パンクがNFTでアーティストの経済的自立を可能にする【コラム】

パンクがNFTでアーティストの経済的自立を可能にする【コラム】

「本当にパンクなものを知っているか?10億ドルだ」

音楽マネージャーからNFT投資家に転身し、ウェイブ・フィナンシャル(Wave Financial)を共同で立ち上げたレス・ボルサイ(Les Borsai)氏のこの言葉が、先週末に開かれたイベント「NFT.LA」に参加中、ずっと頭から離れなかった。

NFT.LAは、アメリカ各地で開かれたNFT(ノン・ファンジブル・トークン)イベントの1つで、世界のストーリーテリングの中心地、ロサンゼルスで開催されていた。

パンク、反抗、反体制的な表現の精神は、暗号資産(仮想通貨)コミュニティに昔から深く根づいており、「非許可型イノベーション」というブロックチェーンの考え方に、とりわけ強く表われている。

「非許可型」のコンセプトは、直接でピアツーピアの価値の交換を可能にする、ブロックチェーンテクノロジーのオープンソースプロトコルと分散型検証ネットワークから生じている。

開発者たちは、ウェブ2インターネットプラットフォーム、銀行、政府などの許可を得ずに、アプリケーションを自由に開発できるのだ。それぞれのブロックチェーンが本当にどれほど「検閲耐性」を持つかは、常に議論されている問題だが、分散型アーキテクチャがイノベーションを可能にすると考えられている。

NFT.LAの会場で、ロサンゼルスを拠点とした数多くのデジタルアーティストと会話したことで、新しい視点が開けた。アーティストたちがiPhoneを開いて、NFTをはじめとするクリエイティブな最新の試みを熱心に見せてくれる中、この分野において、非許可の可能性を解き放つ、さらにパワフルな源があることに気づいたのだ。それは、マネーだ。

NFTは、大量のお金を生み出している。これまでは、アートやエンターテイメントのエコノミーの諸条件が、レコード会社、映画製作会社、タレント事務所などによって設定されてきたロサンゼルスにおいて、今ではクリエーターに従来よりも多くのお金が流れ込むようになっている。

多くの資金は、米ドルに変換されることなく、生み出されたイーサ(ETH)エコシステム内に留まっている。新たな投資へと再活用され、分散型金融(DeFi)への投資で最大限の影響力をもたらすように使われたり、クリエーターがリソースをプールし、新たなクリエイティブプロジェクトを引き受けられるよう、自律分散型組織(DAO)に使われたりしている。

お金の重要性

少なくとも今のところ、このような資金とクリエイティビティの好循環は、止めることのできないほど強力なものに見える。しかしもちろん、NFTブームや、カンファレンスなどのイベントに結実するそのエネルギーは、持続可能ではないバブルの結果として生じる単なる熱気の可能性もある。

そもそも、NFTにおける知的財産権の法的枠組みは、極めて不明確なままだ。オープンシー(OpenSea)などの巨大マーケットプレースや、ユガ・ラボ(Yuga Labs)の「Bored Ape Yacht Club」に見られるように、コンテンツ管理の力が中央集権化されているという懸念もある。つまり、旧来の仲介業者に取って代わる新たな仲介業者が生まれている、という心配だ。

さらに、基盤となるブロックチェーンアーキテクチャは、十分に分散化された状態で、進行中のすべてのNFTプロジェクトを支えるほどにスケールすることがまだできていない。ポリゴンの開発者が「私たちがレースサーキットを作る前に、F1のレーシングカーがリリースされているようなものだ」と、言ってくれた通りなのだ。

しかし、そのような心配はおそらく杞憂に終わるだろう。NFTを支える法的・技術的枠組みが、真に分散化されたクリエーター中心のコンテンツエコノミーを完全にサポートできるようになっていなくても、多くのアーティストは、仲介業者にさよならを告げるような、顧客と直接やり取りできる作品を生み出しているのだ。

