ビットコインめぐるブラックロックCEOの翻意、歓迎と懐疑を引き起こす

世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)のラリー・フィンク(Larry Fink)CEOは5日、暗号資産(仮想通貨)は「金融に革命を起こす」ことができると述べ、以前は懐疑的に見ていた暗号資産業界を支持した。

デジタル資産の本来の理想とは異なる

フィンクCEOが見方を変えたことで、同業の幹部らが暗号資産を受け入れやすくなる可能性もあるが、一部の専門家は、同CEOが好む金融商品である上場投資信託(ETF)は、デジタル資産の本来の理想とは全く異なり、業界を間違った方向に押し進める可能性がある投資手段だと警告している。

ETFはビットコイン(BTC)を原資産とする従来の投資手段に過ぎないが、主な違いは、規制下にあるブローカーを通じて、規制下にある証券取引所で取引されることだ。このような構造はビットコインにとって受け入れがたいものかもしれない。ビットコインは2009年、前年に世界金融危機を引き起こしたウォール街の行き過ぎに対する反発も背景にして、匿名の作成者によって設計され、政府の管理下にないインターネットベースのピアツーピア決済ネットワークとして立ち上げられたものだ。

したがって、たとえフィンク氏の見方が好意的なものに変わったことがビットコイン価格の最近の上昇(年初来82%)を支えるのに役立ったとしても、暗号資産愛好家からの受け止めはまちまちかもしれない。

ビアンコ・リサーチ(Bianco Research)社長のジム・ビアンコ(Jim Bianco)氏は、「暗号資産は筋書きを失いつつある」とし、 暗号資産について「分散化、無許可、自己主権に関するものであるはずだ。それがよりアクセスしやすいポーカーチップになることに興奮するのは素晴らしいことであり、短期的にはギャンブルに夢中になっている人のメリットになるだろうが、暗号資産の本当の約束を果たすのには役立たない」と述べた。

フィンクCEO、暗号資産の考え方は重視せず

フィンクCEOは今週まで暗号資産に懐疑的であることで知られ、一時はビットコインを「マネーロンダリングの指標」と呼んでいたが、5日にはビットコインは「金融に革命を起こす」可能性があると述べた。

しかし、フィンクCEOは、デジタル資産市場の背後にある中心的な考え方、主に分散化を称賛するのではなく、資産運用会社の主な目標はビットコインの取引と投資をより簡単かつ安価にすることだと述べた。一部の専門家は、ブラックロックが間違った理由で参入しているのではないかとの懸念を示した。

ビットコインの存在意義に反するとの指摘も

TJM Institutional Servicesのマネージングディレクターであり、ベテランの先物・オプショントレーダーであるジム・イオリオ(Jim Iourio)氏は、「ビットコインの取引所と同様にETFも、ビットコインの最も重要な唯一の特徴であると一部の人が信じていること、つまり第三者を信頼することなく自分の資金を管理できる機能を無視しているという議論がなされている」とし、 「これはビットコインの存在意義全体に反するものだ」と述べた。

暗号資産は、お金が銀行や政府などの第三者や仲介者と結びつけられるべきではないという考えに基づいて構築されているため、いかなる種類の操作も受けることはない。

ETFの場合は、プロバイダー(ETF開始の承認を規制当局から得た場合はブラックロックになる)が原資産を所有し、ファンドを投資家に販売する。このやり方を変えるために暗号資産が構築されたにもかかわらずだ。

デジタル資産金融会社ギャラクシー(Galaxy)の調査責任者アレックス・ソーン(Alex Thorn)氏は今週のレポートで、「いわゆる主流企業の採用は、ビットコインに大量の新規参入者をもたらすだろう。しかし、中央集権的なほかの手段よりもビットコインの価値を高めている第一の要因である分散化の特性に新規参入者が関心を持たず、保護しないというリスクがある」と述べた。

しかし、世界最大の資産運用会社のCEOが数年前の見方を覆し、現在ではビットコインを「デジタルゴールド」と見なしていると公然と認めているのだから、少なくとも現時点では、それほど否定的なものではないはずだ。フィンクCEOのような人による検証は、マス・アダプション(一般への普及)に役立ち、主流企業によるビットコインの使用や一般の認知がさらに進む可能性がある。

|翻訳:CoinDeskJAPAN
|編集:林理南
|画像:Shutterstock
|原文:BlackRock CEO’s Turnabout on Bitcoin Elicits Cheers, Skepticism of Crypto Cred