暗号資産革命の転換期【オピニオン】

暗号資産革命の転換期【オピニオン】

カーロータ・ペリッツ(Carlota Perez)著『Technological Revolutions and Financial Capital(技術革新と金融資本)』をまだ読んでいないのなら、強くお勧めする。タイトルは退屈に聞こえるが、あなたがどの業界の関係者であっても、いくつもの「アハ!体験」を引き起こすことはほぼ間違いなく、美しい文体で書かれた刺激的な本である。

5つの段階

この本の主張の要点は、主要な技術的シフトは、かなり波瀾万丈な形で進展と繁栄の「黄金期」を生み、誕生から衰退までのパターンをたどるというもの。ペリッツ氏はその過程を、5つの部分に分けている。

  • イラプション(Irruption)フェーズは、停滞と混乱を背景に、新しく魅力的なものへの関心が急上昇して始まる。
  • 熱狂フェーズでは、ユースケースの検討が活発になる一方で、金融資本が優位となり、投機が話題の中心となる。
  • ターニングポイントは、熱狂フェーズのバブルが崩壊し、景気後退が引き起こされてやって来る。通常は、規制当局や社会のその他のセクターがより大きく関与するのが特徴である。
  • シナジーフェーズでは、熱狂フェーズの投資と、ターニングポイントでのインフラの進展を活用して、金融資本をより直接的に生産につなげた形で規模の経済を拡大する「配備期間」が始まる。
  • 成熟フェーズは、新しいテクノロジーの限界が摩擦を生み始め、最終的に停滞や混乱につながる衰退期である。

この枠組みで言えば、暗号資産業界は明らかに今、ターニングポイントにある。最近に熱狂フェーズが崩壊したからだけではなく、規制の検討、インフラの構築、新しいエコシステム参加者に重点の置かれた見出しが毎日のように届くことからも、このことは明らかだ。

2018年がターニングポイントだったと主張することもできるかもしれないが、当時はテクノロジーはあまりに未成熟で、世界的な普及はまだまだ浅く、意義のある発展という意味では弱気相場はあまりに「不毛」であった。

2021年に機関投資家やその他のタイプの投資家が参入し、高利回りの暗号資産プロダクトが急速に成長したことで、2017年の新規コイン公開(ICO)ブームの時よりもはるかに広範な投機が引き起こされた。しかしその頃は、暗号資産の配備の大いなる進展は隠されていた。ターニングポイントにおいては、暗号資産の配備の前進が、より積極的にサポートされているのだ。

ターニングポイントに関するペリッツ氏の考察のいくつかは、不気味なほどに的を得ている。(以下は前述の本からの引用)

  • 「ターニングポイントは、資本主義における個人と社会の関心のバランスに関係する。熱狂時の極端な個人主義から、集団的な幸福により多くの関心を向ける方向へと振り子が動いていくのだ」
  • 「この転換は、イデオロギーや主意主義的な理由で起こるのではなく、新しいパラダイムの導入がどのように行われるかの結果として生じる」
  • 「ターニングポイントは(中略)重要な岐路である、多くの場合はシステム全体、とりわけ、成長の再開と技術革命の完全な結実を可能にするような規制の文脈における再編成を含む深刻な景気後退を伴う」
  • 「そうなるとターニングポイントとは、社会的な再考と再検討の場である」

ペリッツ氏は未来を予測しようとしているわけではない、という点が重要だ。1700年代にまで遡り、過去の5つの技術革命(工場生産、蒸気/鉄道、鉄鋼/電気、石油/自動車/大量生産、電気通信)をはっきりとしたパターンにまとめているのだ。

それなのに、さらにこの本が出版された時には暗号資産は存在しなかったにも関わらず、今日までの暗号資産業界の進化の話をしていると言われても違和感はない。

暗号資産業界の今

彼女の指摘するパターンが当てはまるとすれば、現在の段階から、過去の技術革新が生んだような、繁栄の「黄金期」を形作る一連の普及と需要が解き放たれようとしているということだ。そうなれば、さらなる効率性とアクセスだけではなく、新たな社会構造も生まれてくるかもしれない。

著名なマクロ投資家のレイ・ダリオ(Ray Dalio)氏が主張していることとの類似点を見つけるのは難しくはない。それはつまり、私たちの社会システムが不安定になって崩壊し、新しい枠組みが荒廃の中から不死鳥のように生まれてくる余地を残す中、根本的なパラダイムシフトの時に、私たちは近づいているということだ。

