暗号資産レンディング再生、7つの予測──ビットコインETF、DeFi、ステーブルコイン…

2024年、ビットコイン(BTC)価格が再び上昇を始めるにつれて、既存の暗号資産(仮想通貨)レンディング事業者間の競争は急速に進展するだろう。

つまり、伝統的金融(TradFi)業界や暗号資産業界からの新規参入者が、このリスクも高いが需要の高い業界の一角を占めようとすることで、レンディング商品やサービスのイノベーションが進む。

前回の弱気相場における市場の混乱の多くは、過度に拡大した、あるいは悪徳な暗号資産レンディング事業者の倒産や経営破綻によって引き起こされた。

しかし、暗号資産レンディング市場の再生は、エンドユーザーと投資家にエキサイティングな機会をもたらし、現在のデジタルレンディングのエコシステムに継続的な変化をもたらすだろう。以下、2024年の暗号資産レンディングについて、7つのポイントを上げてみた。

1. 短期的利益を狙うレンディング事業者の台頭に注意

より多くのユーザーがこの分野に参入するにつれて、新旧を問わずさまざまな企業が、ジェネシス(Genesis)、ボイジャー(Voyager)、ブロックファイ(BlockFi)、セルシウス(Celsius)といった今はなき暗号資産レンディング事業者が残した空白を埋めようとするだろう。

これらの企業は、以前の破綻したレンディング事業者がそうであったように、透明性があまりなく、リスク管理をほとんど行わずに、高いリターンを顧客に約束するだろう。市場に参入してシェアを獲得しようとする、その場しのぎのご都合主義者はさらに増えるだろう。

暗号資産価格が上場しても、正しい質問を忘れてはならない!そのレンディング事業者は、2022年を無事に乗り切ることができたのか? 彼らはこの分野の「新参者」なのか?

投資家は、利回りがどのように生み出されているかを注意深く理解し、レンディング事業者が顧客の資産を適切に会計処理している証拠を要求し、リスク管理方針と実績を精査すべきだ。明確な情報開示や回答が得られない場合は要注意!

2. 取引高は規制された取引所に集中する

ビットコインとイーサリアム(ETH)のスポットとデリバティブの取引高は、規制されていない取引所から規制された取引所に移行するだろう。

これまで、暗号資産取引の大部分は、DEX(分散型取引所)やP2P市場のような、KYC(本人確認)を実施せず、規制を受けていないプラットフォームを通じて処理されていた。

規制の明確化とビットコイン現物ETFの登場により、TradFiからの参加者がこれらの市場で活動するために必要な明確さを得ることで、取引高の多くが規制された市場に移行することになる。

別の言い方をすれば、スポット取引高はユニスワップ(Uniswap)のような分散型取引所から、コインベース(Coinbase)やクラーケン(Kraken)のような中央集権型取引所に移動し、オプションや先物のようなデリバティブ取引高はバイナンス(Binance)やバイビット(ByBit)のような海外の取引所からシカゴ・マーカンタイル取引所やニューヨーク証券取引所のETFに移動するだろう。

3. ビットコインETFにおける裁定取引の機会

ビットコイン現物ETFの承認によって、TradFiと暗号資産業界のマーケットメーカーは、ビットコインのスポット価格のみならず、さまざまな投資商品間の価格差を利用して裁定取引を行うことができるようになるため、ビットコインレンディング市場の大規模な拡大につながるだろう。

最近まで、大手のTradFiマーケットメーカーの中には、裁定取引の機会を得るためには規制されていない市場に参加する必要があったため、暗号資産やビットコインの取引に参加していないところもあった。

ナスダックのような場所ではビットコイン現物ETFが、シカゴ・マーカンタイル取引所ではビットコインのデリバティブ商品が、コインベースやクラーケンのような規制された取引所ではスポット(現物)ビットコインが利用できるようになり、金融機関は市場を作るために必要なすべてのツールを手に入れた。唯一もう1つ必要なのは、現物ビットコインの在庫だ。

ビットコインレンディング市場に積極的に参加している人たちは、すでにこの影響を実感し始めている。この進化は、投資オプションとしてのビットコインレンディングの魅力を高めるだけでなく、デジタル資産市場全体の正当化と安定にも貢献するだろう。

4. 暗号資産デビットカードの復活

規制の明確化が進み、評判の高い老舗の業界プレーヤーが取り組みを続けているため、暗号資産デビットカードが復活する可能性が高い。特に、ビザ(Visa)、マスターカード(Mastercard)、サークル(Circle)は、暗号資産プラットフォームやデジタル資産とより一層統合されたソリューションへの投資を続けている。

これらのソリューションは、デジタル資産と従来の決済手段の境界線を曖昧にし、ユーザーが法定通貨に変換する必要なく、保有資産を直接使用できるようにする。

5. 投資家はより迅速で安価な取引を求める

強気相場が勢いを増すにつれ、取引手数料の高騰がレイヤー2ソリューションやより効率的なブロックチェーンの成長を促進するだろう(強気相場サイクルでは通常そうなる)。

ビットコインのライトニング・ネットワーク(Lightning Network)やイーサリアムのポリゴン(Polygon)のようなスケーリングソリューションをはじめとするイノベーションは、より高速で安価な取引を可能にするために設計されたテクノロジーの代表例だ。

トロン(Tron)やソラナ(Solana)のような高スループットのブロックチェーンも人気が高まるだろう。私は、これらのエコシステムが成熟し、より広く受け入れられるようになると予想している。この進化は、将来のプロダクト・イノベーションと投資の両面で多くのチャンスを生み出すだろう。

6. ステーブルコインに対する需要の高まり

ステーブルコイン市場は大きく成長し、私は総供給額は2500億ドルを超える可能性があると予測している。

特にテザー(USDT)は、世界中に広く普及しているため、市場シェアの50%以上を支配し、優位性を維持すると予想される。この市場の成長は、暗号資産のメリットと米ドルの安定性を兼ね備えたデジタル資産に対する需要の高まりを反映している。

各国政府は、自国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)でこれに対抗しようとするだろうが、CDBCが各国政府の望むような「温かい歓迎」を受けるとは思えない。ナイジェリアやバハマなどでは、すでにCBDCの試みが市民によって拒否されており、この傾向は今後も続くと予想される。

7. DeFi(分散型金融)の監督強化

この強気サイクルは、主にDEX(分散型取引所)やレンディングプラットフォームのような、以前は規制されていなかった市場における監視の強化が予想されるため、以前のサイクルとは明らかに異なるものになるだろう。

世界中の金融規制当局は、顧客が誰であるか分からないプラットフォームの重要性と取引高が増加していることを十分に認識している。これらのプラットフォームの多くは、完全に中央集権化された運営チームを持っており、規制要件のターゲットとなるだろう。

実際のところ、このような要因から、当局が少数のDeFiプロジェクトを見せしめにする結果となるだろう。規制当局の攻撃的な姿勢は、取り締まりの矢面に立つ「DeFiの殉教者」を生み出す可能性が高い。

これらの名目上「分散型」なプラットフォームがKYCを実施し、規制に従わなければならなくなれば、完全に規制された取引所か、真に規制されていない取引所に移動することで、こうしたプラットフォームの取引高は枯渇するだろう。

次なる強気相場は、金融の成長とイノベーションだけでなく、業界の成熟がポイントとなる。ビットコインのブロックが生まれるごとに、私たちは金融の未来を築いている。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:7 Predictions About the Crypto Lending Landscape in 2024