最後はすべて、イーサリアムに

イーサリアム(Ethereum)がすべてのブロックチェーンを飲み込んでいる。結構なことだ。

これまでの歴史がプロローグなら、イーサリアムはこの先、全ブロックチェーンを席巻し、イーサリアムでないものはすべて、最終的にはイーサリアムのレイヤー2になるだろう。私は、イーサリアムのレイヤー2として運用する方向へとシフトするという、CELOの関係者による最近の決定は、イーサリアムが最終的に全ブロックチェーンのレイヤー1として運用される最終状態に私たちを導く、同じような統合とシフトの雪崩のまさに始まりと考えている。

テクノロジー業界には、このような統合の前例が多い。私が好きな例のひとつは、非常に多様なネットワークの世界が、約15年かけてゆっくりと、しかし確実に、ひとつの世界標準に収束していったというものだ。

それは以下のように展開した。

はるか昔、人類の文明が幕を開けた頃(1970年代)、さまざまなデータネットワークが存在した。インターネットの前身である米高等研究計画局ネットワーク(ARPANET)から、IBMのシステムズ・ネットワーク・アーキテクチャ(SNA)、ゼロックスのインターネットワーク・データグラム・プロトコル(IDP)、その他いくつかに至るまで、企業や政府によるあらゆる種類のネットワークが存在した。

その結果、互換性のないネットワークが多数乱立し、企業や政府のシステムを接続することは非常に難しくなった。

接続性のための接着剤から世界標準へ

1970年代から、複数のネットワークにまたがって機能し、ネットワーク運用の中断や変更にスムーズに対応できるプロトコルを作成するための協調的な取り組みが行われた。その結果、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)が誕生した。初期の頃、TCP/IPはまさにその目的通り、さまざまなネットワークを接続する役割を果たした。

当初、TCP/IPは単に、異なるネットワークを接続するためのもので、その点で非常にうまく機能した。しかし、時が経つにつれ、標準化と規模の拡大という避けられない命題によって、TCP/IPは接続性のための接着剤から世界標準へと変容した。IPネットワークはネットワークビジネスを食い尽くし、今日では事実上、IP以外のネットワークは残っていない。

テクノロジー産業が、いかに標準を中心としたスケーリングを好むかを考えれば、誰もこのことに驚くべきではない。同様に、ブロックチェーンネットワークに同じことが起こっても驚くべきではない。

どのようなネットワークも相互接続によって価値が高まるため、このアプローチは、苦境にあるレイヤー1にとっての生命線になる可能性が非常に高い(つい最近まで「イーサリアム・キラー」として自らをアピールしていたのだが)。

レイヤー2に特化したネットワーク

すべてのレイヤー2やサイドチェーンが同じとは限らない。私は最近、レイヤー2のエコシステムがどのような方法で発展し得るかについて考えている。高度に専門化されたサブエコシステムがいくつも出現する可能性がある。

例えば、我々EY(アーンスト・アンド・ヤング)は、在庫管理や炭素排出量の追跡を支援するOpsChainソリューションのユーザーとして、メーカーなどをターゲットにしている。スケーリングプランニングを行う場合、私たちが想定する量は非常に大きい。例えば、あるクライアントは、1つの製品ラインについて1日に50万個(すべてユニークでシリアル化されたもの)を扱うことを考えてほしいと依頼してきた。

毎日50万個が生産から最終消費までの間を平均3~4回移動するため、1つの製品ラインで毎日平均200万件のトランザクションが発生すると考えられる。この種の顧客にとって、最優先事項はプライバシー(詳細な業務データを競合他社に知られないようにすること)とスケーラビリティ(高いスループットと低いトランザクションコスト)だ。EYが開発し、パブリックドメインとして提供したレイヤー2ネットワークのNightfallが、まさにそれを実現するように設計されていることは驚くことではないだろう。

金融取引のレイヤー2要件は、大きく異なるだろう。スワップのように、きわめて大量かつ低コストのロールアップが必要となる場合もある。一方、複雑な分散型金融(DeFi)のスマートコントラクトには、スマートコントラクトがブロックチェーン上で実行できるように、イーサリアム・バーチャル・マシン(EVM)の完全な互換性をサポートするネットワークも必要となるだろう。

すべての参加者が知られているだけでなく、全員が識別され、同じ規制ルールの対象となるような、高度に専門化された国家的、地域的、または検証されたアイデンティティによるネットワークが出現したとしても驚きはない。

アメリカ「人」(市民または居住者)である適格投資家のみが参加できるレイヤー2を想像してほしい。そうすることで、これらの人々は、最小限の身元確認のための作業を加えるだけで、非常に多様な資産を相互に取引できるようになる。EU域内、あるいは他の主要な国や地域で、こうした動きがすぐに出てくる可能性がある。

相互接続の価値

このように特化したネットワークが出現してくると、イーサリアムを介してそれらすべてを相互接続することに意味があるのかと考えたくなるかもしれない。

相互接続の価値は、単なるEVM互換性を超えて、あるエコシステムから別のエコシステムに製品やサービスを送ることができる点にある。真の現代の経済システムの中には、本当の意味で孤立したものは存在しない。すべての商業契約は支払いによって成立し、何らかの金融サービスが、それらすべてを支えている。国やエコシステム間の金融の流れが、すべての貿易と投資を支えている。

また、世界中のあらゆる種類の取引や取引高をサポートできる単一のネットワークを構築することも不可能だろう。その結果、常に複数のネットワークが存在することになり、レイヤー1とレイヤー2の間であっても、ネットワーク間の接続には摩擦が生じることになる。それでも、イーサリアムが多くの特化したネットワークを束ねるレイヤー1として存在することは、非常に大きなメリットをもたらすだろう。

例えば、工業製品のトークンは、金融に特化したレイヤー2からの支払いと引き換えに、専門的な製造ネットワークから離れることができるが、2つのレイヤー2のネットワークにまたがり、レイヤー1としてのイーサリアムによって接続された連続的なデジタル記録を持つ能力は、現在商業の世界に存在するものよりも桁違いに統合される。

イーサリアムが全世界を席巻するデメリットのひとつは、現在のネットワーク業界と同様に、利用可能なネットワーク機能の可変性が大幅に低下することだ。相互運用性を確保するためには、トークンとスマートコントラクトは基本的にどこでも同じでなければならない。すべてのチェーンが、EVMチェーンでなければならない。

多様なエコシステム上で機能するクロスチェーン開発システムを持つことはできるが、トークンやスマートコントラクトが立ち往生して役に立たなくなり、特定のネットワークのユニークで特別な機能が実際に使われることがなくなるため、あまり意味がない。

テクノロジーの世界が繰り返し教えている大きな教訓のひとつは、特化型インフラの方が特定の仕事をすることに優れていたとしても、特化型インフラよりも普遍的なインフラの方が成功するということだ。

TCP/IPがネットワークの世界全体を席巻する以前、音声通話だけに特化したネットワークが存在した。それらは回線交換ネットワークと呼ばれ、電話の品質を保証していた。遅延も断線もパケットロスもなく、2つの電話間の回線が継続的に接続されていた。それに比べると、VoIPの通話品質は大きく見劣りするが、現在では全通話の99%以上を占めている。

私たちが今使っている、特化型の各種ブロックチェーンとはお別れだ。それらはまもなく、歴史の一部になるに違いない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Eventually, We Are All Ethereum