“イーサリアムキラー”を比べてみる【基礎知識】

ビットコイン(BTC)は6カ月ぶりの安値、各アルトコインも似たような安値を記録する中、新しく暗号資産(仮想通貨)投資を始めた人たちは、市場全体に広がる劇的な値下がりと弱気センチメントが気になっているだろう。

しかし、業界関係者たちは、少なくとも長期的観点からは楽観的なままで、現在の状況を、どのブロックチェーンが生き残り、分散型未来のリーダーとなっていくかをめぐる競争のようなものと捉えている。

競争の激しい暗号資産の世界においても、特に熾烈な戦いを繰り広げているのが、元祖スマートコントラクトブロックチェーンのイーサリアムと、イーサリアムのテクノロジーをさらに改善することを目指す各プロジェクトだ。

イーサリアムのネイティブ通貨イーサ(ETH)の時価総額は、当記事執筆時点で約3705億ドル。ビットコインに次いで第2位となっている。イーサリアムネットワークは2022年、大型アップグレードが予定されており、新しいイーサリアム2.0では、処理時間は短縮、手数料は削減され、スケーラビリティも改善される見込みだ。

一方、「イーサリアムキラー」と呼ばれる競合ブロックチェーンも勢いを増している。NFT(ノン・ファンジブル・トークン)市場においては、イーサリアムがいまだに、約80%のシェアを維持しているが、イーサリアムキラーも、そのシェアを拡大している。

注目すべきは、これらイーサリアムキラーは、より高速かつ環境への負荷の低いテクノロジーを使用し、取引手数料も安い点だ。このことから、イーサリアムがその先行者としての優位をどれほど維持できるか、疑問に思う声も上がっている。

「2022年は、ウェブ3と、インターネットの次なる革命をめぐる戦いの年となるだろう」と、暗号資産分析企業トークン・メトリックス(Token Metrics)の創業者イアン・バリナ(Ian Balina)氏は語り、「競争が過熱するはずだ」と予測した。

イーサリアムの競合は、どのように迫ってきているのだろうか?

イーサリアムの主要な競合たち

「イーサリアムは、明らかにリーダーだ。しかし、イーサリアムの取引手数料の高さと、取引速度の遅さから、他のブロックチェーンがより速いペースで新しいユーザーを獲得している」と、バリナ氏は指摘する。

現在の主要「イーサリアムキラー」は、ソラナ(Solana)、カルダノ(Cardano)、テゾス(Tezos)、ポルカドット(Polkadot)の4つ。それぞれの特徴を見ていこう。

ソラナ

ソラナのネイティブ通貨ソル(SOL)の時価総額は、当記事執筆時点で623億ドル。

イーサリアムのプルーフ・オブ・ワークコンセンサスモデルとは異なり、ソラナはトランザクションの検証に「プルーフ・オブ・ヒストリー」というメカニズムを採用。

JPモルガン・チェースをはじめとする大手金融機関もソラナに信頼を寄せており、バンク・オブ・アメリカは「デジタル資産エコシステムにおけるVisa」になる可能性があるとさえ主張している。

ソラナはさらに、大手ベンチャーキャピタル企業アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)の支援を受けているが、これはウェブ3の世界では、必ずしも良いこととは考えられていない。

機関投資家からの関心があまりに強まると、絶対的な分散化支持者は眉をひそめかねない。一方のイーサリアムは、おそらくイーサリアムを見捨てることのない、忠実なユーザーベースを抱えている。

どちらにしても、ソラナの取引処理は超高速。取引手数料も、1回につき1セントにも及ばないわずかな額だ。2020年の立ち上げ以降、確実に普及が進み、これまでに決済した取引は、500億件を超える。ソラナはイーサリアムよりもメインストリームになる可能性を秘めた存在と言えるかもしれない。

カルダノ

カルダノは、イーサリアムよりも環境に優しいオプションである。ネオティブ通貨のエイダ(ADA)の時価総額は、当記事執筆時点で約395億2000万ドル。カルダノ初となるDeFi取引所サンデースワップ(SundaeSwap)が先日リリースされたことから、暗号資産関係者たちの注目が集まっている。

カルダノがイーサリアムに取って代わるのか、より多くのユーザーがカルダノブロックチェーンで取引をするに連れて、似たような学習曲線を描くようになるのか、時が経てば分かるだろう。

テゾス

急速に存在感を増しているのが、テゾスだ。こちらもまた、新しいデジタル資産を発行したり、分散型アプリケーション(Dapp)を作るために使われる、スマートコントラクト対応ブロックチェーンである。ネイティブ通貨のテゾス(XTZ)の時価総額は、当記事執筆時点で36億ドル。

テゾス上では、ファッション、音楽、ゲーム、芸術業界のものを含め、注目のプロジェクトが複数立ち上がっている。テゾスは、プルーフ・オブ・ステークのコンセンサスメカニズムを最初に使い始めたネットワークの1つである。

さらに、独特のガバナンス機能も組み込まれている。最低8000トークンをステーキングした参加者は投票権を獲得し、ガバナンスに関して発言権を持つことができるのだ。テゾスはまた、Dappのセキュリティに関しても定評がある。

ポルカドット

ポルカドットのネイティブ通貨DOTの時価総額は、当記事執筆時点で257億2000万ドル。

ポルカドットは「相互運用性」と呼ばれる機能で知られている。つまりポルカドットのインフラは、いくつかのブロックチェーンを1つのネットワークにまとめ、セキュリティを犠牲にすることなく、データを交換することを可能にする。

そのため相互運用性は、サービス、製品、通貨が、分散型デジタルエコシステム全体で動き回るウェブ3の未来にとって不可欠だ。堅固な相互運用性はまた、チェーンをまたいだ連携の可能性も生み出し、プロトコル間での連携がさらに増加するかもしれない。

まとめ

スマートコントラクトブロックチェーンの中では、イーサリアムがいまだにベテランウェブ3ファンたちのハートをつかみ続けており、広範な普及の可能性も高い。

しかし、投資家たちは、イーサリアムの欠点に対して革新的なソリューションを提供するスマートコントラクトブロックチェーンについて、最新情報の入手を欠かさないようにするべきだ。

新しいDappやDeFiプロトコルへの需要が高まるに伴い、ウェブ3の未来を築くのに使うのに合ったインフラを、皆が探し求めていくだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:The Top ‘Ethereum Killers’ Compared