トークンだけでなく「トークン化」に注力を──新たなアメリカンドリームに【コラム】

今年、アメリカの議員の多くは、暗号資産(仮想通貨)に注視するだろう。例えば、破綻した暗号資産取引所FTXの取引所トークン「FTT」などだ。悪用を防ぎ、イノベーションにスポットライトを浴びせるために、トークンエコノミーにおける監視の役割に疑問はない。

適切な監視が行われるなら、次は暗号資産(トークン)だけでなく、トークン化(トークナイゼーション)にも同等のエネルギーを注ぐべきだ。トークン化は経済、すべてのアメリカ市民、そして世界中の人たちにパラダイムシフトをもたらす可能性を秘めている。

実世界の資産のトークン化、つまり実体を持つ資産を暗号化技術を使って表現するプロセスはすでに実施されているが、アメリカの政治シーンではほとんど話題にのぼらない。だがトークン化は今後、経済やアメリカの中流階級の人たち、そして社会の底辺に置かれた人たちの暮らしに最も大きなインパクトを与えるかもしれないイノベーションだ。

アメリカ政界、特に民主党が、なぜこのチャンスを積極的に捉えるべきかを理解するには、アメリカにおける民主党の最近の歴史を理解することが重要だ。

共和党の火消しに追われる

私はオバマ政権の当初、グレート・リセッション(世界的な金融不況)の時に米議会の職員を務め、バイデン政権では新型コロナウイルス感染拡大やその後の経済危機がアメリカを襲った頃に財務省に務めていた。2009年から2022年にかけて、アメリカでは多くの変化があったが、変わらなかったことの1つは民主党議員と民主党政権が共和党政権下で発生した危機に対処することに果たした役割だ。

民主党議員の間には、自分たちの政治資本が、自分たちが起こしたのではない火事を消すことに使われているという、拭えない苛立ちの気持ちがブラックユーモアで表現されてきた。火消しが終わる頃には、民主党はアメリカ経済を災害から救っているが、アメリカ市民の状況を根本的に変えるような、経済の構造的変化を実現できていない。

1980年代から現在に至るまで、民主党を動かしてきたモチベーションは、労働階級に生まれた人たちが努力と政府からの適切な支援によって、自らの置かれた状況を改善できるような経済を生み出すことだった。

そうしたビジョンを現実にすることは、特に経済が危機に直面している時には難しい。バイデン政権が終わる頃までにインフレ抑制法(Inflation Reduction Act)は、そのきっかけになったと考えられるようになっているかもしれない。

しかし、何兆ドルもの非流動資産(不動産など)をトークン化するというチャンスは、民主党議員が長年探し求めた特効薬となるかもしれない。さらに、自由市場の原理を通じて経済的メリットを実現したい保守派の心にも訴えることができるかもしれない。

非流動資産のトークン化

今、アメリカの議員や政府関係者は、何百万もの人々のために輝かしいアメリカンドリームを解き放つ、オルタナティブ資産などへの投資の革命に注力するチャンスを得た。

オルタナティブ資産:伝統的な投資対象である株式や債券以外の資産。具体的には、不動産、インフラ、農産物、未公開株、先物、オプションなどがあり、従来は流動性が低いが、その代わりに利回りが高いとされてきた。オルタナティブ資産のトークン化は、流動性を高めるとして期待されている。

世代を超えて受け継がれる富は多くの場合、不動産などの非流動資産(固定資産)によって生み出される。

確定拠出年金などの貯蓄手段を通じた株式市場へのアクセスが、多くの一般的なアメリカ人の家計にかなりの、プラスの影響を与えてきたことは間違いない。そして、長期的な富の創造は、非流動性のオルタナティブ資産への投資を通じて拡大できることも確かだ。

市場参加者と政治家が非流動資産のトークン化をサポートし、それらにアメリカ市民が投資できる方法を生み出したらどうなるだろう?

突如として、生涯の労働を通じて得られる利益を増大させることができるようになる。

さらに、ブロックチェーン技術を使ったトークン化は、他では存在しないような水準の透明性とリスク軽減を個人投資家にもたらす。例えば、魅力的な非流動資産のためのオンチェーントークンを保有する労働者を想像してみよう。

大規模なトークン化のため、個人が負担するコストはごくわずか。そして、本来なら多額の資金が必要となるような価値ある資産の一部を保有することが可能になる。

アメリカンドリーム

政治家が検討するべき、オルタナティブ資産への投資やトークン化に伴うリスクも確かに存在する。オルタナティブ資産はトークン化されていても、個人投資家にとっては下落リスクを伴う。

市場参加者は、オルタナティブ資産投資は単に消費者を大きな損失リスクにさらしつつ、企業が利益をあげるための手段に過ぎないと考える政治家や規制当局からの懐疑心に直面するだろう。金融危機の後には、政治家や規制当局は、企業が損失を社会に転嫁し、利益のみを手にするという深い懸念を抱えている。

政治家、特に民主党議員が今年、個々のトークン=暗号資産と同じくらいトークン化にも重点を置くとしたら、10年後には、今よりも公平な経済が生まれているかもしれない。

アメリカンドリームは、自分に向けて言い聞かせるストーリーではなく、あらゆる人のための確かなチャンスとなる。

ジョン・リッゾ(John Rizzo)氏:ワシントンDCにあるPR・マーケティング企業クライド・グループ(Clyde Group)の広報担当シニア・バイスプレジデント。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Zachary Keimig/Unsplash
|原文:Policymakers Need to Focus on Tokenization, Not Just Tokens