選挙で盛り上がる予測市場【米大統領選2020】

わずか3週間あまりで、分散型予測市場のポリマーケット(Polymarket)の取引高はゼロから300万ドル近くになった。

11月2日時点でポリマーケットの「Will Trump win the 2020 U.S. president election?(トランプは米大統領選に勝つか?)」では280万ドル以上が賭けられた。

ユーザーは、政治、ポップカルチャー、ビジネス、健康などの話題性の高いトピックスにおいて、暗号資産(仮想通貨)を使って賭けを行うことができる。ポリマーケットはユーザーの資金の保有・保管はしない。賭けにはドル連動型ステーブルコインのUSDコイン(USDC)が使われる。

ポリマーケットの取引高推移
出典:Ploymarket

DeFiのアプリケーション

ユーザーが特定の出来事の結果に賭けを行う予測市場は、中間業者を介さずにブロックチェーン上で金融取引を行うDeFi(分散型金融)のアプリケーションになっている。特に選挙や政治的な討論は予測市場に多くのトレーダーを引きつけている。

分散型予測市場のオーガー(Augur)は5年前にスタートしたが、2018年の中間選挙の賭けがきっかけとなるまでは、なかなか軌道に乗らなかった。

「私にとって、大統領選挙は予測市場のスーパーボウル。さまざまな予測市場で取引高が大幅に上昇している」と分散型百科事典サービスのエブリペディア(Everipedia)のデビッド・リーボウィッツ(David Liebowitz)氏は話す。

今回の大統領選挙もまた、分散型予測市場に新しいユーザーを引きつけているようだ。

「ユーザーの中には暗号資産に詳しくない人もいる。そうした人たちは暗号資産を理解していないにもかかわらず、ポリマーケットを使っている」とポリマーケットの創業者、シェイン・コプラン(Shayne Coplan)氏は述べる。

1週間程前、ポリマーケットは業界の著名投資家が参加した最新の資金調達ラウンドで400万ドルを確保したと発表。一方、オーガーは7月、新たに改良版となるバージョン2をスタートさせた。

大統領選挙の後は?

11月3日の大統領選挙に向けて、ユーザーは賭け市場や予測市場に注目している。暗号資産を使った匿名の予測市場のイールドウォーズ(YieldWars)は2日夜、選挙についての賭けを開始し、すでに5万ドル以上の掛け金を集めている。ユーザーは同市場のネイティブトークンのWAR、あるいはイーサリアム(ETH)を使って賭けに参加できる。

イールドウォーズの共同創業者のオウル(Owl)氏は、選挙の規模と重要性を考慮すると、掛け金の急増は衝撃的とはいえないと話す。

「暗号資産ベースの予測市場は今、ブロックチェーンで盛り上がっているはずだが、これまではなかなか軌道に乗らなかった。大統領選挙は予測市場に命を吹き込んだが、選挙が終わったらどうなるだろうか」

予測市場は初期段階

イールドウォーズはエブリペディアと提携し、AP通信の選挙データを予測市場に使っている。エブリペディアがAP通信との提携を通じて得られる選挙データは、ブロックチェーンに結びつけられる。

「AP通信以上に信頼できる情報ソースはないだろう。データの連結にはチェーンリンク(Chainlink)のインフラを活用した」とオウル氏は述べた。

リーボウィッツ氏によると、ブロックチェーンは長い間、予測市場にとって最良のプラットフォームと考えられてきた。だが、プレディクティット(PredictIt)のような中央集権型予測市場が今も優勢だ。

プレディクティットには214の「マーケット」あるいは予測シナリオがある。一方、新興のポリマーケットは19のみ。2日時点でプレディクティットの「2020 Presidential Election Winner?」では1億1670万件の取引が行われていた。

コプラン氏によると、ブロックチェーンベースの予測市場の需要はこれまでも存在していた。「多くの需要があることは明確だった。この1、2週間で、需要は実際に顕在化してきたと言える。だが、まだきわめて初期段階に過ぎない」

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Shutterstock
原文:The 2020 Elections Are Boosting Crypto Prediction Markets