原子力発電はビットコインマイニングを支えるエネルギー源となるか?

原子力発電はビットコインマイニングを支えるエネルギー源となるか?

原発を電力源としたビットコイン(BTC)マイニングが勢いを増しているようだ。

ビットコインマイニング・ホスティング企業のコンパス・マイニング(Compass Mining)は、原子力発電スタートアップのオクロ(Oklo)と20年契約を締結。オクロが15メガワットの電力をコンパスに供給する。

計画では、オクロの1基目の原子炉が配備されるのは2023年または2024年で、コストはコンパスが現在利用するエネルギー源よりも「大幅に」低くなると、コンパスのCEO、ウィット・ギブズ(Whit Gibbs)氏は述べた。オクロは、1〜10メガワットの電力を生産する小型の原子炉を建設する予定だが、これに対し従来型の原子炉は、数百メガワットの電力を生み出す。

オクロはアイダホフォールズにあるアイダホ国立研究所で、1.5メガワットの原子力発電所建設の申請を行い、他にも追加の申請に取り組んでいる。

ビットコインマイニングのエネルギー源として、原子力はますます話題にのぼるようになっている。ビットコイン価格がここ1年で上昇したことを背景に、マイニング企業各社と、彼らが抱える消費電力の大きな膨大な数の専用コンピューターが、環境保護団体からの批判を集めるようになっている。

原子力発電企業エナジー・ハーバー(Energy Harbor Corp.)は今週、オハイオ州でビットコインマイニングに電力を供給するために、スタンダード・パワー(Standard Power)と5年間のパートナーシップを締結した。

タレン・エナジー(Talen Energy)は、自社が所有・運営しているペンシルベニア州の原子力発電所に、ビットコインマイニング事業を加えると発表した。

CEOのギブズ氏によると、コンパスは、フロリダ州ホームステッドにあるターキー・ポイント(Turkey Point)原子力発電所から電力を受けることについて、マイアミ市と協議を進めている。マイアミのフランシス・フアレス市長は、安価な電力源として、暗号資産マイニング企業に同原発を売り込んでいるとされる。

電力の分散化

コンパスは、個々のマイナーがホスティング施設を探し、マイニグハードウェアを運用できるようにしている。その意味では、マイニングハードウェアをホスティングする施設のためのAirbnbのような機能を、コンパスは果たしているのだ。自社マイニングネットワークを、可能な限り石炭を利用しないエネルギー源の上に築くことをコンパスは目指していると、ギブズ氏は語った。

ギブズ氏によれば、コンパスはこれまでに、ビットコインのハッシュレートの0.5%を世界中の個人ノードに分散させており、2022年末までにはその数字を10%とする計画だ。

現在コンパスは、電力購入契約を握り、電力価格を決定することができる第三者施設を利用している。「設備側の電力コストはキロワット時当たり0.030〜0.035ドルだとしても、彼らはコンパスの顧客には0.055〜0.065ドルで販売する」と、ギブズ氏は説明した。

しかしオクロとの間では、コンパスが電力購入契約を握っており、電力コストはキロワット時当たり0.02〜0.04ドルとなることを見込んでいると、ギブズ氏は語った。

オクロ側の見解

コンパスがより安価なエネルギーを利用できるのに対して、オクロは様々な原子炉からエネルギー供給を受ける可能性のあるパートナーを獲得できると、オクロのCEO、ジェイコブ・デウィット(Jacob DeWitte)氏は語った。オクロはゆくゆくは、ビットコインマイニングためだけの原子炉を建設する可能性もある。

オクロが暗号資産企業を顧客とするのは初めてであり、コンパスが原子力エネルギー合意を結ぶのも初めてだ。今回の合意は、暗号資産とクリーンエネルギー開発の将来的な交わりを導く指針となる可能性があると、デウィット氏は加えた。

他のコモディティとは異なり、ビットコインにはたくさんのインフラは必要ない。ビットコインがマイニングされれば、輸送費なしで瞬時に移動が可能だ。

「需要がここそこで数メガワット単位で変化するかもしれないので、それをビットコインマイニングに注ぎ込むことができる」とデウィット氏は話した。大規模な原子炉1基ではなく、複数の小型原子炉と協力することは、分散化というビットコインの精神によりピッタリ合うだろうと、デウィット氏は続けた。

原子力発電はビットコインの未来?

オクロのビジネスモデルは、従来の原子力発電企業がより大きな原子炉を建設することで、時間とともに小型の原子炉に対して得ることができていた、伝統的な規模の経済に抵抗することを狙っている。

原子炉建設の複雑さやコストの高さにも関わらず、原子力発電は、最も安価な代替エネルギー源となる可能性を秘めていると、デウィット氏は考えている。

「コストと持続可能性という目的から考えると、エネルギーを生み出すために私たちが利用できるツールをすべて検討してみても、原子力発電はそのライフサイクル全体で必要とする素材が最も少ない」と、デウィット氏は指摘した。

しかし、デウィット氏のこの考えに賛同しない物理学者も存在する。

従来型の原子力発電所の建設コストは数十億ドル。小型の原子炉ならばコストは低くなるが、相対的にはより高くつく傾向があると、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の物理学者M. V. ラマナ(M. V. Ramana)氏は指摘する。

150億ドルの原子炉が1000メガワットの電力を生み出すとしても、1メガワットを生み出す原子炉の建設コストは15億ドルの1000分の1とはならない、とラマナ氏は続けた。

原子力発電に伴うコストは、太陽光や風力発電など、この先の10年間でさらに安価になると見込まれる、再生可能エネルギーのコストと比べると魅力的ではないとも、ラマナ氏は指摘し、「現在原子力発電のコストは、太陽光、風力発電のコストの約4倍だ」と説明した。

大型の発電所でも、小型の発電所でも、コストは時間とともに増加すると、ラマナ氏は続けた。約60メガワットの原子炉を建設する原子力発電企業、ニュースケール・パワー(NuScale Power)によると、米原子力規制委員会(NRC)による規制プロセスを経た後にコストは大幅に上がったと、ラマナ氏は説明する。

科学者同盟(Union of Concerned Scientists)に参加する物理学者、エドウィン・ライマン(Edwin Lyman)氏は、安全基準が一般的なものではないために、2023年までにオクロに原子炉建設の許可が下りる可能性は低いと指摘する。

「オクロや一部の新規原子炉企業の姿勢は、NRCに原子炉がより安全なものになると認めてもらいたいだけのもので、基本的に何でも自由にやらせてもらいたいと願っている」とライマン氏は述べる。

オクロは、「高いハードルであり、それ自体が大きなステップである」NRCの審査プロセスに受け入れられたと、デウィット氏は語った。一方、コンパスのギブズ氏は、オクロがエネルギー省から200万ドルの報奨金を受け取ったことは、オクロが小型原子炉を予定通り建設できることの裏づけとなると考えている。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:Bitcoin Mining Firm Compass Inks Deal With Nuclear Microreactor Company Oklo

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