恐怖、不確実性、疑念が一度に押し寄せた4−5月【市場分析2021】Vol.4

2021年の暗号資産(仮想通貨)市場を振り返り、グローバル金融の中で急速に進化している市場の重要な教訓に焦点を当てるシリーズの4回目(最新価格は下部に掲載)。

これまでは1月〜3月までの動きを振り返ってきた。今日は、アメリカのキャピタルゲイン税、ビットコインが環境に与える影響、中国での暗号資産の全面禁止などへの懸念が高まるなか、4月と5月にトレーダーと投資家の一部が資産を現金化し始めた様子を振り返る。恐怖、不確実性、疑念、いわゆる「FUD(Fear, Uncertainty and Doubt)」が一度に押し寄せてきたように思えた。

キャピタルゲイン税

ニューヨーク・タイムズが4月中旬、バイデン大統領はキャピタルゲイン、あるいは資産売却で得た収益に対する課税を約2倍に引き上げる計画と伝えたことで、ビットコインの史上最高値約6万5000ドル付近への反発は望みを絶たれた。今年はじめの大幅な上昇の後、ビットコイン価格は突然、下落していた。

シンガポールの取引所Delta Exchangeの共同創業者兼CEO、パンカジ・バラニ(Pankaj Balani)氏は「暗号資産はすでにディフェンシブになっていた。税金のニュースで多くが利益確定に動いた」と述べた。

バイデン大統領(Shutterstock)

「政府の動きはビットコインにとって、強気となるものではない。増税は価格回復の障害となり、投資の足を引っ張るだろう」とFXブローカー、オアンダ(OANDA)のアナリスト、Edエドワード・モヤ(Edward Moya)氏はコメントした。

ビットコインの逆風になる可能性として、米ドルの上昇を指摘するアナリストもいた。北半球は春を迎え、新型コロナウイルスのワクチンが世界中に行き渡り、経済に明るい見通しが見えてきた。アメリカではパンデミック対策で拡大した財政赤字が改善に向かっているように見えた。

これは、政府や中央銀行による追加的な経済支援の必要性は低くなることを意味し、急速なインフレに対するヘッジとして、投資家の間でビットコインの魅力は高まった。

環境への懸念

だが、別の問題が浮上した。暗号資産の今後の普及の重要なターゲットと考えられていた伝統的な市場の多くの投資家が、暗号資産の二酸化炭素排出量に疑問を持ち始めた。

例えば、テスラのイーロン・マスクCEOは、ビットコインに対するそれまでの積極姿勢を一転、マイニングに化石燃料を使用することへの懸念を理由に、テスラ車販売でのビットコイン決済を中止した。

マスク氏のツイートで、ビットコイン価格を6%下落。ビットコイン普及の障害として、突然、環境問題が浮上した。また、ウォール街では環境、社会、ガバナンス(ESG)が重要視されるようになり、エネルギーを大量消費するビットコインは大手資産運用会社から敬遠されるようになった。

例えば、資産運用業界の600人を対象とした調査では、96%は2021年中にESGの優先順位は上がると予想していた。元米証券取引委員会(SEC)のジョン・リード・スターク(John Reed Stark)氏は5月、ビットコインのESGにまつわる懸念は暗号資産に対する機関投資家の投資を間違いなく減少させると述べた。

中国による暗号資産禁止

そして、ビットコイントレーダーは、恐怖、不確実性、疑念を十分に経験したと思ったちょうどその時、中国政府はすべての金融機関と決済会社に対して、暗号資産取引に関するサービスの提供を正式に禁止した。

このニュースでビットコインは急落、4月に記録した約6万5000ドルからおよそ50%下落した。ほぼすべての指標で、ビットコインは弱気相場に突入した。

下落は暗号資産市場から4000億ドルを消し去り、一部のクジラ(ビットコインの大口保有者)はビットコインを取引所に移して売却を急いだ。暗号資産市場はパニックに陥った。

クジラのCapitulation Index(CryptoQuant)

また、暗号資産が規制リスクに対して、いかに脆弱かも明らかになった。キャピタルゲイン税に関する懸念であれ、中国での全面禁止であれ、ビットコインの大幅な上昇は、政府や金融当局の監視が厳しくなったことで阻害されたようだ。

最新価格

●ビットコイン:50,976ドル、+4.1%
●イーサリアム:4,127ドル、+3.1%

●S&P500:+0.6%
●ゴールド:1,809ドル、+0.4%
●米国10年債:1.495%

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:CryptoQuant
|原文:Market Wrap Year In Review: Remembering Bitcoin’s FUD-Fueled Crash