米金融界を混乱させた人気投稿サイト「reddit」の取引コミュニティとは何か

アメリカで人気の投稿サイト「レディット(reddit)」の株取引コミュニティー「WallStreetBets」が、アメリカの金融界に混乱を巻き起こした。

問題視されているのは、「r/WallStreetBets」(またはWSB)と呼ばれるレディットのサブチャンネルだ。350万を超えるユーザーが、投機的な投資アイディアや戦略を話し合っている。このチャンネルには、「(画像掲示板の)4chanがBloomberg Terminalをみつけたようのまの」というキャッチコピーがつけられている。

昨年9月29日、ハンドルネーム「Player896」を持つレディットのユーザーがこのチャンネルに「Bankrupting Institutional Investors for Dummies, ft GameStop(サルでも分かる機関投資家を破産させる方法、ゲームストップ編)」というタイトルの記事を投稿した。

Player896はその中で、主にビデオゲームやゲーム機を販売する実店舗を持つ小売大手のゲームストップ(GME:GameStop)について強気の主張を展開した。伝統的な紙メディアからデジタルへの移行と、新型コロナウイルスのパンデミックにより、同社の株は2015年11月以来、値下がりを続けていた。

ゲームストップ株のショートスクイーズ

Player896は当時、自身が投稿したメッセージにこう記している。

ゲームストップの「帳簿は磐石」であり、チューイー(Chewy)の共同創業者兼CEOのライアン・コーエン(Ryan Cohen)氏がおよそ7600万ドル(約79億円)を使って同社の株を12.9%獲得した。にも関わらず、多くの機関投資家は当時、ゲームストップの株を大幅に空売り(ショートポジション)していた。個人としてはアップル社の最大株主であるコーエン氏は1月11日に、ペットの健康用品企業である自らの会社の元同僚2人とともに、ゲームストップの取締役会に加わり、株価は50%も高騰した。

コーエン氏が取締役会に加わり、株価が回復し始めた後も、一部のヘッジファンドやその他の機関投資家は、ゲームストップの株を空売りし続けた。これはおそらく、大口プレイヤーたちによる、アマチュアトレーダーを力技でねじ伏せ、パニック売りを誘発しようとする試みであった。

WSBのレディットコミュニティーは、ウォール街の金融エリートに抵抗するチャンスと見て、大規模な「ショートスクイーズ」を起こし、空売りしていた機関投資家が慌てて買いに走るよう画策した。

ショートスクイーズは複雑そうに聞こえるかもしれないが、実際には比較的シンプルなプロセスだ。機関投資家が株を空売りする場合、実際に彼らが行なっていることは、価値が下がると考えている多くの株を借りて、可能な限り高値で売り、より低い価格で買い戻そうとすることなのだ。成功すれば、最初に借りたものを返して、残りを自分の利益とする。

株価が上がると、空売りトレーダーは損失を出して株を買い戻すことを余儀なくされる。株価が短期間で劇的に高騰すれば、壊滅的な損失を被ることもある。さらに、空売りトレーダーはショートスクイーズが発生したときに、株を買い戻すことを余儀なくされるため、そのことが株価をさらに押し上げることにつながる。

ヘッジファンドは退散、取引アプリはクラッシュ

実際、米ヘッジファンドのメルビン・キャピタル(Melvin Capital)や、シトロン・リサーチ(Citron Research)は、WallStreetBetsの一群によるショートスクイーズの影響を受けた。大手ヘッジファンドのシタデル(Citadel)とポイント27(Point27)はその後、メルビン・キャピタルに対して27億5000万ドル(約2873億円)の緊急援助に乗り出した。

ゲームストップの株価は9日間で、19.79ドル(約2100円)から380ドル(約3万9700円)へと1800%以上高騰した。コーエン氏が保有する13%の株式はいまや、25億ドル(約2612億円)の価値がある。

電気自動車テスラの最高経営責任者(CEO)で、世界一の富豪と言われるイーロン・マスク(Elon Musk)氏は、インターネットのミームによって人気となった「stock(株式)」を故意に間違えてスペリングした言葉、「Gamestonk!」という言葉でツイートを行って支持を表明し、火に油を注いだ。

WSBの影響はゲームストップに留まらず、大幅に空売りされていた他の株にも波及した。ブラックベリー(BlackBerry)、AMC、ノキア(Nokia)、ベッド・バス・アンド・ビヨンド(Bed Bath & Beyond)は27日、それぞれ24%、310%、70%、46%の値上がりを記録した。

株取引アプリのロビンフッドにも影響

モバイル株取引アプリのロビンフッド(Robinhood)と、トレーディング212(Trading212)はどちらも27日午前、アメリカ市場が開いて個人投資家が狂乱に加わろうと押し寄せた結果、一時使用が停止された。

この異例の事態に対して、世界で2番目に大きい証券取引所、ナスダック(Nasdaq)のアデナ・フリードマン(Adena Friedman)CEOは、同社はソーシャルメディアの監視を始め、新たにWSBが主導する高騰が検知された場合には、取引を一時停止するとコメントした。TDアメリトレード(TD Ameritrade)は、ゲームストップ株の取引を制限した。

WallStreetBetsのレディットチャンネルは27日、新規ユーザーが数百万人も加入してきたことへの対応として、一時非公開となった。メッセージングサービスの「Discord」も、相次ぐ差別的投稿や憎しみに満ちたコメントを理由に、WSBサーバーを禁止したと報じられている。

WSBのモデレーターは投稿の中で、「よく眠れない一夜を過ごすほどの時間で、我々は夢にしか見なかったようなサイズにまで成長した。あまりに多くのコメントや投稿が寄せられ、すべてを読むことと、モデレーターとしてそれらについて決定を下すことは不可能である」

|翻訳:山口晶子
|編集:佐藤茂
|画像:ニューヨークにあるゲームストップの路面店(Shutterstock)
|原文:WallStreetBets Reddit Group: What Is It?