ペリッツ氏のリサーチによれば、ターニングポイントは数カ月から数年続く。つまり、「配備の時期」がスタートするまでに、まだまだ時間がかかるかもしれないということだ。しかし、最近の展開のトーンやペースは、移行期が始まっていることを示唆している。

ターニングポイントでは、短期的利益を優先する「金融資本」から、発展により重点を置く「生産資本」へのシフトが始まる。暗号資産においては、生産資本は常にコツコツと動いてきた。

しかし最近では、その目立ち方が変わってきた。記録的な価格や運用資産残高(AUM)の成長を祝う代わりに、舞台裏での働きが明らかとなり、新しい成長の段階のお膳立てが整うに伴って、最近の見出しは、技術的な進展に関するものが主体となっている。

イーサリアムの「Merge(マージ)」がおそらく、最も有名な例だろう。ビットコインのライトニング・ネットワーク(Lightning Network)上で開発を行う多くのプロジェクトもまた別の例だ。

クロスチェーン相互運用性における進展もあり、ゼロ知識ロールアップスケーリングテクノロジーが達成したマイルストーンや、レイヤー1ブロックチェーンのローンチ、新たなタイプのカストディシステムへの資金提供、よく知られた金融機関による暗号資産プロダクトのローンチ、伝統的銀行や投資ファンドによるブロックチェーン基盤の証券発行の検討などもある。

ターニングポイントのもう1つ大きな特徴は、最初の2つのフェーズでは目立って不在であった規制枠組みの設計である。EUの暗号資産ルール(MiCA)の困難を伴う前進や、デジタル資産規制への包括的なアプローチを求めるバイデン大統領による大統領令に対する多くの米政府機関の反応など、今私たちは確かにそれを目の当たりにしている。

ステーブルコインへの世界的関心や、暗号資産トレーディングにまつわる多くの局地的な取り組み、国際協調が違法取引のブロックをより簡単にするという認識も生まれている。

希望の光

これらはなぜ重要なのだろうか?現在の混乱は、より良い時期へ続く道のりの痛みを伴う段階に過ぎないと、私たちを安心させてくれるからだ。私たちは「革命」という言葉の意味を誤解する傾向がある。英語で革命とは、サイクルを一周すること、新しく始めるために、最初に回帰することを意味するのだ。

当記事で説明したサイクルは「最初の状態への回帰」を意味するわけではないが、新しいテクノロジーの進化のあらましを描くパターンを辿っているのは確かだ。こうして私たちは、現在のマクロと暗号資産の混乱を見るために、新鮮な視点を手にすることができる。

現状は厳しく感じられ、多くの人が苦しむかもしれない。そしてそれは、決して喜ばしいことではない。しかし歴史的文脈は、蔓延した不透明感を、安心できる歴史のリズムで彩ってくれる。

さらに前述のパターンは、エコシステムの期待における最近の変化の重要性を認識するのにも役立つ。潤沢な利益とクリエイティブなまでの行き過ぎを伴う、最近までの全盛期が失われたことを嘆くこともできるが、今経験していることは、盛り上がりの中から取捨選別し、実世界への影響に重点を置くための必要な段階なのだ。これは過去にも経験したことであり、歴史のレンズを通してみれば、そこから生まれる結果は良いものだ。

ペリッツ氏の本には、警告とも読み取れるターニングポイントの描写がある。

「収入の分配や全般的な幸福度を改善し、社会的結束の高まりのための仕組みを確立することもできる。あるいは、熱狂フェーズの『利己的な繁栄』を復活させることもできる。それがたとえ、実際の生産や、需要を拡大するための手段を見つけることと、より密接に結びついていたとしてもである」と、ペリッツ氏は指摘しているのだ。

私たちは、前者のシナリオの道を辿っているように見える。テラ(Terra)エコシステム、ヘッジファンドのスリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital)、いくつかの暗号資産レンディング企業の破綻によるダメージは深い傷を残し、規制当局による監視の高まりや自己ガバナンスと組み合わさって、少なくともしばらくの間は、リスクに対する姿勢に影響を与えるだろう。

しかし、インフラ、ガバナンス、パートナーシップに重きが置かれた最近の暗号資産関連の見出しのトーンを考慮すれば、強い確信、幅広い受容、社会の異なる部門の関与の高まりを伴う業界の姿が見えてくる。

楽観的な約束を伴うシナジーフェーズはまだ先のことかもしれない。しかし、私たちは、確かにそこに向かっているのだ。

ノエル・アチェソン(Noelle Acheson)氏は、CoinDeskとジェネシス・トレーディング(Genesis Trading)の元リサーチ責任者。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:The Crypto Revolution’s ‘Turning Point’

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