古臭いデザインに込められた意味──単4乾電池で動く、キーボード搭載ハードウェアウォレット

カナダの暗号資産(仮想通貨)ハードウェアメーカーのCoinkiteは、2000年代に人気を集めた携帯電話「ブラックベリー(BlackBerry)」を思わせるビットコイン・ハードウェアウォレットを開発した。

新デバイス「Coldcard Q1」は、フルキーボード、液晶画面、QRコードスキャナーを搭載。このデザインは、最大限の厳重なセキュリティ対策とユーザーフレンドリーな機能を求める顧客からのフィードバックに対する先進的な考え方を反映しているという。

フルキーボードの搭載は、パスワード、PIN、パスフレーズを入力する際のエラーを防ぐことが目的。背面には単4電池3本が収めるスペースがある。USB-Cを使った電源供給も可能だ。

Coldcard Q1は同社ハードウェアウォレットの5世代目の製品となる。現行の最新モデルは2022年2月にリリースされたColdcard MK4。

Coldcard Q1は、トレザー(Trezor)、レジャー(Ledger)などの大手が独占しているハードウェアウォレット市場に、ライバル製品をリードする最新鋭モデルとして食い込もうとしている。暗号資産取引所に対する不安が生まれているなか、ハードウェアウォレットを求める投資家が増えており、市場全体が拡大しているといえる。

時代に逆行したデザインの意味

Q1の大きくて、時代に逆行したUI(ユーザーインターフェイス)や UX(ユーザーエクスペリエンス)にダメ出しをする人もいるだろうが、Coinkiteは、より小型でスリムなMK4のユーザーから意見を聞いた結果、意図的に時代に逆行したようなデザインを思いついたと述べている。

大きくて、キーボードを搭載した、ポケットに収まらない、山男が持つようデバイスを好む人は思ったより多い。

正確なサイズ、重量、価格はまもなく発表予定(編集部注:日本での取り扱いについては不明)。

「Q1は主に上級者ではないユーザーのために開発した。MK4からのユーザーのフィードバックをもとに、Q1ではすべてをよりUX(ユーザーエクスペリエンス)フレンドリーなものにした」とCoinkiteの事業開発担当者、セリア・シェリフ(Celia Cherif)氏は語った。

拡大するハードウェアウォレット市場

Coinkiteの始まりは2011年、共同創業者のロドルフォ・ノヴァク(Rodolfo Novak)氏とピーター・グレイ(Peter Gray)氏がビットコインのホワイトペーパーを知り、初歩的なビットコイン・ハードウェアウォレットを開発したことに遡る。

その後、2人はCoinkiteを設立、現在はCoinkiteのベストセラー製品となっているMK4をはじめとするハードウェア、ソフトウェアを製造・販売している。

昨年のFTX破綻は、ユーザーが中央集権型取引所からセルフカストディ(自己保管)デバイスに移行することを促した。「Coldcardは予想以上に売れている」とノヴァク氏はツイートしている。ただし、同社は公式な販売データの公表は控えた。

ある暗号資産メディアは、ハードウェアウォレット大手のトレザーとレジャーの2社はFTXが破綻申請を行った2022年11月に大きな顧客シェアを獲得したと伝えた。トレザーは前週比300%増の売上を記録し、レジャーは同社製ウォレット管理ソフトウェアのLedger Liveのアカウント開設が6倍に増加したという。

ノヴァク氏は「ビットコイナーはビットコインに固執し、多くの人が取引所から手を引いている。これまで、これほど活発な動きは見たことがない」とツイートしている。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Coinkite
|原文:Coinkite’s New Bitcoin Hardware Wallet Looks Like BlackBerry, Takes AAA Batteries