NFTのロイヤリティ支払いは強制できるのか──任意制にしたマーケットプレイスにクリエーターが反発

ロイヤリティ(2次流通での手数料)は、拡大するNFT業界の基礎となっており、アーティストは自分の作品が転売されることから収益を上げ、興行主はNFTチケットの2次市場から収益を獲得し、ミュージシャンは収益性の高いNFTを優先することでストリーミングサービスを破壊できる。

だが問題がある。

ロイヤリティの支払いは、マーケットプレイスでしか強制力を持たず、オンチェーン取引では強制力はない。例えば、オフチェーンで売買に合意した後、買い手は指定されたウォレットにイーサリアム(ETH)を送る。売り手は取引の仲介者としてのマーケットプレイスを必要とせずにNFTを買い手に送る。このプロセスでは、ロイヤリティを支払うことはない。

オープンシー(OpenSea)のようなマーケットプレイスでは、売り手は売買ごとに所定の手数料(ほとんどの場合、購入価格の5〜10%)をプログラムで設定できる。仮にマーケットプレイスが手数料を完全にゼロにしたいと思えば、それを妨げるものは何もない。

まさにそれを実現したのが、人気NFTマーケットプレイス「X2Y2」だ。X2Y2は8月26日、ロイヤリティをすべて任意とし、チップ制のようなものにすると発表した。

NFTGOによると、X2Y2は過去1週間、取引高で最も人気のNFTマーケットプレイスとなっていた。ルックスレア(LooksRare)と同様に、取引のインセンティブとして、買い手に独自トークンを発行。クリエイターが設定するロイヤリティは任意だが、手数料として0.5%を徴収している。

X2Y2の発表は、ツイッターで多くの反発を招き、ロイヤリティをなくすことは、収益性の高い販売手法として早くからNFTを利用したアーティストやクリエイターを傷つけることになるとNFT愛好家は主張した。

NFTのロイヤリティをめぐる議論は、ここ数週間、特に緊迫したものになり、著名なデジタルアーティストたちはツイッターのような公の場でその是非を議論している。最も多い意見は、ロイヤリティを完全になくすことはウェブ3に弊害をもたらすが、オンチェーンでの強制力を持たない以上、おそらく避けられないというものだ。

実はX2Y2は、売り手がクリエイターのロイヤリティを0%に設定することは、業界全体にとって良くないことと認識している。反発を受けて8月27日、X2Y2は1点もののNFT販売では、バイヤーにロイヤリティ設定を義務づけると表明した。また「保有者限定」の投票システムを構築し、特定のコレクションに対するロイヤリティを有効にするか無効にするかをホルダーがグループとして決定できるようにする。

だがX2Y2がロイヤリティ・ポリシーを変更してから数日間、人気NFT「Mutant Ape Yacht Club」の購入者14人のうち、ロイヤリティをユガラボ(Yuga Labs)に支払うことを選択したのは2人だけだった。

重大な結果

ロイヤリティの支払いを回避することが常態化すれば、NFTのクリエイターにとって次のステップは明白。クリエーターは、手数料を取り損ねないように、特定のマーケットプレイスをブラックリスト化し、過去2年間、業界を大きく発展させたオープン・マーケットプレイス競争の時代を終わらせるだろう。

手数料に対する考え方の変化はまた、プロジェクトが収益を上げる方法を変える可能性もある。

NFT市場全体が低迷するなか、ここ数カ月のトレンドは、発行価格を下げ、ロイヤリティを上げることで、プロジェクトチームに最初の発行から一括でフィーを受け取ることではなく、コミュニティとの関係を維持し続けることから収入を得ることを奨励することだった。

そうしたプロジェクトの中で最も有名なものが「Goblintown」。NFTの発行は無料だが、2次販売には10%という高額なロイヤリティが設定されていた。このプロジェクトを手がけるTruth Labsは8月25日、Goblin NFT専用のマーケットプレイスを開設し、2次販売には10%ではなく、5%のロイヤリティを設定すると発表した。

「エコシステムを持つプロジェクトにとって、(専用マーケットプレイスは)間違いなく未来だと思う。相互接続されている複数のコレクションを保有している場合、マーケットプレイス経験は本当に重要なものになる」とTruth Labsの共同創業者アレキサンダー・タウブ(Alexander Taub)氏は語った。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Yuga Labs
|原文:An NFT Marketplace Is Letting Buyers Avoid Royalty Payments. Creators Aren’t Pleased