弱気相場はどこへ? カナダ最大のブロックチェーンカンファレンス【現地レポート】

先週、カナダのトロントで「ETHToronto」と「Blockchain Futurist Conference」が開催された。数千人の参加者がトロントに集結、弱気相場は吹き飛んでしまったかのようだった。

カナダ最大のブロックチェーンカンファレンスと銘打った3日間のイベントでは、ハッカソン、パネルディスカッション、複数のアクティビティ、アフターパーティなどが行われた。基調講演では、イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏が人気NFT「Bored Ape」をからかうような発言を行った。Cosmos(コスモス)の共同創設者イーサン・バックマン(Ethan Buchman)氏は、相互運用性(インターオペラビリティ)とエコシステムのユースケースを語った。

パーティの雰囲気やトロントの美しい夏の日のせいか、参加者は暗号資産市場は底を打ったと考えているようだった。

もちろん、カンファレンス中にイーサリアム(ETH)が、来月予定されているPoS移行「Merge(マージ)」を前に、6月以来の高値となったことも後押しした。

「長い時間を経て、人々は再びインスパイアされた」と暗号資産インフラプロバイダー、Ankrの最高マーケティング責任者グレッグ・ゴップマン(Greg Gopman)氏は語った。

「ヴィタリック氏が来たからかもしれないし、マージが現実になりつつあるというニュースのためかもしれない。あるいはトロントの完璧な夏の2日間の美しい屋内外の会場のせいかもしれない。しかし、しばらくぶりにいろいろなことが再び強気に感じられた」(ゴップマン氏)

Blockchain Futurist Conferenceの初日、満員の会場(写真:CoinDesk)

カンファレンスの主な議題は、マージとDeFi(分散型金融)だったが、その他にはプライバシーと規制、ブロックチェーンの現実世界での応用、伝統的金融(TradFi)からの関心、新技術、さらに女性のエンパワーメントなどが議論された。

マージとその先

会場にはバーコーナーが並び、サイドイベントにも多くの人が集った。カンファレンスは、マージやその先のイーサリアムブロックチェーンの改善にまつわる興奮で賑やかだった。

ブテリン氏がマージについて楽観的に語った一方で、同じくイーサリアムの共同創設者のアンソニー・ディ・イオリオ(Anthony Di Iorio)氏は、新たな技術プロジェクト「Andiami」について語った。ちなみにブテリン氏はカナダ人で、カナダをイーサリアムブロックチェーン発祥の地と考える人も多い。

アンソニー・ディ・イオリオ氏(写真:CoinDesk)

レイヤー2についても議論された。

「トロントでは、レイヤー2やマージが議論の最前線にのぼり、聴衆はきわめて楽観的だった。さまざまなエコシステムとプロジェクトのコラボレーションを見ることができたのは素晴らしいことだった」とEOS(イオス)財団のコミュニケーション担当バイスプレジデント、ザック・ギャル(Zack Gall)氏は述べた。

レイヤー2ロールアップ・プラットフォームのMetisも、カンファレンス参加者は、特にマージ後のレイヤー2の可能性に夢中になっていたようだと述べた。

Metisの共同創業者ケビン・リウ(Kevin Liu)氏は「多くのプロジェクトについて話をした。Reputation Power on Matrix(MetisのWeb3 IDシステム)について、多くの人と話すことができ、とても興奮している」と述べた。

ブロックチェーン間の相互運用性も大きな話題の1つだった。

相互運用性の重要性を語るCosmosの共同創設者イーサン・バックマン氏(写真:CoinDesk)

「相互運用可能なマルチチェーンエコシステムは、暗号資産とブロックチェーン業界を成長させるうえできわめて重要なものになる」とウェブ3流動性インフラプロバイダー、Swingのヴィヴェック・ヴィヴェカナンセン(Viveik Vivekananthan)CEOは語った。

ヘリ代を暗号資産で決済

カンファレンスでは、ブロックチェーンと暗号資産を実際に使う機会も設けられた。

1000ドル相当のビットコイン(BTC)を獲得するためにバーにぶら下がるデッドハングの時間を競ったり、食事代の決済に暗号資産を使ったり、会場に向かうヘリコプターの代金を暗号資産で支払うなど、参加者は暗号資産を利用するさまざまな機会を楽しんだ。

ETHTorontoの会場に到着間近のヘリコプター(写真:CoinDesk)
1000ドル相当のビットコインを目指してデッドハングに挑戦する参加者(写真:CoinDesk)

TradFi(伝統的金融)の参加者

カンファレンスでは、暗号資産に対するTradFi(伝統的金融)からの関心も非常に顕著だった。

2013年から「ETHToronto」と「Blockchain Futurist Conference」を主催しているUntraceableのトレーシー・レパルロ(Tracy Leparulo)CEOは、以前はTradFiの参加者は暗号資産のカンファレンスに来ていることを「知られたくない」と思っていたが、今年のカンファレンスはまったく逆だったと述べた。

「今年のイベントの最大の参加者は、伝統的資本市場の人たち」で、投資グループや証券取引所の人たちがカンファレンスに参加し、暗号資産業界についての考え方の変化を示していると述べた。

女性のエンパワーメント

カンファレンスには、女性の参加者も多かった。MetisのCEOで、ブロックチェーンでの女性のエンパワーメントを目指すNPO、CryptoChicksのCEOでもある

エレナ・シネルニコワ(Elena Sinelnikova)氏は「Metisは、Untraceable、CryptoChicksとともにこのイベントの開催をサポートできたことを誇りに思っている」と述べた。

レパルロ氏も女性参加者が多かったことに触れ、「あなたがこの業界で働く女性なら、Futuristに来てください。大きな包容力を持つ業界です。私はもうすぐ妊娠8カ月ですが、こうしてやっています。だから、あなたも暗号資産の世界に飛び込んでください。誰でもできます」と述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Blockchain Futurist Conferenceに登壇したブテリン氏(CoinDesk)
|原文:What Bear Market? Canada’s Largest Blockchain Conference Beamed With Bullish Energy