イーサリアムに代わるレイヤー1、ポテンシャルが高いエリートはどれだ?【Krakenリサーチ】

2021年は、NFTやDeFi(分散型金融)の市場拡大を受けてイーサリアムの潜在力の高さを認識すると同時に、イーサリアムのガス代(取引手数料)高騰などの課題が浮き彫りになった1年だった。

そんな中、NFTやDeFiの受け皿というイーサリアムが切り開いた路線は引き継ぎつつ、イーサリアムの課題解決を目指すレイヤー1のブロックチェーンが台頭した。ソラナ(SOL)やポルカドット(DOT)、アヴァランチ(AVAX)、カルダノ(ADA)などがそうしたブロックチェーンである。

最近では、ファントム(FTM)やニア(NEAR)なども新たなレイヤー1銘柄として勢いをつけている。注目度の高い「エリート」レイヤー1ブロックチェーンの中で、とりわけ今年も勢いがありそうなものはどれか?この記事では、クラーケン・インテリジェンスのデータを元に考察してみよう。

レイヤー1の躍進

まずは、2021年を振り返る。レイヤー1の躍進は目覚ましく、ビットコインの2021年のリターンが58%だったのに対して、レイヤー1のリターンはいずれもビットコインを遥かに上回る結果となった。

(出典: Kraken Intelligence, CoinMarketCap「L1銘柄の2021年統計」)

次にレイヤー1プロジェクトが使うソーシャルメディアを分析してみよう。Twitterのフォロワー数をみると、どの銘柄も過去1年で大きく成長している。フォロワー数の増加は普及率の上昇と関連づけられそうだが、フォロワーがイコール投資家であるとは必ずしも言えないだろう。

(出典: Kraken Intelligence, SocialBlade「レイヤー1のTwitterフォロワー数(2021年)」)

このため、上記のデータと暗号資産の時価総額全体に占める割合(ドミナンス)を比較してみよう。

(出典: Kraken Intelligence, CoinGecko「レイヤー1銘柄のドミナンス」)

上記の二つのグラフは、大変似ていることが確認できる。5月と9月のソラナの上昇、8月のアヴァランチによるコスモス逆転など、Twitterのフォロワー数とドミナンスの推移には正の相関関係がある。

ポルカドットのポテンシャル

さて、Twitterフォロワー数の分析をさらに進めよう。あるレイヤー1プロジェクトのフォロワーについて、同時に他のレイヤー1プロジェクトもフォローしているのか、それしかフォローしていないのかをみることで、そのレイヤー1プロジェクトのポテンシャルを測る。

(出典: Twitter, Kraken Intelligence, data as of 11/30/21「レイヤー1銘柄のTwitterフォロワー分析」)

あるプロジェクトを一つのみフォローしているフォロワーの全体に占める割合を「孤独なフォロワー(Lone Follower)」の割合と呼ぶ。複数のプロジェクトをフォローするフォロワーは「共有フォロワー(Joint Follower)と呼ぶ。後者の場合、例えば、62%のコスモスのフォロワーがポルカドットもフォローする一方、たった17%のポルカドットのフォロワーしかコスモスをフォローしていないことが表で分かる。

上記の表によると、ポルカドットは、共有フォロワー数が最も多いプロジェクトだった。共有フォロワー数の割合が全プロジェクトの中で最も大きかった回数(Most Jointly Followed)が2回、共有フォロワー数の割合が全プロジェクトの中で2番目に大きかった回数(2nd most Jointly Followed)は3回だ。純粋なフォロワー数ではイーサリアムやカルダノ、ソラナはポルカドットを上回っているが、共有フォロワー数ではポルカドットが一番ということになる。

上記で確認した通り、フォロワー数と時価総額の相関関係は高いため、フォロワー数が多ければ価格も高くなると考えられる。フォロワー数で後ろから3番手とやや出遅れているポルカドットだが、他のプロジェクトのフォロワーから好かれる傾向があるため、今後、レイヤー1銘柄の競争が激化する中で普及が加速する可能性があるかもしれない。

ポルカドットは、2021年末にパラチェーンのオークションを開始したばかり。オークションのスロットを獲得したDeFiやNFTのプロジェクトが、今後、目覚ましい成果を上げる可能性もあり、ポルカドットのポテンシャルは高いと考えられそうだ。


千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社し、2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。

※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。


|編集・構成:菊池友信、佐藤茂
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