株式から暗号資産に押し寄せた個人投資家マネー──取引所トークンは最高値

米ビデオゲーム小売り大手の株を空売りしていたヘッジファンドに対抗して、多くの個人投資家がSNSの情報をもとにその株を買い進めた結果、同株価は急騰。ヘッジファンドは巨額の損失を抱え、アメリカの金融当局が監視を強める事態となった。人気の株取引アプリ「ロビンフッド(Robinhood)」などの取引プラットフォームは急きょ、特定株の取引制限を発令した。

世界最大のアメリカの株式市場における混乱で、一部の個人株式投資家は暗号資産を投資ターゲットとする動きが強まり、暗号資産取引所のトークンを最高値にまで押し上げている。

1月最後の週、米人気掲示板「レディット(Reddit)」の株取引コミュニティー「WallStreetBets(WSB)」に集まる個人投資家と、空売りトレーダーのターゲットとなったゲームストップ(GameStop)などの銘柄は多くの関心を呼んだ。

個人投資家の関心の一部は暗号資産に波及し、中央集権型取引所(CEX)と分散型取引所(DEX)の取引高は同週、大幅に増加した。データサイトのスキュー(Skew)によると、バイナンス(Binance)とFTXにおけるビットコイン先物の取引高は先週末、急増している。

出典:Skew

取引所トークンの価格上昇

暗号資産のバイナンスコイン(BNB)は2月1日、アメリカの取引時間中に50.27ドルの過去最高値を更新。FTXトークン(FTT)は1月29日に12.95ドルの記録的な高値をつけた(メッサーリのデータ)。

バイナンスのジャオ・チャンポン(Zhao Changpeng)は1日、「いくつかの指標で史上最高値となっている」とツイッターに投稿した。ジャオCEOは米CoinDeskの取材に対して、バイナンスコインの価格上昇は、それが持つ複数のユースケースが牽引していると広報を通じてコメントした。

「BNBのユースケースは、暗号資産エコシステム内の多数のプラットフォームやプロジェクトにおける数百ものアプリケーションに拡大している。価格上昇に反映された。(中略)一般に普及したアプリケーションになるには、1日あたり数十億トランザクションに対応できなければならない。現状では、まだ道のりは遠い」(ジャオCEO)

ドージコイン、リップル、ステラに波及

先週末にBNBとFTTを記録的高値に押し上げた取引の急増は、株式市場から押し寄せた個人投資家による可能性が高いとトレードブロック(TradeBlock)のジョン・トダロ(John Todaro)氏は分析する。

「個人投資家をめぐる今回の騒動は、取引プラットフォームやブローカー、そして取引所でさえも、十分な予告なしに取引を停止できることを示した。一部の個人投資家が暗号資産市場に押し寄せ、ドージコイン(DOGE)、リップル(XRP)、ステラルーメン(XLM)が高騰した」(トダロ氏)

FTXはまた、ゲームストップ株騒動が加速した個人投資家の強い投資意欲を捉えるために先週、騒動の震源地となった株取引コミュニティーの名称に因んで「WallStreetBets(WSB)インデックス四半期先物」を上場した。この先物は、ゲームストップ株、ノキア株、ブラックベリー株、AMCエンターテインメント株、さらに最近の銀価格の高騰を受けて、iシェアーズシルバートラストで構成されている。

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「FTXはデジタル証券を上場している。ロビンフッドのユーザーなどが複数の取引プラットフォームが行っている取引制限に関係なく、FTXの投資家が株式投資を続けるために、FTXに切り替えることを期待もできる」(トダロ氏)

米CoinDeskはFTXにコメントを求めたが、まだ返答はない。

けん引するユニスワップとスシスワップ

DeFi(分散型金融)も一時期の低迷を経て、上昇傾向にある。1月の分散型取引所(DEX)の取引高は500億ドルを超え、史上最高を更新した。

なかでも、大手DEXのユニスワップ(UniSwap)とスシスワップ(SushiSwap)の取引高は7日平均でそれぞれ48.8%、23.3%を占めている(デューン・アナリティクスのDEXメトリクス・トラッカー)。

ユニスワップとスシスワップの月間取引高(2020年9月〜)
出典:Dune Analytics

「全体的に暗号資産市場は、中央集権型取引所(CEX)とDeFi(分散型金融)の双方で取引高が大幅に増加している」と香港に拠点を置くOneBit Quantのピーター・チャン(Peter Chan)氏は述べる。同氏は、スシスワップの取引高の増加が、SUSHIトークンの価格高騰につながったと分析する。

メッサーリのデータによると、ユニスワップのUNIトークンとSUSHIトークンは、それぞれ1月31日と2月1日に前回の高値を超えた。

個人投資家の関心は昨年夏レベルに

個人投資家が、価格の動きの一部を牽引しているようだ。ユニスワップのGoogle検索数も、「DeFiの夏」と言われた2020年のブーム時と同等水準に達した。

トレードブロックの2月1日付けの週刊ニュースレターによると、これはDEXに対する個人投資家の需要を示す指標となっている。また、一部の個人投資家が中央集権型取引プラットフォームに対する懸念を深めていることも反映している。ユニスワップのようなDEXの利用を検討する動きにつながっているという。

「DeFiにおいて、最も一般的なアプリケーションは間違いなく、ユニスワップやスシスワップのようなDEXだ。DeFiが再び活況となるにつれて、UNIトークンとSUSHIトークンは最もわかりやすい存在で、大きな利益を獲得している」とトダロ氏は述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:CoinDesk archives
|原文:Exchange Tokens Hit New All-time Highs as Stock Traders Rush to Crypto