ドージコインは“次のビットコイン”ではないが類似点はある【オピニオン】

暗号資産業界に長くかかわってきた者にとって、ドージコイン(DOGE)は当初から奇妙な存在だった。

ドージコインは、新規ユーザーへのずば抜けた親しみやすさと魅力はあるが、有用性や価値を高める特徴はほとんどない。

2013年にジャクソン・パーマー(Jackson Palmer)氏とビリー・マーカス(Billy Markus)氏が「ジョーク」として作ったにもかかわらず、このところの価格高騰で日本時間20日17時時点で時価総額はビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、バイナンスコイン(BNB)に次いで第4位。テザー(USDT)やリップル(XRP)を上回っている。

一体、何が起きているのだろうか?

ビットコインの2つの有用性

数年前、私はイラン、インド、シンガポール、ホンジュラス、ナイジェリアなどの国々で暗号資産についてインタビューを行った。私はビットコイン(BTC)は人々の選択肢には入らないだろうと考えていた。取引手数料は多くの場合、現地の1日の賃金よりも高く、価値基準とまったく合わないからだ。

だが、人々は依然としてビットコインをベストな選択肢と考えていた。それは今も続いている。私の質問は簡単なものだった。

「利用可能なすべての暗号資産のなかで、どれが最も有用だろうか?」

ビットコインの場合、有用性は2つある。

1つは予測可能性。人が自国通貨をビットコインに変えるのは、現地の政治的・経済的リアリティから切り離された価値保存の手段を探しているからだ。

誰もがビットコインの供給上限について知っていて、政府のコントロールが及ばない、ほぼ変わることのない性質を理解している。

2つめは流動性で、より重要な理由だろうと考えている。売りたい時、常に市場価格で購入する相手がいることはきわめて重要だ。

ビットコインはきわめて高価と見られているかもしれないが、それが皆の選択だ。

人は他の暗号資産を選び、購入できる。ビットコイン以外の選択肢は、暗号資産の数が増えるにつれて、信じられないほど多様化している。

状況は変わるかもしれないが、ビットコインの先行者利益とネットワーク効果は信じられないほど強力だ。簡単に言えば、ビットコインは皆が使うから、とても便利ということだ。

ドージコインが上昇している理由

2021年のほとんどの期間、私はドージコインがそうした役割を担っていると考えるようになった。ビットコインが「予測可能な通貨性」を求める人々の総意としての選択であるように、ドージコインは「ミーム的な奇抜さ」を求める人々の総意としての選択のようだ。

これらはイーロン・マスク氏、スリムジム(Slim Jim:ドージコインをプロモーションに使ったビーフジャーキー)、マーク・キューバン氏の世界で起きているようなことであって、ミーム(ネットで話題になること)カルチャーが広がっていることは言うまでもない。

これは最近行われた米食品大手コナグラ・ブランズ(Conagra Brands)の決算報告で浮き彫りになった。コナグラは流行に敏感な会社ではない。スリムジム、マリーカレンダーズ(Marie Callender’s:1990年代に私が1、2回食事したことのあるレストランチェーン) 、ハンツトマト(Hunt’s Tomatoes:母のお気に入りのトマトソース)など昔からのブランドを数多く所有している。

だが、最近の取り組みについて説明する際に、コナグラのCEOは同社の「ドージコイン・エンゲージメント戦略」を取り上げた。

ドージコインはスリムジムのツイッターフォロワーを倍増させた。CEOのショーン・コノリー(Sean Connolly)氏は、スリムジムのプロモーションが大きな注目を集めたのは、ドージコインのコミュニティが「大きな役割を果たしたから」と評価した。

ドージコインは勝つためのジョーク通貨になっている。皆が動きに乗ろうとしているので価格が上がり、規模がさらに大きくなっている。ビットコインと似ているが、「笑い(LOL)」が目的だ。

こうしたことはすべて、悲惨な結末を迎える可能性がある。現状の価格でドージコインを購入している多くの人たちは、本当のストーリーを知らない。

よく言われるように「easy come, easy go(簡単に手に入るものは、簡単に失う)」。だが少なくとも今のところ、ドージコインがジョーク通貨の絶対的存在であることは確かだ。それだけで十分なのかもしれない。

|翻訳:新井朝子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Dogecoin Is Not the Next Bitcoin – But Here Are the Similarities