トークン化米国債の需要が急増──暗号資産投資家がTradFiの利回りに注目

伝統的金融市場で利回りが上昇し、暗号資産投資家からの資金を集めている。特にトークン化された米国債に対する需要が急増している。

CoinDeskがまとめたデータによると、例えば、トークン化されたマネー・マーケット・ファンド(MMF)の時価総額は5億ドル(約680億円、1ドル135円換算)に迫り、年初から4倍にのぼっている。

MMFは、短期国債を中心とした伝統的な投資商品で、比較的安全に利回りを獲得できる。銀行危機によって銀行に対する信頼性が薄れたことと、銀行預金よりも有利な4~5%の利回りとなっていることから、広くMMFに人気が集まっている。

一般投資家だけでなく、暗号資産投資家も米国債に注目している。そのため、多くのプラットフォームが、国債をトークン化し、ブロックチェーン上で提供する方法を考え出している。

この分野のパイオニアで最大手フランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)のFranklin OnChain U.S. Government Money Fund(FOBXX)は、残高が4月末時点で2億7600万ドル。1月上旬のほぼ3倍となっている。

ライバルも急速に追い上げている。Dune Analyticsによると、Ondo FinanceのOUSGとMatrixdockのSBTBは、1月に募集を開始、短期国債を裏付けとするトークン化商品で、それぞれ1億3200万ドル、7200万ドルを集めている。

最近参入した企業もかなりの資金を集めている。スイスに拠点を置くBacked Assetのトークン化された短期国債ファンド(bIB01)は、Etherscanによると、3月の発売開始から現在までで運用資産残高は460万ドルとなっている。

シンガポールを拠点とするOpenEdenは、Duneのデータによると、2カ月で480万ドルを集めている。

トークン化の波

国債のようなReal World Asset(RWA:現実資産)のトークン化は、2023年の暗号資産の最もホットなトレンドとして浮上している。米銀最大手のJPモルガン・チェースは「ブロックチェーンのキラーアプリ」と呼び、バンク・オブ・アメリカは暗号資産普及の「重要な推進力」と述べた。

トークン化されたMMFは、特にステーブルコインを大量に保有する人たちの間で需要が高まっている。具体的には、暗号資産投資ファンド、暗号資産企業、分散型自律組織(DAO)などが含まれると、OpenEdenの共同創業者Eugene Ng(ユージン・ン)は語っている。

こうした大口投資家は、オンチェーンのキャッシュ・マネジメントに関して、ますます洗練されたアプローチをとっていると、Ondo Financeの社長兼最高執行責任者(COO)ジャスティン・シュミット(Justin Schmidt)氏は指摘する。

「トークン形式で、有意義な利回りを得られる低リスク資産は、最高財務責任者(CFO)が財務業務を成功に導くための貴重な選択肢として機能し得る」

既存の金融機関が、伝統的金融とブロックチェーン技術を融合させて、この分野に参入している事実も成長を促進していると、機関投資家向けのリサーチと暗号資産データを提供するDigital Asset Researchの最高経営責任者(CEO)ダグ・シュウェンク(Doug Schwenk)氏は述べた。

「フランクリン・テンプルトンやOndo Financeのような大手は、懐疑的に見られがちな資産に信頼をもたらしている」

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Unsplash, Modified by CoinDesk
|原文:Demand for Tokenized Treasury Bonds Soars as Crypto Investors Chase TradFi Yield