エネルギーを脅かすビットコインこそ、エネルギー問題を解決できる【コラム】

ビットコインに対する立場に関係なく、確かなことが1つある。すなわち、ビットコインは金融業界のみならず、複数の業界が現状を打破することを可能にするイノベーションを生み出している。ヘルスケアからエネルギーまで、ビットコイン業界から生まれてくるイノベーションとアイデアは、社会を支える重要な柱をより良いものに変えていく。

しかし、温室効果ガスの問題がある……。エネルギー負荷の高いビットコインマイニングは、環境にネガティブな影響を及ぼすという話を私たちは散々聞かされている。その主張のほとんどは、ある1つのレポートを根拠としている。

逆にほとんど話題になっていないのは、ビットコインマイニングの環境負荷はそのエネルギー消費によるものであり、既存のエネルギーミックス(電源構成)を直接的に反映していること。ビットコインマイニング企業は、他の業界と同じ電力網に接続しており、製造業はアメリカの業界のなかでエネルギー消費の81%を占め、そのうち化学メーカーが37%を占めていることだ。

だが、政治家が化学メーカーのエネルギー消費についてツイートすることを見た覚えがあるだろうか?

ピンチをチャンスに

エネルギーを大量に消費し、安価な電力を望むビットコインの特徴は、イノベーションのチャンスということを私たちはしっかり認識すべきだ。

ビットコインは、現代の最も切迫した課題である「気候変動」の解決策をもたらしてくれる。ビットコインを禁止したり、課税という圧力で消滅させようとしても、エネルギーミックスと電力網の安定性についてアメリカが抱える問題は解決しない。逆にビットコインやビットコインマイニングをサポートすることは解決策となるかもしれない。

ビットコインマイニング業界が膨大なエネルギーを必要とすることこそ、再生可能エネルギー革命でアメリカが先頭に立ち、送電網をアップグレードするために必要だ。米政府はインフレ抑制法(Inflation Reduction Act:IRA)によって供給の問題を安定的に解決したが、需要の問題はまだ解決していない。

再生可能エネルギーの供給は断続的であり、送電は限られており、既存のエネルギー源はフレキシブルに供給量を調整できるように作られていない。マイニングという形で、納税者へのコストなしに調整可能な電力需要がすでに登場しているのに、化石燃料ベースの出力調整可能なエネルギーを支えることに何百億ドルもの資金を使うのは間違っているように思える。

簡潔に言って、脱炭素化のゴールを達成するために再生可能エネルギーだけに頼ることはできない。さらに既存の電力網を改善したり、そのインフラを支えることなく、そのまま安定した状態であるよう漠然と期待することもできない。

電力の需要と供給を調整

そこで、ビットコインの登場だ。

ビットコインマイニングでは、多額の資金と絶大な努力が、電力との新しい関わり方、新しい金融テクノロジー、相互につながる新しい方法、電力網とシームレスにやり取りをするための新しいソフトウェアを開発することに注がれている。ビットコインマイニング業界は、安価な電力にアクセスすることに注力し、電力の需要と供給と密接に連携して動くことに対して金銭的インセンティブを抱えた、クリエイティブで戦略的な人たちであふれている。

ビットコイン業界関係者の一部は、電力消費のパラダイムを覆す方法を見つけ出している。私がCEOを務める、高性能コンピューティング施設を手がけるアスペン・クリーク・デジタル・コーポレーション(Aspen Creek Digital Corporation:ACDC)は、マイニングの膨大なエネルギー需要を太陽光、風力、蓄電池などの新しい再生可能エネルギー資産を支えるために使っている。

ACDCは今後3年間に、3ギガワットの太陽光発電エネルギー設備の整備をサポートする予定だ。これは家庭600万戸相当の消費電力に相当する。ACDCの施設はニーズをはるかに超える再生可能エネルギーで賄われており、余剰の新しくクリーンな電力を送電網に送ることができる。ACDCのテキサス州にある施設の場合、太陽光で発電した電力87メガワットのうち、30メガワットしか消費しない。残りはヒューストンに送られる。

ACDCの施設は、送電網にとって巨大なバッテリーのような役割を果たし、需要が少ないときには電力を多く消費し、嵐や熱波のときなど、家庭やコミュニティが電力を必要とするときには電力を供給する。テキサス州に冬の嵐が襲ったとき、電力消費を抑えることで、ACDCはこのコンセプトの有効性を証明してみせた。さらにヒューストンの送電網に太陽光発電の電力を送り、休暇を楽しむ1万戸ほどの家庭に電力を供給した。

共通の敵は“現状”

アメリカの老朽化した送電網は、アメリカがエネルギーの目標を達成することを妨げている。出力抑制、フレキシブルな電力需要、発電と電力消費の関係見直しなどの問題は、注目度も解決の必要性も増していくばかりだろう。再生可能エネルギーや、気候変動問題の解決に貢献するようなブレークスルーを完全に解き放つイノベーションを活用する必要がある。そして目の前にすでに存在するビットコインは、解決策としての有効性がすでに証明されている。

気候変動関連のテクノロジーから金融政策に至るまで、あらゆるイノベーションが私たちを現状から、本来あるべき状況へと連れて行ってくれるだろう。イノベーションや成長はさまざまな形をとり、現状に挑戦状を突きつけ、ディスラプトする。共通の敵ほど、人々を結束させるために有効なものはない。敵は現状だという点で、私たちは皆、合意できるかもしれない。

アレクサンドラ・ダコスタ(Alexandra DaCosta)氏:高性能コンピューティング施設を手がけるアスペン・クリーク・デジタル・コーポレーション(Aspen Creek Digital Corporation:ACDC)のCEO。ACDCに加わる前には、ウォール街で15年にわたって活躍した経歴を持ち、直近ではグローバル金融グループ、キャンターフィッツジェラルド(Cantor Fitzgerald)でESGとインパクト投資の責任者を務めていた。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Is a Threat to the Energy-Use Status Quo – and That’s a Good Thing