ベースボールから暗号資産アナリストが学べること──暗号資産の有望ドラフト選手をピックアップ

先週末、チャンネルを次々と変えながらテレビを観ていると、今年のメジャーリーグのドラフトの話題が目に留まった。信じられないかもしれないが、ドラフトが進むにつれ、デジタル資産のことが頭をよぎった。

確かに、ベースボール(野球)と暗号資産(仮想通貨)には、あまり具体的な(あるいは間接的な)つながりがあるわけではない。だが私の心はときには、そんな風に動く(ちなみに私は、熱心なスポーツファンでもある)。

ともあれ、ドラフトに詳しい人なら誰でも、チームがこの先、何を成し遂げてくれそうかを基準に選手を選ぶことを知っている。これは基本的に、テレビで放映されるようなすべてのスポーツにあてはまる。

ベースボールが他のプロスポーツと異なるのは、ドラフトで指名された選手がMLBのフィールドに立つのは、3~4年後、あるいはもっと先かもしれないこと。ドラフトの日からデビューまでの期間は、育成のために下位リーグで過ごす。

ビットコイン、イーサリアムなどのベテラン選手に対抗できる有望選手は?

ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)などの地位を確立したデジタル資産はベテランのスター選手のようなものであるのに対し、新しいアルトコインは最近ドラフトで選ばれた選手のようなもの。アルトコインはどこから見ても将来の見込みのある資産だが、成功するとしてもそれまでには長い道のりが待っている。

しかし、暗号資産の将来性はどう評価するのだろうか? 見るべき価値があるのはどこか? そもそも、どこから始めればいいのか?

良くも悪くも、私の出発点は開発者のアクティビティだ。私はそれをプロトコルの成長の証であり、開発者が知的資本をどこに配分することにしたかを示すシグナルと考えている。一般的な考え方として、開発が行われているところでは、価値の発生と価格上昇が続く可能性がある。

今回の私の情報源は、暗号資産とWeb3のエコシステムで起こっている「開発者の活動を定量化する」ことを目指す、ベンチャーキャピタル(VC)であるエレクトリック・キャピタル(Electric Capital)の開発者レポートだ。

そこからわかったことを紹介しよう。

新規開発者は暗号資産を去りつつある

将来性を評価する前に、そもそも興味を持っている人がいるかどうかを確認することが有益だ。グーグルの検索トレンドをざっと見てみると、「ビットコイン」と「暗号資産」という検索用語は、1年前と比べて半分ほどしか使われていないことがわかる。

また、エレクトリック・キャピタルのレポートによると、この1年で、暗号資産分野全体のアクティブな開発者は22%減少、1月以降は8%減少している。「新規開発者」は1月以来18%減少しており、全体の数字よりも悪い。これは、新規開発者の減少が、全体数の減少を牽引していることを示している。

しかし、もっと広い視野で見れば、過去2年間と3年間で、それぞれ26%と92%の増加を示しており、それほど悲惨な状況ではない。全体的なトレンドは上昇傾向にあるが、直近の12カ月間に暗号資産が直面した課題は当然、新規開発者にマイナスの影響を与えた。一方で、12カ月以上この分野で開発を続けてきた人たちは、そのまま留まっている。

さらに私は当初、開発の活発化が価格の加速につながると考えていたが、今年の開発者減少のなかでもビットコイン価格が急上昇したことから、実際にはその判断は難しいかもしれない。

ビットコインやイーサリアムは、価格上昇によって開発者の活動が活発化し、小規模であまり知られていないプロトコルはその逆と、2パターンに分かれているのではないかと私は考えている。

それでも、一部の暗号資産プロトコルは大きく成長

総開発者数が最も多い20のエコシステムのうち、3つが前年比でプラス成長を見せており、そのうち2つには取引可能なトークンがある。

オスモーシス(OSMO)

  • 1年間の開発者増加率:56% 
  • 2年間の開発者増加率:296%

ソフトウェア開発キット「Cosmo」を使って開発された、異なるチェーン間向けの分散型取引所(DEX)であるオスモーシス(Osmosis)は、ここ1年間で総開発者数が56%増加し、その増加率は業界トップとなった。月ごとのアクティビティも好調で、5月から6月にかけては26%増加した。

しかし、ネイティブ・トークン「OSMO」の価格はそれに続くことはなく、2023年に入ってから現時点までに27%下落。直近の90日間では36%下落した。しかし、OSMOのこの30日間のパフォーマンスは堅調で、価格は7%上昇している。

アクティビティと価格の乖離は、開発者からの関心が高まる兆しのあるプロトコルの初期段階を狙う投資家にとって、魅力的な機会となる可能性がある。

オプティミズム(OP)

  • 1年間の開発者増加率:27% 
  • 2年間の開発者増加率:327%

レイヤー2ブロックチェーンのオプティミズム(Optimism)も力強い成長を見せた。オプティミズムは、イーサリアム上で開発された分散型アプリケーションをより低コストで迅速にスケーリングするソリューションとなることを目指している。オプティミズムのガバナンス・トークン「OP」のパフォーマンスは実は開発者数の成長を上回っており、前年比で127%増。しかし、ここ最近は低迷しており、過去90日間では47%下落した。

スタークネット(Starknet)

  • 1年間の開発者成長率:4% 
  • 2年間の開発者成長率:590%

リストの最後を飾るのは、レイヤー2ネットワークのスタークネット。現在のところ、トークンは販売されていない。それでも、このプロトコルに取り組むために流入する新しい開発者の数を考えると注目に値する。

将来性を見極める唯一の方法ではないが、プロトコルに取り組んでいる開発者の数とその人数の増加ペースは、良い出発点となると考えている。より多くのイノベーション、効率性、価値が登場してくるにつれて、次なるベテラン候補を見極めるうえで大いに役立つかもしれない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Chris Chow/Unsplash
|原文:Crypto Analysts Can Learn Something From Baseball