次なるビットコイン上昇に備える

時価総額で世界最大の暗号資産(仮想通貨)であるビットコイン(BTC)は、夏の大半を2万6000ドル前後で推移した後、10月23日の週に上昇し始めた。先日には3万5000ドルを超え、2022年5月以来の高値をつけた。

なぜビットコインは上昇しているのか?

ビットコイン現物ETF(上場投資信託)と呼ばれる、実際のビットコインを保有する上場投資信託が、アメリカの規制当局によってまもなく承認される可能性があることを理由に挙げる声もある。

承認されれば、投資家はビットコインのエクスポージャーにアクセスするための新たな商品を手に入れることができ、これまで傍観していた参加者を引き付けることができるだろう。

先物ベースの「ProShares Bitcoin Strategy ETF」(BITO)は、2021年10月に史上最高のETFローンチのひとつとして歴史に名を刻み、わずか2日間で10億ドル以上の資産を集め、今でも関心を集め続けている。

もうひとつ有力な説は、ビットコインの「半減期」と関連している。ブロックチェーンにあらかじめプログラムされたこの調整は、マイナーが取引を処理し、新しいビットコインを生成することに対して受け取る報酬を、1ブロックあたり現在の6.25ビットコインから3.125ビットコインに半減させる。

このイベントは最大供給量(2100万)に達するまで、21万ブロックがマイニングされるたびに、つまり約4年ごとに発生する。4回目となる次の半減は、2024年4月中旬までに起こると予想されている。

過去において、このイベントとそれに伴う供給量の減少は、ビットコイン価格の力強い上昇と重なっており、半減期前後のボラティリティにつながる可能性がある。

次回の半減期の地政学的、マクロ的背景は、これまでの半減期とは大きく異なり、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが提供する、規制を受けた、堅固で流動性の高いビットコイン先物とオプションが利用できることは、企業がビットコインのリスクをヘッジしたり、エクスポージャーを得るために、信頼され、実績のある商品を利用できることを意味する。

先物を使ってポートフォリオを組む

先物市場で取引する投資家は通常、2つの目的のどちらかを持っている。将来の価格を固定することによって資産の価格をヘッジするか、または先物価格の上下から利益を得るために資産の価格の方向性で投機するかだ。

 CMEグループビットコイン先物の1日平均取引高(ADV、青)と平均建玉(赤)

CMEグループが手がける先物やオプションは、投資家が暗号資産市場のリスクを管理し、利益を得る可能性をサポートできる。

Micro Bitcoin futuresの取引量は、2023年9月の5万9000枚から2023年10月の11万9000枚へと倍増した。一方、ビットコイン先物の1日の取引量は同期間に38%増の1万3300枚となった。

CMEグループの暗号資産先物のメリットとは?

暗号資産先物は、投資家に3つの主なメリットをもたらす。

1. 契約は米ドルで現金決済される。コインをカストディする必要がないため、コインを安全に保管することに関するリスクがない。つまり、ウォレットを持ったり、ハッキングを心配したり、保険をかけたりする必要がない。

先物は単にビットコインやイーサリアム(ETH)の価格に連動し、米ドルで決済されるため、コインそのものではなく暗号資産先物を取引することで、投資家はいくつかの運用上のハードルを回避することができる。

2. CFTC(米商品先物取引委員会)の規制下にある。これは、複数の顧客保護が提供されることを意味する。例えば、顧客の資金は完全に分離され、各取引は中央で清算される。CMEグループの清算機関は、すべての売り手にとっての買い手となり、すべての買い手にとっての売り手となる。これによりカウンターパーティリスクが大幅に軽減される。

3. 先物は投資家のショートを容易にする。「借りる証券を特定」したり、借りたりする必要はなく、単に売るだけでショートエクスポージャーを得ることができる。ビットコインとイーサリアムはボラティリティが高い。それを受け入れる投資家もいるだろうが、リスク回避志向の強い投資家もいる。

先物契約を売ることは、投資家の戦略の一翼を担うだろう。よりリスクを好む投資家は、先物を売り(ショート)、ビットコインやイーサリアムの下落から利益を狙うことができる。一方、すでに保有しているビットコインやイーサリアムをヘッジするために先物を売ることもできる。これにより、暗号資産ポートフォリオが下落した場合の損失の一部を相殺できる。

さらに、スポット取引所でビットコインまたはイーサリアムを購入する場合、取引前にポジションに全額資金を入金する必要がある。先物のメリットは、必要なイニシャルマージン、つまり取引を開始するために担保として必要な金額を預けるだけで済む。

高まる先物への関心

機関投資家のビットコイン先物への関心は着実に高まっている。顧客需要の指標となる建玉は、10月25日に史上最高の20万380枚を記録した。これは10万1900ビットコインに相当し、想定元本35億ドルに当たる。

同様に、CMEグループのビットコイン先物の大口建玉保有者(LOIH)は10月24日に過去最多の122人となった (暗号資産先物のLOIHは、少なくとも25枚の建玉を保有するものとCFTCが定義)。

これは、機関投資家がビットコインにますます好意的となり、新たな楽観主義の中でポートフォリオを組んでいることのさらなる証拠だ。個人投資家もその一翼を担っているようで、先物ベースのETFのAUM(運用資産)が上昇していることからも明らかだ。

業界をリードするプロシェアーズの「Bitcoin Strategy ETF」(BITO)の5日間の出来高は先週、420%増の3億4000万ドルに急増した。BITOは、CMEグループのビットコイン先物に投資している。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Getting Ready for Bitcoin’s Catalysts