NFT価格を吊り上げるウォッシュトレードとは【基礎知識】

NFT価格を吊り上げるウォッシュトレードとは【基礎知識】

NFT(ノン・ファンジブル・トークン)市場では2021年、爆発的な成長が見られ、トレーダーたちは、何百億ドルにも相当する暗号資産(仮想通貨)をデジタルコレクションに投資した。

Beepleの「Everydays – The 2020 Collection」などのデジタルアートを求めて、多額の資金が市場に流れ込み、NFTコレクション「Bored Ape Yacht Club」が記録的な値段で売られたことは、NFTプロジェクトの勢いの増加と、NFTに対する需要の高まりを象徴していた。

ブロックチェーンデータ企業チェイナリシス(Chainalysis)によれば、NFT取引はその後落ち着いたが、アクティブなNFTの売り手と買い手の数は、2022年に入っても増加を続けている。

市況によって人気が変化するNFTプロジェクトもあるが、トレーダーの中には、ウォッシュトレード(仮想取引)と呼ばれるプロセスによって、NFTを実際より高価なものに見せようと操作する人たちもいる。

NFTのウォッシュトレードとは?

ウォッシュトレードとは、売り手と買い手が同じ、あるいは両者が共謀している取引だ。伝統的な金融市場では、需要の本当の水準について市場に誤った印象を与え、価格を歪め、他の人たちが偽の情報に基づいて取引することになるため、禁止されている。

アメリカでは、1936年に商品取引法(Commodity Exchange Act)が成立して以来、多くの伝統的市場で違法となっている。

しかし、規制を受けていない暗号資産市場、とりわけNFT市場では、いまだにこのような取引が行われている。チェイナリシスによれば、「NFTのウォッシュトレードは依然として、規制当局による執行行為の対象とはなっていない」のだ。

過去を振り返ると、ウォッシュトレードは取引高を膨らませようと考える暗号資産取引所にとって、問題となってきた。例えば、ビットワイズ・アセット・マネジメント(Bitwise Asset Management)は2019年、取引所で報告されたビットコイン(BTC)取引高全体の最大95%が、偽物であったと主張している。

NFTの場合、個人は複数の暗号資産ウォレットアドレスを設定して、自分自身を相手にNFTを売買することによって、そのNFTが非常に価値があるように見せることができる。

ウォレットアドレス間の取引はブロックチェーン上に保管され、誰でもが見られる。つまり、いつ、いくらでNFTが取引されたのかをすべての人が確認できるのだ。

しかし、ウォレットアドレスには個人を特定できるような情報は含まれず、文字と数字の羅列で表現されるだけ。そのために、取引を行なっているのが誰なのか、2つのアドレスが同一人物によって所有されたものなのかを見極めるのは、非常に困難なのだ。

NFTウォッシュトレードの例

ウォッシュトレードは多くの場合、検知するのが難しいが、市場価格を操作するのに使われたNFT取引の有名な実例も存在する。

2021年10月23日、CryptoPunk 9998が、2つのウォレット間で12万4457イーサ(ETH)で取引された。これは当時、約5億3200万ドルに相当する。この取引は、自動的にCryptoPunkの取引を追跡し、ツイッターで発表するCryptoPunks Botによって検知された。

「CryptoPunks Bot:
0x9b5a5cが0x8e3983から、Punk 9998を124,457.07ETH(532,414,877.01米ドル相当)で購入」

イーサリアム用の情報検索エンジンEtherscanによれば、買い手は複数のフラッシュローンを使って、12万4457ETHを調達。Punkのスマートコントラクトに支払いを行い、それが売り手のウォレットへと送信された。売り手はその後、12万4457ETHを買い手に送り返し、買い手はフラッシュローンを返済。怪しい取引のサインである。

「mariano.eth:
これはすごい。

– 出来るだけフラッシュローンで資金を調達
– 手持ちのPunkに信じられないほどの高値をつけて出品
– 購入する
– 別のアカウントでETHを送り返す
– ローンを返済する

ここで取引を確認できる。

– 0x9b5aが多くの貸し手からフラッシュローンで124,457ETHを調達
– 0x9b5aは124,457ETHをCryptoPunkのスマートコントラクトに送金
– コントラクトから0x8e39に送金
– 0x8e39から0x9b5aに送金
– 0x9b5aはローンを返済

