EUの監督当局、暗号資産レンディングやステーキングも規制対象になる可能性を示唆

欧州連合(EU)の金融安定化監視機関は、成長する暗号資産(仮想通貨)と分散型金融(DeFi)が経済にシステミックリスクをもたらすようになるかもしれないと警告し、大規模な暗号資産コングロマリットとスマートコントラクトをカバーする新たな規制が必要になるかもしれないと述べている。

欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)総裁が議長を務める欧州システミックリスク理事会(ESRB)は、2024年にEU圏内で新しい暗号資産市場規制(MiCA)が施行されるのを前に、5月25日の報告書で暗号資産レンディングやステーキング、暗号資産市場における高いレバレッジのリスクを警告した。

政策のオプションの1つとして、「DeFi開発者は、スマートコントラクトの設計と作成をカバーする特定の規制を遵守するよう求められる可能性がある」と報告書は述べている。コード監査の義務化、製薬業界のような知的財産の制限、現実世界のデータを自動化ソフトウェアに送信する「オラクル」の規則などの可能性が浮上している。

MiCAは、ウォレットプロバイダーやステーブルコイン発行者のようなプレーヤーに対して、ガバナンス、ライセンス、準備金の要件を設定する一方で、暗号資産レンディングやステーキングのような分野は除外している。しかし、今回の報告書は、これらの分野は「消費者に大きなリスク」をもたらすと警告している。

ESRBによると、MiCAの下で企業は事業間の利益相反を管理しなければならないが、取引やカストディのようなサービスを提供することで生じるかもしれない業務リスクや風評リスクを特定し、軽減する包括的な要件はない。

報告書は「市場の発展やMiCAの適用で得た経験を考慮し、EUにおける暗号資産コングロマリットの活動を調査すべきである」と述べ、監督当局がリスクの高いサービスを別会社に分離するように強制できる既存の決済法を引用している。

「この1年は暗号資産とDeFiにとって激動の1年だったが、システミックな影響は顕在化していない」と報告書は述べ、「指数関数的な成長ダイナミクス」は、将来の動揺が2008年のリーマンショックに似た大きな脅威をもたらす可能性を示唆していると付け加えた。

3月、ESRBは、暗号資産の人気が高まっていることを理由に、暗号資産市場の過熱を防ぐために、フィンテック企業が銀行のような貸出上限規制に直面する可能性があることを示唆していた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:欧州システミックリスク理事会(ESRB)のクリスティーヌ・ラガルド議長。(ECB/Flickr)
|原文:Crypto Conglomerates, DeFi Targets of EU Financial Stability Watchdog Concerns