XRPが元SEC職員のメール公開で上昇、市場の流動性が急速に悪化【Weekly Review:6/10~6/16】

SECによる提訴の影響が当面、ページを賑わすだろうと思っていたら、突然、XRPの話題が浮上。法廷でのやりとりは、海外ドラマさながらに行われているのでしょうか──今週も1週間の主なニュースをテーマ別に振り返ります。まずは「XRP」からです。

XRP:「ヒルマン文書」公開で注目

ほとんどの人には突然に思えただろうが、今週はXRPが注目を集めた。SEC vs リップルの裁判で新しい資料──2018年、SECで当時要職にあった人物が「イーサリアムは証券とは思えない」とスピーチした際にSEC内部でやりとりされたメールなどだ。

SECで要職にあった人物がイーサリアムは証券ではないと考えていた→ならばXRPも証券にあたらない、というストレートな反論をリップル側が狙ったわけではなく、どうやら「内部で見解が割れているような組織は、規制組織として適切なのか?」と揺さぶりをかけ、裁判を有利に進めることが狙いのようだ。

XRP、元SECディレクターのメール公表で一時上昇

エックス・アール・ピーは日本時間13日夜、24時間で7.4%上昇し、下落傾向の暗号資産市場に逆行した。トレーダーが現在進行中の米証券取引委員会(SEC)との訴訟は、リップルラボ(Ripple Labs)に有利な結果になると考えたからだ。

2018年にイーサリアムは証券とは思えないと述べたヒンマン氏、SEC内部からさまざまな意見が寄せられていた

2018年、米証券取引委員会(SEC)の企業財務部を率いていたウィリアム・ヒンマン(William Hinman)氏は当時、イーサリアムを「規制する必要性を…見出さない」と言いたかったようだ。

6月13日、リップルラボ(Ripple Labs)は未登録証券を違法に販売してきたとするSECの訴えをめぐる裁判で、イーサリアムは証券とは思えないと述べた同氏のスピーチに関連したメールが弁護資料として公開された。

XRP、8%下落──ヒンマン文書での上昇分失う

エックス・アール・ピーは14日、24時間で約8%下落し、主要暗号資産の中でも最も大きな下落となった。

裁判とは違う話が、リップル関連ではこんなニュースもあった。

カナダ最大のトロント大学がリップルと提携、XRPバリデーターに

学生数でカナダ最大のトロント大学は、次世代の暗号資産(仮想通貨)業界の支援を目指し、リップル(Ripple)社とのパートナーシップを締結。主に決済処理を行う独立したXRP Ledgerのバリデーターになることを計画している。

SEC提訴の余波:アルトコインに打撃

先週初めにSECが立て続けにバイナンスとコインベースを提訴し、複数の暗号資産を「証券」と見なしたことの余波が市場を揺さぶった。特に証券と名指しされたアルトコインが大きく下落した。

一方でこの状況をヨーロッパはチャンスと捉えている。

SECのバイナンス、コインベース提訴は「ヨーロッパのチャンス」:EU当局者

Web2の世界で圧倒的な影響力を持つインターネット大手企業には、EUを本拠地にしている企業はほとんどない。しかしEU内には、他の地域よりも先に規制を整備して、市場の反応を見るアプローチをヨーロッパが採用することで、優位に立つことができるのではないかとの意見もある。

ソラナ、カルダノ、ポリゴンが一時20%以上下落

暗号資産取引所バイナンス(Binance)とコインベース(Coinbase)に対する米証券取引委員会(SEC)の提訴において、13の暗号資産が証券と見なされてから数日、いくつかは24時間で20%以上下落した。

数百万ポリゴン(MATIC)、大幅下落に先立ちバイナンスとコインベースに送られる:データ

数百万ポリゴンが30%近い下落に先立ち、6月9日夜(米東部時間)に大手マーケットメーカーのジャンプ・トレーディング(Jump Trading)とカンバーランド(Cumberland)から暗号資産(仮想通貨)取引所に入金された可能性が高いことがブロックチェーンデータで判明した。

バイナンス、バイナンスUS、コインベースは4日間で40億ドルの純流出

米証券取引委員会(SEC)が大手暗号資産(暗号資産)取引所のバイナンス(Binance)とバイナンスUS、コインベース(Coinbase)を提訴したことで6月5日から8日かけての4日間で、この3つの取引所からの純流出は約40億ドル(5600億円、1ドル140円換算)にのぼった。

バイナンスコイン先物の建玉が年初来最高に──市場にショートが流入か

Coinglassのデータによると、バイナンスコインのオープンインタレスト(BNBに結びついた未決済およびアクティブな先物契約の数)は上昇を続けている。

総建玉数は6月12日に157万BNB(3億6000万ドル、約501億円)に上昇し、年初以来最高になった。この数字は過去24時間で8%以上、1週間で27%近くも増加している。

暗号資産市場の流動性が急速に悪化──価格変動が大きくなる可能性

暗号資産(仮想通貨)市場の流動性を追跡する重要な指標は週末に急落し、価格変動を増幅させる可能性のあるごくわずかな注文を残すだけになった。

暗号資産調査会社Hyblock Capitalのグローバルビッド&アスク指標は、世界中で上場されている1100以上のコインのビッド&アスク注文のドル額を集約したもので、6月10日にスポット市場全体で20%下落した。

