米国債や社債のトークン化を狙うスタートアップ企業

3月の銀行危機によって、暗号資産関連企業は従来の銀行にアクセスすることが難しくなり、余剰資金の預け先を確保するという企業にとって当たり前かつ重要な業務に支障が生じた。

この状況は、ある著名スタートアップ企業にとって、暗号資産分野に現金相当の金融商品を導入することで、社債市場のデジタル化を図るという同社の大きな野望の第一歩となる「トロイの木馬」のようなチャンスとなった。

米国債をトークン化

スタートアップ企業「PV01」は、社名が債券の専門用語に由来し、巨大暗号資産市場メーカーのB2C2の設立にも関わったマックス・ボーネン(Max Boonen)氏が共同設立。最初のプロダクトは、米国債1カ月物をトークン化したものだ。

米国債は世界で最も安全な資産の1つであり、投資家はこれをドルと同等に扱っている。トークン化された米国債は今、暗号資産関連企業が切望しているものだ。

「これはキャッシュ・マネジメント商品」「我々の最終目標ではないが、需要は高い」とロンドンのゴールドマン・サックスで金利トレーダーとして働いていたボーネン氏は、最近のインタビューで語っている。

さらに「我々は、暗号資産の世界と従来の金融システムの間でお金を行き来させることが困難ないずれかの、おそらく多くの暗号資産関連企業をターゲットにしている。また多くの暗号資産を保有し、従来の金融システムに単に戻すことができないか、あるいは戻したくない人もターゲット。この2つはきわめて大きなセグメントだ」と続けた。

ターゲットは社債

だがPV01は最終的に、企業がブロックチェーン上で債券を発行するようになることを夢見ている。米国債を購入し、トークン化した最初の取り組みはPoC(概念実証)のようなもの。PV01の長期的なターゲットは企業だ。

「話は2年前に遡る。私は株式トークンのように、ブロックチェーン上で債券を発行すべきだと考えた」とボーネン氏。B2C2は「融資において、ジェネシス(Genesis)に次ぐプレーヤーであり、プライベートな2社間の取引がそのポジションを牽引していることに違和感を覚えた」。

そして、ヘッジファンドのスリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital)の破綻が一因となった昨年の信用収縮は「誰が、どのような負債を負っているか、誰もわからないという事実によって一層深刻化した」。オンチェーン債権はそうした問題を解決できる。

最近では、ブロックチェーンベースの融資プロトコルであるMaple Financeが米国債1カ月物へのアクセスも可能な資金管理商品を発表した。またOndo Financeはマネーマーケット・ファンド(MMF)に裏付けられたステーブルコインを発表し、同様の領域を開拓している。

米国債1カ月物の魅力は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げによって、利回りが約3.5%まで大幅に上昇したことだ。「金利が0%の時は、何もしないことは簡単だった。ステーブルコインに変え、待つだけだった」とボーネン氏。PV01のトークン化債権なら、顧客は高金利のメリットを享受できる。

「国債を購入するには、ドルが必要。しかし、もしステーブルコインが使えるなら、取引レイヤーを1つ省くことができる」(ボーネン氏)

米国債を扱っているにもかかわらず、PV01は暗号資産への規制と監視が厳しくなっているアメリカで、すぐに営業を始めるわけではない。

「我々は、我々の手法が合法であると明確にできた時にのみ、我々の製品をアメリカで広く提供するつもり。できなければ、提供しない」

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:CoinDesk
|原文:Crypto Trading Legend’s Next Move Is Bringing U.S. Treasurys to Blockchains, With Plans for Corporate Bonds, Too