- 暗号資産市場は下落を続け、時価総額は3兆ドルを下回った。直近1カ月で3度目のことだ。
- 機関投資家がリスク評価を見直しているため、特にETFに組み込まれている大型資産は売り圧力にさらされている。
- ビットコインの下落は、中国政府の財政刺激策への期待に支えられた主要アジア株価指数の上昇とは対照的だ。
暗号資産(仮想通貨)市場全体で下落が続いた12月17日、時価総額は1カ月で3度目となる3兆ドル(約465兆円、1ドル=155円換算)割れとなり、さらなる下落のきっかけとなる水準を試している。
売り圧力は大型銘柄、特にETF(上場投資信託)の保有比率が高い銘柄に集中しており、個人投資家の全面的な売りというより、機関投資家のポジション調整を示唆している。
ビットコイン(BTC)は1.5%下落して8万6580ドルとなり、16日の上昇分を一部失った。この弱気相場は暗号資産市場全体に重くのしかかり、CoinDeskのデータによると、エックス・アール・ピー(XRP)の回復を1.90ドル付近で止めた。イーサリアム(ETH)は前夜の最高値2980ドル前後から2930ドルまで下落した。
年初に機関投資家の資金流入で最も恩恵を受けたこれらの主要トークンは、センチメントが冷え込む中、現在下落を主導している。
FxProのチーフ市場アナリスト、アレックス・クプツィケビッチ(Alex Kuptsikevich)氏によれば、主要コインは年末に向けて投資家がリスク・エクスポージャーを見直す中、「機関投資家のセンチメントの変化の犠牲」となりつつある。
BTCの軟調さは、ハンセン、上海総合、コスピ(韓国総合)、IDXといった主要アジア株価指数が小幅に上昇した動きと対照的だった。これらの指数は、11月の経済指標が相次いで弱含んだ後、北京政府からの財政刺激策への期待を主な支えとして上昇した。
一方、ドル指数(DXY)は98.30まで回復した。16日に付けた2カ月半ぶりの安値97.87から反発した形だ。アメリカの雇用統計で11月の雇用者数が6万4000人増加し、予想の5万人を上回ったことを受けたものだ。一方、失業率は予想外に4.6%に上昇し、2021年以来の高水準となった。
ドル高は通常、ビットコインやゴールド(金)などのドル建て資産に重しとなるが、記事執筆時点ではゴールドは1オンス4300ドル台で堅調に推移している。
暗号資産のセンチメントが悪化
価格動向と並行して市場センチメントは急激に悪化した。暗号資産の「恐怖と貪欲指数(Fear and Greed Index)」は11まで下落し、ちょうど1カ月ぶりの最低値を記録した。完全に「極度の恐怖」ゾーンに入っている。
2月と4月の短期間の調整とは異なり、現在の下落は単なる定期的な調整以上の兆候を示している。複数の大型資産が中間的なテクニカルサポート水準を割り込んだからだ。
テクニカル的な観点では、次の重要な支持ゾーンは8万1000ドル付近に位置する。ここは11月の安値と3月の調整水準が交差する地点だ。さらに下落が進めば、より広範な6万ドルから7万ドルのゾーンが視野に入る。この歴史的に重要なゾーンは、2021年と2024年のサイクルにおいて抵抗線として機能した実績がある。
流動性の低下
流動性の条件も下落圧力を増している。FlowDeskのデータは、年末が近づくにつれて市場の深さが低下していることを示しており、トレーダーがポジションを決済しエクスポージャーを減らす中でレバレッジは抑制されたままだ。流動性の低下は価格変動を増幅させており、特にアメリカ取引時間中に顕著だ。一方、取引所の総取引量は歴史的に弱い状態が続いている。
オンチェーンデータは複雑な背景を示している。CryptoQuantによれば、最近のビットコインの上昇は底をつき、次の持続的な上昇の前に、より深刻な調整局面を迎える可能性を示唆している。
一方でGlassnodeは、企業や金融機関による長期的な買い増しが継続しており、それはマイナーだけにとどまらない拡大傾向にあると指摘する。ストラテジー(Strategy)による1万624BTC(約10億ドル、約1550億円相当)の直近の購入は、短期的な価格上昇力が弱まる中でも選択的な買い増しが続いていることを示している。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin slides with ether and XRP as market tests $3 trillion floor
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