バイナンスUSの流動性、76%低下

Kaikoのレポートによると、SECによる提訴からわずか1週間で、流動性──バイナンスUSに上場している17の暗号資産(仮想通貨)のマーケットデプスの合計──は、76%低下した。

eToro、米ユーザー向けに4つの暗号資産の上場廃止を決定

eToroは6月12日、7月12日からアメリカの顧客はアルゴランド(ALGO)、ディセントラランド(MANA)、ダッシュ(DASH)、ポリゴン(MATIC)で新しいポジションを持つことができなくなると発表した。

暗号資産を数十年前の法律で規制するのはブロックチェーンの目的の妨げ:バーンスタイン

ビットコイン以外のすべてのトークンが証券であるという見解は、「ブロックチェーン・ネットワークが時間をかけて分散化を達成し、トークンがネットワーク内で機能的な有用性を持つ」ための余地を残さないと、ゴータム・チュガニ(Gautam Chhugani)氏率いるアナリストは述べている。

ビットコイン:ETFがとうとう実現?

SECが「証券」と見なしたコインにビットコインが含まれていなかったことで、ビットコインは存在感を高めているようだ。事実、ドミナンスは上昇している。いくつの申請がSECによって拒否されてきた「ビットコインETF」がとうとう実現するかもしれない。

ビットコインのドミナンス、上昇──アルトコイン下落のなか、2021年4月以来となる50%に近づく

ビットコインのドミナンス(暗号資産市場の時価総額全体におけるシェア)は6月10日未明に上昇し、2021年4月以来となる50%に近づいた(データサイトのTradingViewによる)。

ビットコイン、イーサリアム、ステーブルコインが暗号資産の時価総額の80%を占める──投資家はアルトコインから逃避

ビットコイン、イーサリアム、ステーブルコインのドミナンス(暗号資産市場全体の時価総額に対するシェア)が2021年2月以来の高水準に急上昇した。SECによる2大取引所提訴の後、投資家がアルトコインから逃げ出しているためだ。

アナリストは「タカ派的な利上げ休止」を予想──ビットコインは弱気に傾く

ビットコイントレーダーは、6月14日(日本時間15日)のアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の会合を前に守りの姿勢をとっている。FRBは金利を据え置く一方で、一部のオブザーバーが「タカ派的休止」と表現した動きで将来の引き上げの可能性を保持しておくと見られている。

取引所のビットコイン供給量、2018年2月以来の低水準に

暗号資産(仮想通貨)取引所でのビットコイン供給量が2018年2月以来の最低水準に落ち込んでいることが、ブロックチェーンデータ企業サンティメント(Santiment)のデータで明らかになった。

世界最大の資産運用会社ブラックロック、ビットコインETF申請──ビットコインは2万5700ドル付近まで反発

世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)が提供しているETF(上場投資信託)ブランドのiシェアーズ(iShares)が6月15日、米証券取引委員会(SEC)にスポット(現物)のビットコインをベースにしたETF組成に関する書類を提出した。

ビットコインの半減期、前例は判断基準にならない:コインベース

2024年第2四半期に予想される次のビットコインの半減が、この暗号資産(仮想通貨)のパフォーマンスにプラスの影響を与える可能性はあるが、それは予断を許さないとコインベース(Coinbase)は6月14日の報告書で述べている。

イーサリアム:着実に進化

イーサリアムも、SECが「証券」と名指ししたコインに含まれていなかった。2022年9月の「マージ(PoS移行)」を経て、新たなフェーズを突き進んでいる。

ブテリン氏、イーサリアムのロードマップを提示──スケーリング、ウォレット・セキュリティ、プライバシーに注力

イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は、今後数年間のイーサリアムの新しいロードマップを提示、レイヤー2スケーリング、ウォレットのセキュリティ、プライバシーといった重要な目標を協調して推進すべきと述べた。

今週は2つ…

今週も最後に個人的に気になった記事を。今回は1つではなく、2つ。どちらも香港での動きです。「日本は世界から注目を集めている」と言われますが、香港の動きは早く、ダイナミック。

香港金融管理局、リテールCBDCの基盤づくりに着手

香港金融管理局(Hong Kong Monetary Authority :HKMA)は、リテールCBDC(中央銀行デジタル通貨)を実装するための基盤づくりに着手する。同局が6月10日に発表したレポートで明らかにした。

中国銀行の子会社、香港でセキュリティトークン(デジタル証券)発行──UBSが組成と引受

中国銀行(中国4大商業銀行の1つ)の子会社で投資銀行の中銀国際(BOCI)は、香港でイーサリアムブロックチェーンでトークン化された証券、いわゆるセキュリティトークン(デジタル証券)を発行した。6月12日、スイス金融大手のUBSがプレスリリースで発表した。


世界的な人気を誇るK−POPグループ「BTS」のファンは「アーミー」と呼ばれています。暗号資産の世界にもアーミーが存在します。「XRPアーミー」です。今週、突如注目を集めたXRP。今、アメリカの「XRPアーミー」の長文レポートを準備中。ご期待ください。

|文・編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock