀行は、ユーロ圏でオランダ以外にない」とフクストラ大臣は述べた。

「あとはEUの決定を待つだけ」

翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:Dutch Central Bank Wants to Be European Union’s CBDC Proving Ground

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