米コンセンシスが530億円調達、評価額は8300億円に──急成長の足もとでは訴訟も

イーサリアムブロックチェーンのアプリケーションとインフラの開発を手がけるコンセンシス(ConsenSys)は15日、4億5000万ドル(約530億円)を調達し、評価額は70億ドル(約8300億円)に達したと発表した。

前回の資金調達は2021年11月、2億ドルを集め、評価額は32億ドルだった。わずか数カ月で評価額は2倍以上となった。

今回のシリーズDの資金調達ラウンドは、ParaFi Capitalが主導。ラウンドには、Third PointやMarshall Waceなどの既存投資家に加えて、シンガポールの政府系ファンドのテマセク(Temasek)、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2(SoftBank Vision Fund 2)、マイクロソフト(Microsoft)などが加わった。

プレスリリースによると、同社の旗艦サービスであるイーサリアムウォレット「メタマスク(MetaMask)」の月間アクティブユーザー数が3000万人以上、インフラツール「Infura」を使う開発者は約43万人にのぼる。

今回調達した資金の一部は、2022年末に予定しているメタマスクの大幅なデザイン変更と機能拡張に充てられるという。

資産はイーサリアムに投資

業界全体を見ると、この規模の評価額は決して珍しいものではない。競合するインフラプロバイダーのアルケミー(Alchemy)は2月、2億ドルを調達し、評価額は100億ドルを超えた。

だがコンセンシスは、同社の資産の大部分をイーサリアム(ETH)に変えることを公表しており、独自路線を進むようだ。イーサリアムの一部はDeFi(分散型金融)での利回り獲得とガバナンスに使用され、大部分はイーサリアムブロックチェーンがプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行完了した際にはステーキングされる予定だ。

「我々は、今起きていることに対抗しようとするのではなく、今起きていることにパワーを与えたいと考えている」と同社最高戦略責任者のサイモン・モリス(Simon Morris)は語った。

「我々は、真に分散化に関するテーマを追求し、いかにして我々が手にしている重要な部分を取り出し、それらを革新的に分散化していくかを追求している。つまり、我々だけが手にするのではなく、我々とパートナー、そしてエンドユーザーの3者が手にすることを目指している」

例えば、メタマスクのガバナンストークンのエアドロップは、以前から噂されている。

成長の痛み

暗号資産エコシステム全体の成長に力を注ぐことがすべてという考え方と、資産をイーサリアムで保有するという新しいアイデアは、モリス氏が強調したように「企業の未来を見通すレンズのようなもの」で、素晴らしいものだ。

だが、皆が賛成しているわけではない。高い評価額と急成長は、コンセンシスの元社員や株主を苛つかせるだろう。元社員や株主は、同社の今の好調さの分け前を受け取る資格があると考えている。

具体的には、直近の訴訟での争点は、メタマスクやインフラなどの資産がスイスのコンセンシス(ConsenSys AG)から、2020年初めにアメリカのコンセンシス・ソフトウェア(ConsenSys Software Inc:CSI)移されたことだ。

昨年、株主や元社員に示された資料によると、CSIに移管される資産の価値は、外部の専門家や関連する現地当局が決定・調査した。

モリス氏によると、スイスでの訴訟は、暗号資産がまだ暗く、長い冬から抜け出しておらず、イーサリアム価格が3桁台の苦境に陥っていた特定の記事に関わるものだ。

「多くの人は、DeFiやNFTなどが流行する以前に、我々がメタマスクで何が起きていたかを知っていたことにしたいのだろう。もちろん、我々は希望を持っていた。だが収益が上がる以前は、正直なところ、ここまで成功するとは思っていなかった。だから皆、少しチャンスを狙っているのだと思う。法律は法律、そうした批判は歓迎する」とモリス氏は述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:$450M Raise Values Ethereum Builder ConsenSys at $7B as MetaMask Tops 30M Users