FTX崩壊で再注目される暗号資産の保管方法【コラム】

FTX崩壊で再注目される暗号資産の保管方法【コラム】

ここ数週間は、暗号資産市場の歴史の中でも最も波瀾万丈なものとなった。サム・バンクマン-フリード氏が創業し、かつては信頼されていた暗号資産取引所FTX(とその関連会社)が支払い能力を失い、破産申請を行ったのだ。

過去にも複数の暗号資産取引所が破産に陥り、多くの人が取引所に預けていた資産を失った。残念ながら暗号資産の世界では、取引所の破産は珍しいことではないが、FTXのずさんな資産管理の規模はこれまでに前例がない。

今回の事態によって、伝統的金融の世界にいる多くの人たちが暗号資産の未来に対する信用を失い、暗号資産価格には大きな下方圧力がかかり、多くの人が暗号資産市場のさらなる規制を求めている。

破産や莫大な損失は、詐欺や顧客資産の不適切な管理、経営者の無能さを原因とするもので、ソフトウェアやブロックチェーンそのものが悪いわけではない。このことを理解することは、暗号資産投資家にとっては大切だ。企業の不手際からの影響が続く中、暗号資産への投資を続ける場合のベストプラクティスをしっかり理解することも、同様に大切である。

セルフカストディ

暗号資産の世界では、「自分の鍵でなければ、自分のコインではない」という有名なフレーズがある。暗号資産は無記名資産。つまり、暗号資産ウォレットの秘密鍵をコントロールする人物や組織が、そのウォレットに保管されているコインを保有するということだ。

対照的に、取引所や第三者で資産をカストディする場合には、自分の資産への秘密鍵をその第三者が適切に保管してくれることを信じて託すのである。残念ながら多くの取引所は、秘密鍵をしっかり保護しなかったり、犯罪者が資産を盗む隙を与えたり、自分達のために顧客資産を露骨に悪用したりと、顧客資産を不適切に取り扱ってきた。

暗号資産を保管する最も安全な方法は、自らがコントロールするウォレットに入れることだ。これには、Ledgerなどのハードウェアウォレット、ペーパーウォレット、ソフトウェアウォレットが利用できる。これは資産の「セルフカストディ」と呼ばれる手法だ。

ユーザーが秘密鍵を他の人に教えない限り、秘密鍵へのアクセスなしで資産を盗んだり、悪用することは誰にもできない。暗号資産が利用する暗号技術の基盤は、ハッキングがほぼ不可能であり、プライベートウォレットに保管されている資産の安全性は非常に高い。

しかし、多くの投資家にとっては、複雑性が加わることになる。暗号資産保管にセルフカストディを採用する場合、ある程度の技術的知識が必要となるからだ。究極の安全性を求める場合、その方法を学ぶ価値はある。

規制を受けたカストディアンと取引所

すべての暗号資産取引所が、同じ基準に従っているわけではない。それでも、多くの取引所は、顧客資産の保護のレベルを最高水準に保っている。コインベースやジェミニなどの取引所は厳格な規制に従っており、顧客の資産を許可なく混ぜ合わせることは禁じられている。

監査済みの財務情報を公表し、顧客の資産を1対1で保有していることを証明する取引所もある。そのような取引所は多くの場合、自らの支払い能力を証明する「プルーフ・オブ・リザーブ」を含むレポートを公表している。

つまり、これらの取引所はすべての顧客資産を安全なウォレットに保管し、顧客は自由にその資産を引き出すことができるのだ。そのような取引所やカストディアンは、顧客の資産を会社の資産と混ぜ合わせたり、自社の投資やマーケットメイキングに顧客資産を使うこともない。

多くのオフショア取引所に比べれば、セキュリティの面である程度マシではあるが、取引所が顧客の暗号資産の秘密鍵を保有し、それをコントロールできることに変わりはない。ユーザーが第三者に暗号資産を保管してもらうことを選ぶ場合、自らのコインの秘密鍵を適切かつ安全に保管してくれると、その第三者を信頼することになるのだ。

規制を受けたカストディアンや取引所を利用することは、セルフカストディよりは簡単だが、安全性は劣る。多くの取引所は、顧客資産を守ることにおいて申し分のない実績を誇っており、これまでのところは信頼できることが証明されている。カストディを外部に委託する場合、その第三者を信頼して資産の保管を任せているということを覚えておくべきだろう。

CeFiとDeFi

セルシウス・ネットワーク(Clesius Network)やボイジャー・デジタル(Voyager Digital)など、多くの「暗号資産銀行」が今年、破産を申請した。

これらの暗号資産銀行は、ユーザーがその企業に暗号資産を預け入れ、その資産に対して利回りを獲得できるサービスを提供していた。銀行のように、顧客資産を借り手(その多くはヘッジファンドや機関投資家)に貸し付けて、貸し付けの利子を預金者へと還元するのだ。

このような中央集権型金融(CeFi)企業は、銀行のようには規制を受けておらず、残念なことに、その貸付基準や慣行は適切なものではなかった。2022年夏に始まった暗号資産の急落によって、これら多くのCeFi企業はレバレッジ過多となり、最終的には顧客の資産を失うこととなった。CeFi企業は政府の保証を受けておらず、破産すれば、顧客の資産は完全に失われる可能性が高い。

CeFi企業が破綻した一方、多くの大手分散型金融(DeFi)プロトコルはいまだにしっかりと運用されており、意図された通りに機能を続けている。ただし、DeFiプロトコルを利用することは、CeFiプラットフォームを利用するよりも複雑だ。

DeFiは投資家に対して第三者を信頼する必要なく、自らの暗号資産に対して利回りを獲得するチャンスを提供する。ただし、多くのDeFiプロトコルはそれでもリスクが高いと考えられており、利用する前に適切な理解が必要である。

暗号資産の世界にいる人間にとって、ここ数週間は厳しいものであったが、これらの詐欺や悲劇は、人間や企業の失態が原因であり、暗号資産を支えるテクノロジーの不手際ではないことを理解することが大切だ。

ビットコインやイーサリアムなどのブロックチェーンはいまでもしっかりと機能しており、安全で、これらのテクノロジーが提供する将来的なディスラプション(創造的破壊)を信じる人たちにチャンスをもたらしている。

カストディを外部に任せる場合のリスクを理解することや、セルフカストディの方法を学ぶこと、そしてDeFiプロトコルと直接やり取りする方法を知ることは、自らの暗号資産を守るために、すべての暗号資産投資家にとって重要である。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto Self-Custodying Offers Protection Amid FTX Exchange Fallout

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