キャッシュアウトした機関投資家、環境懸念の浮上【市場分析2021】Vol.5

キャッシュアウトした機関投資家、環境懸念の浮上【市場分析2021】Vol.5

2021年の暗号資産(仮想通貨)市場を振り返り、グローバル金融の中で急速に進化している市場の重要な教訓に焦点を当てるシリーズの5回目(最新価格は下部に掲載)。

今回は、前回に続けて、4月と5月に起きた市場下落の理由をさらに振り返える。年明け早々、ビットコインがインフレ懸念を背景に大幅に上昇した後、一部の大口投資家は、市場の投機色の強まりと、世界の通貨供給量の伸びの鈍化を懸念するようになった。実際、複数の価格チャート指標は、すでにビットコインの割高感を示していた。6月までにビットコインは3万ドル前後で安定したが、その後、トレーダーは押し目買いに動いた。

キャッシュアウト

英資産運用会社ラファー・インベストメント(Ruffer Investments)は、ビットコイン投資を早くから手がけた大口機関投資家の1つだった。同社は2020年11月からビットコイン投資を始めた。

2021年初頭に価格が上昇し、他の資産運用会社が高いリターンの可能性に魅せられ、ビットコインに投資する準備を進めていた一方で、ラファーはすでにその波を捉えていた。

「2020年11月、我々はビットコインに投資した。ビットコインを、きわめて特徴的で、魅力的なリスク/リターンの可能性を持つ新たな価値保存の選択肢と捉えた」と同社の投資ディレクター、ダンカン・マッキネス(Duncan MacInnes)氏は7月9日、ブログに記した。

だがラファーでさえ、年初にビットコイン価格が史上最高値約6万5000ドルまで上昇したことは驚きだった。ラファーはキャッシュアウト(現金化)した。市場は持続不可能に思えた。

「2021年、暗号資産とDeFi(分散型金融)が盛り上がりを見せている。将来性はリアル。だが、景気刺激策と量的緩和が作り出した過剰流動性資金の急増もリアル。過剰流動性資金は4月にピークを迎えたようだ」(マッキネス氏)

米サンデー・タイムズ紙は6月、ラファーは5カ月で11億ドルの利益をあげたと伝えた。

ビットコイン価格と世界のマネーサプライ(Twitter:@MrBlonde_macro)

極端な強気心理

市場の反転という点では、ビットコインが4月に史上最高値を更新するまでの約1カ月の間に、複数の指標が過剰な買いの兆候を示していたことは残念ながら役に立たなかった。例えば、3月頃、Alternative.meのCrypto Fear & Greed Indexは2019年6月以来の高水準に達し、60%近いビットコイン価格の下落に先行していた。

ブロックチェーンデータと価格チャートの両方には、他にも警告サインが出ていた。

ビットコインの環境懸念

ビットコインの二酸化炭素(CO2)排出に対する懸念が市場に重くのしかかるなか、業界は対応を急いだ。

イーロン・マスク氏は、ビットコインの環境懸念を指摘し、価格に影響を与えたが、業界との対話にオープンな姿勢を見せた。5月末、マスク氏はビットコインマイニング事業者と再生可能エネルギーの使用について議論したとツイートした。マスク氏はビットコインに完全に背を向けたわけではなく、落胆した強気派にいくらかの希望を与えた。

5月24日、マイニング事業者と、マイクロストラテジーのマイケル・セイラーCEOをはじめとする大口投資家からなるBitcoin Mining Councilの発表で、ビットコインはすぐに約12%も上昇した。この時点で、4月の下落による市場のパニックは薄れ始め、一部のトレーダーは押し目買いを始めた。

極端な下落圧力が弱まり始めた6月には、ビットコイン価格は約3万ドルで安定した。下図は、4月から6月にかけての50%近い下落を示している。その後、7月から8月にかけては、一部のテクニカル指標が売られ過ぎを示し、ビットコインはほぼ横ばいで推移した。

暗号資産トレーダーは、この状況を下落に向けた小休止なのか、新たな上昇に向けた基礎となるのか、見極めようとしていた。

ビットコインの価格チャート(CoinDesk, TradingView)

値動きは過去数カ月と比べるとはるかに小さく、多くの投資家はビットコインの長期的な価値保存の手段としての可能性をまだ信じているように思えた。ビットコインマイニング事業者は二酸化炭素排出量を削減する手段を探していると主張し、中国で稼働していた多くのマイニング事業者は規制が強化された中国から移転した。

さらに、オプション市場も低調になり、市場環境はきわめて落ち着いているように見えた。つまり、バブルは終わったように思えた。

重要なことは、ビットコイン市場に対するネガティブなニュースがしばらくは続くように思えたにもかかわらず、価格は過去を振り返ると、驚くほど持ちこたえていたことだ。4月の史上最高値約6万5000ドルは遠のいたが、2020年の最安値3850ドルからも遠のいていた。

暗号資産市場の他のセクターでは、まだ投機が盛んだった。ビットコインが横ばいで推移するなか、一部のトレーダーはアルトコインやノンファンジブル・トークン(NFT)に群がっていた。

最新価格

●ビットコイン:51,257ドル、+2%
●イーサリアム:4,093ドル、+0.5%

●S&P500:+1.4%
●金:1,813ドル、±0%
●米国10年債:1.481%

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:ビットコイン価格とビットコインをめぐる出来事(Ruffer Investments)
|原文:Market Wrap Year-End Review: Institutions Cash Out of Bitcoin

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