香港とイスラエルのCBDCプロジェクト、BISの「プロジェクト・セラ」でセキュリティやプライバシーを検証
  • 国際決済銀行(BIS)の「プロジェクト・セラ(Project Sela)」は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の流動性リスクを軽減するために「新しいタイプの仲介者」を利用した。
  • セラはイスラエルの通貨「新シェケル」、香港ドルのデジタル通貨プロジェクトに展開されている。

中央銀行デジタル通貨は安全かつプライベートに設定でき、中央銀行独自の台帳で取引を決済できると、国際決済銀行(Bank for International Settlements:BIS)はプロジェクト・セラの結果を発表するなかで述べた。

世界中の中央銀行がCBDCの発行を検討しており、特にセラはシステムをハッキングから守り、人々に提供する方法を探っている。

「中央銀行の通貨がデジタル化される場合、サイバーセキュリティーが鍵になる」とデジタル新シェケルの発行を検討しているイスラエル銀行(中央銀行)のアンドリュー・アビル(Andrew Abir)副総裁は声明で述べた。

「このプロジェクトは、我々が考えていたモデルの実現可能性を証明した」

市民の懸念は「プライバシー」

プロジェクト・セラでは、取引は中央銀行のバランスシート上で直接決済されたが、人々の個人識別情報は「難読化」されていたため、プライバシーは守られたとBISは述べている。

欧州連合(EU)が提案したデジタルユーロのような多くのCBDCは、中央銀行と一般ユーザーの間をつなぐために、銀行や他の決済プロバイダーを使うが、プロジェクト・セラは「新しいタイプの仲介者」と呼ばれるものを使って、資金を直接保有する流動性リスクを持たずにサービスを提供する。

これまでのBISの調査によると、世界の中央銀行の93%がCBDCの発行を検討いる。そして特に、中国はデジタル人民元を社会的統制のために利用するのではないかとの懸念があることで、プライバシーに対する市民の不安は高まっている。

同じくプロジェクトに参加した香港金融管理局(HKMA)のハワード・リー(Howard Lee)副長官は、このプロジェクトの成果は、デジタル香港ドル(e-HKD)の可能性についての「現在進行中の調査に役立つだろう」と述べた。

|翻訳:清水マキ
|編集:増田隆幸
|画像:Flickr
|原文:Hong Kong-Israel CBDC Project Examines Security, Privacy, Accessibility