金銭的に自由になれる可能性というのは、NFTエコノミーで働いている最もパワフルな力だ。だからこそ、アートや音楽のプロジェクトだけでなく、派生的な分野での新しいモデルや、分野を超えたクリエーター同士のコラボ、ファンとの関わりや、コミュニティ構築においても、かつてないようなデジタルのクリエイティビティやコラボレーションが花開いているのだ。

創造力を解き放つ

例えば、映画監督のマテオ・サントロ(Matteo Santoro)氏。SIFTという未来の世界を舞台にした映画の資金集めのためのNFTシリーズ「100 Tombstones」の一部を、彼は見せてくれた。

そのクオリティは、ユニバーサル・スタジオやピクサーといった高額予算の作品かと思わせるほど。しかし製作の大半は、サントロ氏だけで行っている。CGIと、自宅ガレージに間に合わせで作ったセット、そしてたっぷりの想像力を使って、サントロ氏が1人で、監督、アニメーター、俳優、プロデューサーを務めているのだ。

これは、ハリウッドの大手映画製作会社にとっては恐ろしいものだろう。

ハリウッド俳優のデイビッド・ビアンキ(David Bianchi)氏もそうだ。彼は新しいアートの形態と、新しいビジネスモデルを同時に生み出した。スポークンワード(詩や物語を語るパフォーマンスアート)のNFTで資金集めをした、詩をベースとした短編映画を製作しているのだ。

警官に殺されたジョージ・フロイドさんの死をテーマとした最初のプロジェクト『I Can’t Breathe』は賞を獲得し、NFT売り上げによる収益の100%が、ジョージ・フロイド記念財団に寄付された。

ビアンキ氏は現在、ライブパフォーマンスを行い、その動画を撮影して、ハイテクのエフェクトを重ねて独特のデジタルアート作品を生み出し、聴衆やその他の人たちが購入できるようにしている。

これは、古くからある「生活苦に悩む芸術家」というイメージを打ち崩すようなアプローチだ。Doc Peaceという芸名でパフォーマンスを行う医師のピース・ウチェ(Peace Uche)氏は、女性のエンパワーメントにインスピレーションを与えることを目指すスポークンワードNFTをリリースした。

「デイビッド・ビアンキが火をつけてくれたので、私は女性のスポークンワードアーティストとして、その灯をつないでいこうとしている」と、ウチェ氏は語った。

このような新しいモデルは、自らの才能を活かす新しい方法を、既存のクリエーターたちが見つけるためだけのものではない。より若手の暗号資産ネイティブ世代の人たちも、新進気鋭のアーティストがかつては想像もできなかったようなお金を生み出しているのだ。

例えば、ダイアナ・シンクレア(Diana Sinclair)氏。若干18歳の著名なビジュアルアーティストだ。

すぐさま成功したからといって、シンクレア氏はうぬぼれたりしてはいない。テキサス州オースティンで先月開催されたSXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)において彼女は、人々が列に並んで座ったり話をして、彼女とセルフィーを撮るというアートプロジェクトを展開した。

私が取材した参加者たちは皆、この若者が持つビジョン、共感力、リーダーとしての意識に感心したと語ってくれた。

進歩的な考えの人たちにとって、NFTエコノミーを行き交う莫大なお金に対して、ネガティブな条件反射的反応をしないようにするのは、難しい。NFT業界は一部において、過剰さや排他性といった気風も生み出してしまったようである。暗号資産トレーダーたちが、猿のイラストのプロフィール画像を自慢し合うことで、世界はどのようによくなると言うのだろうか?と思ってしまうのも当然だ。

私がここで言おうとしているのは、NFTエコノミーが可能とする独立したアーティストのクリエイティビティと、そこから生まれる莫大なお金が支える過剰さを引き離すのは難しいということだ。世界は、お金を持ったパンクな人たちが変えていくだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:NFT Punks With the FU Money

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