イーサリアムの最新テストネット「Holesky」まもなくリリース

イーサリアムブロックチェーンは今週、エコシステムのテスト機能を強化するため、最新のテストネット「Holesky」をリリースする。新しいネットワークとともに、イーサリアムは既存の最大のテストネットである「Goerli」に別れを告げることになる。

現在、イーサリアムには2つのテストネットがある。GoerliとSepoliaだ。これらのネットワークはオリジナルのイーサリアムブロックチェーンのコピーのようなものだが、特に新しいアプリケーションのテストやトランザクションのシミュレーションに使用されている。

GoerliとSepoliaは、メインのイーサリアムブロックチェーンに比べると、少ないバリデーターによって運営されており、一部の開発者はこのことが問題になると考えている。「私たちは、メインネットで初めて起こってしまうようなスケーリングの問題にぶつかりたくない」と、イーサリアムの研究開発に特化した非営利団体イーサリアム財団の開発エンジニア、パリトシュ・ジャヤンティ(Parithosh Jayanthi)氏は語った。

「私たちはテストネットで(スケーリングの問題を)キャッチしたい」のだが、それはつまり、メインのイーサリアムチェーンよりも「大きなテストネットが必要ということ」とジャヤンティ氏は続けた。

そこで、Holeskyの登場だ。

プラハの鉄道駅にちなんで名付けられたHoleskyの目標は、メインネットのイーサリアムよりも大きくなること。つまり、ゆくゆくはより多くのバリデーターがこの新しいネットワークを運営することになる。

Holeskyの規模を大きくすることで、開発者は理論上、より厳しい条件下でインフラやアップグレードをテストできるようになる。つまり、Holeskyでスムーズに進んだテストがメインネットで予期せぬ問題に直面する可能性は低くなるはずだ。

さよなら、Goerli

SepoliaはGoerliよりも新しく、そのデザインも若干異なるが、イーサリアムベースのアプリケーションをテストするための主要なネットワークであり続けると予想される。一方、Holeskyは、イーサリアムのインフラとコアプロトコルのアップグレードのための主要なテストの場として、Goerliに取って代わるように設計されている。

新しいテストネットは、イーサリアムの開発者コミュニティが何年もかけて成長したことを受けて登場する。より多くの開発者がエコシステムに殺到するなか、Goerliはますます複雑化するインフラやアップグレードのテスト要求に応えることができなかった。

Goerliの最も目に見える問題は、テストネットワークのネイティブトークンであるGoerli ETH(goETH)に関連している。イーサリアムのメインネットがトランザクションごとにイーサリアム(ETH)で手数料を請求するのに対し、イーサリアムのテストネットは独自のETH建て暗号資産で手数料を課す。goETHはゲームで使うお金のようなもので、より低いコストでテストを行うために使用される。

GoerliはSepoliaとは異なり、そのネイティブトークンであるgoETHの総供給量に上限を設定した。ネットワーク需要が高まると、この上限が問題になる可能性がある。

2019年にgoETHの上限が設定されたとき、Goerliの開発者たちは、最終的にイーサリアムの大規模なアップグレード「マージ(Merge)」と、それに続くプルーフ・オブ・ステーク(PoS)コンセンサスメカニズムの開発の主要な実験場となるこのネットワークが、最終的に直面することになる活動量がどれほどになるかを予想していなかった。

「私たちはほとんど何も知らなかったし、イーサリアムがそれほど遠い未来にどうなっているかを正確に予測することは不可能だった」とジャヤンティ氏は語った。

Goerliでテストを行う人は、オンラインの「蛇口」を介して無料のgoETHの割り当てを要求できる。しかし2月、goETHの供給上限のために、こうした蛇口は需要を満たすのに十分なスピードでgoETHを供給できなかった。「どのような供給問題が起こるのかはわからなかった」とジャヤンティ氏は説明した。

Goerliでテストを行う人の中には、goETHを確保するためにオープンマーケットに頼らざるを得ない者もおり、一時はテスト用のETHであるgoETHトークンが1.60ドルもした。goETHの価格上昇は、アプリケーションのテストコストを大幅に増加させたため、開発者にとって大きなボトルネックとなった。

ジャヤンティ氏によれば、goETHの供給を増やそうとする試みもあったが、開発者たちは問題の根本的な原因には、より優れたトークン発行システムを備えたまったく新しいテストネットを始めることでしか対処できないことに気づいたという。

「新しく始めよう。今、私たちはどのようなネットワークを開発したいのか、より多くのアイデアを持っている。それで前に進もう、ということだ」

こんにちは、Holesky

Holeskyのゴールは、イーサリアムのメインネット(70万人)とGoerli(51万2000人)を合わせた数よりも多い、少なくとも140万人のバリデータをサポートすることだ。goETHの供給問題の一部を改善することに加え、より大規模なバリデーターにより、開発者やインフラ提供者はより現実的なネットワーク条件下でテストを実行できるようになるはずだ。

Holeskyはすでに、バリデーターを募集している。イーサリアムで人々がETHを「ステーキング」してバリデーターになるように、Holesky ETHをステーキングすれば新しいネットワークを検証することができるようになる。

Holeskyが間もなく登場! ジェネシス(最初の)バリデーターを運営するためのリクエストをクラウドソーシングし、146万のバリデーターから成るジェネシスステートを作成。メインネットのおよそ2倍! ジェネシスは1カ月以内に実行予定。

Holeskyのリリース日である9月15日は、イーサリアムがプルーフ・オブ・ステーク(PoS)ネットワークとなり、古いプルーフ・オブ・ワーク(PoW)マイニングシステムを放棄したマージの1周年に合わせて選ばれた。

この新しいネットワークは、イーサリアムのテスト環境の最後の刷新にはならないだろう。「Holeskyはこれからローンチされ、2028年にはサポートを終了する予定だ。この情報は最初から明らかにしている」とジャヤンティ氏は語った。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Hello Holesky, Ethereum’s Newest Testnet