天才的だ。」

最終的にはCryptoPunks側がこの取引は無効になったとツイート。「簡単に言うと、誰かが借りたお金を使って自分からPunkを買って、同じ取引でローンを返済した」と説明した。

「CryptoPunks:
注意喚起:この取引(やその他多数の取引)はバグやエクスプロイト(脆弱性につけ込んだ攻撃)ではなく、フラッシュローンを使って行われている。簡単に言うと、誰かが借りたお金を使って自分からPunkを買って、同じ取引でローンを返済したのだ」

このウォッシュトレードの後、このNFTは25万ETH(約10億ドル相当)の値で市場に再出品された。ちなみにウォッシュトレードの前には、同じCryptoPunkが30万〜40万ドルで取引されていた。

一部のNFTマーケットプレースは、ウォッシュトレードの温床となっているとして批判を受けている。例えば、NFTトラッカーCryptoSlamのまとめたデータによれば、LooksRareの取引の約95%に当たる取引高180億ドル分が、ウォッシュトレードに関連している疑いがある。

NFTウォッシュトレードの見分け方

チェイナリシスは2022年2月、自己資金アドレスと呼ばれる、「売り手側アドレスから資金を受けているか、売り手側アドレスに元々資金を受けていたアドレス」に向けたNFTの売り上げを分析した、NFTウォッシュトレードに関するレポートを発表。

「NFTの売り手の中には、何百件ものウォッシュトレードを実施した人物もいる」と結論づけた。

チェイナリシスによって、自己資金アドレスに25回以上NFTを売却していた262人のユーザーが特定された。このすべてがNFTウォッシュトレーダーだという確証はないとチェイナリシスも認めているが、これらユーザーの保有する110のウォレットで、2021年だけでも合わせて890万ドルもの利益を上げている。

「この890万ドルの利益は、自分が購入しようとしているNFTは価値が高まっているもので、独立したコレクター間で取引されているものだと信じている、疑うことを知らない買い手から引き出されたものである可能性が高い」と、レポートは報告している。

それでも、特定されたNFTウォッシュトレードの大半は、収益性のあるものではなかったと、チェイナリシスは指摘。つまり、イーサリアムブロックチェーン取引にかかったガス代をまかなえるほどの利益が出なかったということだ。

チェイナリシスのレポートでは、イーサまたはラップされたイーサ(wETH)での取引しか分析対象としていないため、ウォッシュトレードによる利益はもっと大きなものであった可能性が高い。

NFT購入に興味を持っている人に対して、注意するべきウォッシュトレードのサインをいくつかまとめてみた。

価格:購入を検討しているNFTが、コレクションの底値よりもはるかに高い場合は、そのNFTがウォッシュトレードされた可能性がある。特に、そのNFTが、高価格を説明するような希少な特徴などを持たない場合はなおさらだ。

取引履歴:EtherscanやBscScanなどのツールを使って、NFTの取引履歴を確認できる。オープンシー(OpenSea)など、出品ページに取引履歴を表示しているマーケットプレースもある。過去に活発に取引されていないのに、NFT価格が突然高騰していれば、ウォッシュトレードのサインかもしれない。

以前の保有者:CryptoPunk 9998の場合のように、取引履歴に複数回登場するウォレットアドレスに注意しよう。同じウォレットが同じNFTを複数回購入している場合、ウォッシュトレードのサインかもしれない。個々のウォレットアドレスをチェックして、NFTの取引履歴に登場する他のウォレットアドレスとの取引があったかどうかを確認することもできる。こちらも、ウォレットの密接な関連を示すサインとなり得る。

身を守る

ウォッシュトレードは、アメリカの伝統的市場のほとんどで違法であるが、ブロックチェーン取引の匿名性から、暗号資産の分野では規制が困難なままである。

NFTトレーダーは、需要が高いという誤った印象を与え、NFTの価値を膨らませるために、ウォッシュトレードを行う。

一般的には、コレクションの底値と出品されたNFTの価格との大幅な開きなど、NFTのウォッシュトレードが行われたことを示唆するサインがある。究極的には、NFTコレクションをしっかりとリサーチし、取引履歴を確認することが、NFT価格が操作されたかどうかを見極めるのには大切である。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Rokas Tenys / Shutterstock.com
|原文:What Is NFT Wash Trading?



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