ヘッジファンドのチューダー、ビットコイン市場参入か

ヘッジファンド業界のパイオニア、ポール・チューダー・ジョーンズ(Paul Tudor Jones)氏はインフレヘッジとしてビットコインに賭けるようだ。

ファンドにビットコイン先物を組み込む

チューダーインベストメント(Tudor Investment Corp.)が管理するジョーンズ氏のチューダーBVIグローバルファンド(Tudor BVI Global Fund)は、ビットコイン先物を最大「1桁台前半のパーセンテージ」で保有する可能性がある。

投資家に送られた文書で最近明らかになったと5月7日にブルームバーグ・ニュースが伝えた。チューダーインベストメントは38億ドルを管理しており、そのうち22億ドルは主力のBVIファンドが占めている。

BVIグローバルファンドがビットコイン先物を買い始めたのか、どの種類(現物引渡型あるいは現金決済型)か、どの取引所を使うのか、ビットコインそのものも取引する予定かなどは、文書からはわからない。

CoinDeskはチューダーの広報担当者にコメントを求めたが、まだ回答はない。

ジョーンズ氏は著名なヘッジファンドマネージャー、1980年に25歳でチューダーインベストメントを設立した。1987年の株価暴落とその数年後、市場崩壊直前に日本株を売り抜けたことで名を成し、大きな利益を得た。

「私は現金信奉者でも暗号資産信奉者でもない」とジョーンズ氏は記した。だが、「巨大な金融インフレーション(Great Monetary Inflation)」が同氏の言葉を失わせた。
出典:Wikimedia Commons/Hedge Fund Letters

以来、同氏はヘッジファンド界において長老的存在となり、同氏の慈善活動団体「ロビン・フッド財団(Robin Hood Foundation)」には金融界の大物や著名人が役員として名を連ねている。

70年代のゴールドに等しい

文書によると、ビットコインはジョーンズ氏に1970年代のゴールドを思い出させた。1970年代前半、ゴールドは1971年の1オンスあたり35ドルから、1974年後半のピーク時には180ドルまで高騰した。

新型コロナウイルス危機による前例のない中央銀行の金融政策が、ジョーンズ氏にビットコインへの関心を持たせた主な理由だ。同氏が、進行中の「巨大な金融インフレーション(Great Monetary Inflation)」と呼ぶものが市場のベテランである同氏の言葉を失わせた。

これは「先進国がこれまでに経験したことのない、あらゆる種類のお金の前例のない拡大」とジョーンズ氏は顧客に記した。

ジョーンズ氏の言葉と同じ頃、データ分析企業スキュー(Skew)によると、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のビットコイン先物の未決済建玉は過去最高を記録し、5月6日に4億ドル近くまで達した。

チューダーBVIファンドの資産の1桁台前半のパーセンテージは、記事公開時点のCMEのビットコイン先物のほぼすべての未決済建玉に相当する。

ジョーンズ氏は、文書の中で金融政策について多くを割き、同氏の研究グループの調査に基づいて、価値保存能力による資産の主観的ランキングを掲載した。

100点満点中、ビットコインは43点。これはゴールド、現金、金融資産に比べると最も低い点数だ。

価値保存能力による資産ランキング
出典:BVI May 2020 Investor Letter

「私を驚かせたことはビットコインが最下位だったことではなく、ビットコインが思いがけない高得点だったこと」

顧客に対してジョーンズ氏は「私は現金信奉者でも暗号資産信奉者でもない」と記した。しかしジョーンズ氏は、ビットコイン投資に対する最も説得力のある議論は「新型コロナウイルスによって、あらゆる場所で進む通貨デジタル化」だと考えている。

May 2020 BVI Letter – Macro… by CoinDesk on Scribd

翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸
写真:Gold coin bearing the Tudor double rose. Credit: National Museum of American History
原文:Hedge Fund Pioneer Turns Bullish on Bitcoin Amid ‘Unprecedented’ Monetary Inflation